以前に職業訓練の一つの例として、携帯やパソコン、Ipadなどのアプリを作るプログラマーを養成する職業訓練があり、大成功しているという話を紹介したことがある。
<過去の記事>
2011-02-18:企業・市場の要望に柔軟に対応する職業訓練プログラム
これと同じくらい、スウェーデンで今熱い職業訓練は風力発電のメンテナンス技術者養成コースだ。
スウェーデンの風力発電の発電所の数、および発電量をみると、ここ3年の間に指数関数的に急上昇していることが分かる。2008年に2.0TWhであった年間発電量は2009年に2.5TWh、2010年に3.5TWh、そして2011年には6.1TWhへと上昇。10年から11年にかけての上昇率は75%にもなる。
この背景には、クローナ高や技術進歩による部品の価格低下、長い手続きの末に建設認可を得た発電所が次々と完成し稼動開始していること、消費者や電力会社の風力発電に対する高まる関心などがあげられる。また、国の再エネ電力に対する経済的支援の効果も大きい(発電量1kWhあたり約2円強)。
現在、建設中のプロジェクトに目を向けると、スウェーデン北部の森林地帯ではヨーロッパ最大の風力発電所が建設中だ。1100基の風車を2020年までに建設するという10年がかりのプロジェクトであり、投資額は総額約8400億円。設置出力の合計は4GW(400万kW)。完成すると年間12TWhの発電を行う予定だという(つまり、2011年の風力発電量の2倍。ちなみに、平均的な原発(100万kW)の1基あたりの発電量は約7-8TWhほど)。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1b/50/6098fed5f2204cf82c13ec6a9946e088.jpg)
この地図は東西(左右)が45km。点の一つひとつが風車。
しかし、風力発電所の数の急激な伸びに対して、必要とされる労働力が追いついていない。新規発電所の建設に必要な技術者もさることながら、稼動後の保守やメンテナンスを行う技術者の数が足りないために、風車が故障しても修理までに待たされるという事態も実際に発生している。
だから、風力発電を推進する自治体や、風力発電所を実際に所有していたり域内に持つ自治体の中には、国の定める職業大学の制度を使って、風力発電のメンテナンス技術者の養成に取り組むところが増えている。失業者のみを対象とした短期の職業訓練(いわゆる積極的労働市場政策)ではなく、2年間の勉学を必要とする教育課程だ。終了後は就職がほぼ保証されているため人気が非常に高く、ある自治体の養成コースには35人の定員に対し200人ほどが応募するなど、競争率がかなり高い。学生の中には、高校からそのまま進学する人もいるし、別の仕事に就いていたものの将来性のある風力発電業界への転職を考える人や、失業を契機にこの道に進もうとする人もいる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/76/0f/1cfeaa6ed941b3ab0529814b1e9b1a57.jpg)
20代から30代後半までいろいろ。女性の姿もある。 出典:スウェーデン・ラジオ
大規模な風力発電所はスウェーデン北部の過疎地域に集中しているため、地元自治体としては風力発電所の建設とその後のメンテナンスで雇用の機会を確保したい。しかし、現状では労働需給のミスマッチが生じている。だから、必要とされる技術者の養成にも躍起になっている。風力発電業界の予測によると2020年までに国内で12000-14000人の風力関連の雇用(メンテナンス技術者を含む)が生まれるだろうという。この半分以上はおそらくスウェーデン北部での雇用となるだろう。
学ぶ学生の側も地元の人が多い。安定した職につながるという期待だけでなく、身につけた技術を使って国外で働く可能性も開けてくるためだ。教育では、陸上風力とともに洋上風力の発電所についても学ぶ。2年間の教育課程のうち、3割近くは実際の企業による実地研修だという。ここで、企業・業界との接点が生まれ、コース終了前から就職が決まる人がほとんどのようだ。
風力発電のメンテナンス技術者を養成する最初の職業訓練が2006年に始まって以来、今では国内10数か所で同様の教育が行われている。また、職業大学(2年課程)だけでなく、一般大学でもよりレベルの高い風力発電技術者の養成が行われている(例えば、風力技術の修士課程など)。
<過去の記事>
2011-02-18:企業・市場の要望に柔軟に対応する職業訓練プログラム
これと同じくらい、スウェーデンで今熱い職業訓練は風力発電のメンテナンス技術者養成コースだ。
スウェーデンの風力発電の発電所の数、および発電量をみると、ここ3年の間に指数関数的に急上昇していることが分かる。2008年に2.0TWhであった年間発電量は2009年に2.5TWh、2010年に3.5TWh、そして2011年には6.1TWhへと上昇。10年から11年にかけての上昇率は75%にもなる。
この背景には、クローナ高や技術進歩による部品の価格低下、長い手続きの末に建設認可を得た発電所が次々と完成し稼動開始していること、消費者や電力会社の風力発電に対する高まる関心などがあげられる。また、国の再エネ電力に対する経済的支援の効果も大きい(発電量1kWhあたり約2円強)。
