スウェーデンの今

スウェーデンに15年暮らし現在はストックホルム商科大学・欧州日本研究所で研究員

貧乏くじを引いたエリクソン元社長

2010-06-08 06:08:49 | スウェーデン・その他の経済
スウェーデンを代表するテレコム企業のエリクソン最高経営責任者を務めたのは、1952年生まれのスウェーデン人であるカール=ヘンリク・スヴァーンベリ(Carl-Henric Svanberg)だった。2003年から2009年の間このポストに就いていた彼はエリクソンの顔的な存在となり、同時期にはソニー・エリクソンの会長(取締役会の議長)も兼任していた。


ビジネスエンジニアの両方の学位を持つ彼は、その前にもスウェーデンの大手企業の幹部や経営者のポストを転々としながら、経営エリートの道を着実に歩んでいた。だから、エリクソンの最高経営責任者を7年務め、良い評価を受けていた彼は、次なるステップを歩むことにしたのだった。

2010年初日から彼が着任したポストは、世界第3位であるイギリスの石油企業BPの会長職だったのだ! この時点では、どんな不幸が待ち受けているのか、彼は知る由もなかった・・・

新しい仕事にも慣れたばかりの4月20日、メキシコ湾の沖合80kmのところで操業していたBP所有の石油プラットホームが爆発炎上し、大量の原油が海底1500mの場所から流出することとなった。牡蠣をはじめとする水産資源や生態系の宝庫であった周辺地域への汚染が日ごとに拡大している。石油流出事故としては史上最大だと言われている。

カール=ヘンリク・スヴァーンベリは本当に不運だとしか言いようがないが、そんな言い訳は通用しない。企業の会長として積極的に表に出て、批判に対応したり、企業に対する信用の失墜を少しでも抑える努力をすべきだった。

しかし、彼が取った戦略はその正反対だった。彼は事故以降、全くメディアに姿をあらわさず、企業を通じて時たまプレスリリースを流すくらいだった。一方、世界中の批判を一手に浴びながら、現場で復旧作業を指揮したのは最高経営責任者であるTony Haywardだった。確かに、日々の業務に対する責任は彼にあるものの、このような例外的・危機的な状況において、メディアの前に出て、状況や対策を報告したり、企業の株価がこれ以上下がらないように務めることが取締役会の議長である会長の役目だという声が日増しに高まっている。企業の中でも、彼の辞任を求める声が既に上がり始めている。


スウェーデン日刊紙の2010年5月19日付経済面より
『スヴァーンベリ、お前はいずこへ?』


新しい仕事からわずか半年足らずでおさらば、ということになるのだろうか? 嵐が過ぎ去るまでおとなしく隠れていよう、と考えていたのだろうか? 対応の不手際と、そもそも転職の仕事選びを間違えた責任は、自分で負うしかない。

いずれにしろ、事故が起きた際の対策を十分に講じることなく、リスクの高い海底油田掘削を行ってきたことは大きな問題であろう。技術者による技術への過信なのか、それとも対策をおこたった怠慢なのか。認可を出した行政機関の責任も大きいだろう。

最新の画像もっと見る

3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Yoshi)
2010-06-17 08:46:26
反応が遅くなってしまい、申し訳ありません。問題はありません。よろしく!
返信する
Unknown (Wakako)
2010-06-15 04:19:07
はじめまして。マルメ在住の者です。
このトピックスを私のブログでも軽く扱う予定なので、リンクさせていただきました。
もしご都合が悪い場合はお手数ですがお知らせ下さい。
どのブログ記事も大変読み応えのあるものですね。一読者として応援させていただきます。
返信する
給料もらい過ぎ? (里の猫)
2010-06-09 18:53:02
スウェーデンのボスたちの報酬が高すぎるという批判がときどき起こりますね。
大抵は、世界的標準では決して高くない、優秀な人材は高く払わないと海外に消えてしまう、ということでした。
いつも思ったのは、海外に引っ張られるような人はそれほどいないんじゃないの、です。
スヴァーンベリがBPに移った時は、こういう人が引っ張られるのか、と思いました。
でも、いざ腕まくりして泥だらけにならなければならない時になると、やっぱり、って感じですね。
それだけの高級取っているトップのトップジョブなんだから、不運とは言えないんじゃないでしょうか。
返信する

コメントを投稿