現在、建設中のプロジェクトに目を向けると、スウェーデン北部の森林地帯ではヨーロッパ最大の風力発電所が建設中だ。1100基の風車を2020年までに建設するという10年がかりのプロジェクトであり、投資額は総額約8400億円。設置出力の合計は4GW(400万kW)。完成すると年間12TWhの発電を行う予定だという(つまり、2011年の風力発電量の2倍。ちなみに、平均的な原発(100万kW)の1基あたりの発電量は約7-8TWhほど)。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1b/50/6098fed5f2204cf82c13ec6a9946e088.jpg)
この地図は東西(左右)が45km。点の一つひとつが風車。
しかし、風力発電所の数の急激な伸びに対して、必要とされる労働力が追いついていない。新規発電所の建設に必要な技術者もさることながら、稼動後の保守やメンテナンスを行う技術者の数が足りないために、風車が故障しても修理までに待たされるという事態も実際に発生している。
だから、風力発電を推進する自治体や、風力発電所を実際に所有していたり域内に持つ自治体の中には、国の定める職業大学の制度を使って、風力発電のメンテナンス技術者の養成に取り組むところが増えている。失業者のみを対象とした短期の職業訓練(いわゆる積極的労働市場政策)ではなく、2年間の勉学を必要とする教育課程だ。終了後は就職がほぼ保証されているため人気が非常に高く、ある自治体の養成コースには35人の定員に対し200人ほどが応募するなど、競争率がかなり高い。学生の中には、高校からそのまま進学する人もいるし、別の仕事に就いていたものの将来性のある風力発電業界への転職を考える人や、失業を契機にこの道に進もうとする人もいる。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/76/0f/1cfeaa6ed941b3ab0529814b1e9b1a57.jpg)
20代から30代後半までいろいろ。女性の姿もある。
大規模な風力発電所はスウェーデン北部の過疎地域に集中しているため、地元自治体としては風力発電所の建設とその後のメンテナンスで雇用の機会を確保したい。しかし、現状では労働需給のミスマッチが生じている。だから、必要とされる技術者の養成にも躍起になっている。風力発電業界の予測によると2020年までに国内で12000-14000人の風力関連の雇用(メンテナンス技術者を含む)が生まれるだろうという。この半分以上はおそらくスウェーデン北部での雇用となるだろう。
学ぶ学生の側も地元の人が多い。安定した職につながるという期待だけでなく、身につけた技術を使って国外で働く可能性も開けてくるためだ。教育では、陸上風力とともに洋上風力の発電所についても学ぶ。2年間の教育課程のうち、3割近くは実際の企業による実地研修だという。ここで、企業・業界との接点が生まれ、コース終了前から就職が決まる人がほとんどのようだ。
風力発電のメンテナンス技術者を養成する最初の職業訓練が2006年に始まって以来、今では国内10数か所で同様の教育が行われている。また、職業大学(2年課程)だけでなく、一般大学でもよりレベルの高い風力発電技術者の養成が行われている(例えば、風力技術の修士課程など)。
ところで日本では福島事故の収拾にあと40年かかるといわれています。国内では新設の見込みがかなり少なくなった斜陽の分野に、新たに優秀な原発研究者・技術者が育つのでしょうか。40年となれば一世代で完了するには厳しい年月です。
ドロドロに溶けてしまったであろう核燃料を回収するには技術の進展、継承が不可欠です。
原発ムラの大学教授たちに“罪滅ぼし”のためにも若き研究者・技術者を育ててほしいものです。
ただ、さらに次の世代では原発技術は必要でない社会がいいと思うのですが、そのころには私はこの世にはいないでしょう。そこまで心配する必要はないか。。
ただ風力発電も、実際は問題は多いんですよね…
「裸のフクシマ」などを書かれた、たくきよしみつさんも
取材しておられましたが、いわき市などでの訴訟や
設備利用率の話を読むと、景観以外の問題でもいろいろ
負の問題もあるように思えます。
風力に適した・適していない国土の違いもありますし。
太陽光発電も、独では大手のQセルズをはじめ
ソロンやソーラー・ミレニアムも破綻した経緯を思うと
批判が行われにくく閉じた感じで、コストの悪い
公共事業としての面もあります。
「再生可能エネルギー」というと一見バラ色のようなものに
見えますが、一部の人たちを見ていると一面的な賛美のみで
問題や負の面を伝えないのでは、けっきょく原発の安全神話
を語っていた人たちと同じで違和感を感じますが
そのあたりのリスクとコストをふまえて冷静に議論できる
土壌が日本にもできるといいのだけれど…。
もちろん、自然エネルギーにも短所はありますが、その短所は原子力のそれと比べてどうなのだろうか、を考える必要があります。
Qセルズに関しては、あれはFITを通じた政府の補助がなくなったから倒産した、というわけではなく、技術とコスト競争で立ち行かなくなったためでしょう。FITの買い取り価格が、設備投資の価格・コスト減少に応じて引き下げられていくことは、当初からそういうルールなのですから。逆に、スペインではそれが高い水準に維持されたままであったから過剰投資や利権の発生など様々な問題を生みました。
>FITを通じた政府の補助がなくなった
は「FITを通じた政府の補助が減額された」の間違いです。