前回書いたようにバルト海の生態系バランスが乱れ始めている兆候が近年になって現れ始め、その原因の一つが、かつては豊富に生息していたタラの枯渇であることが明らかになってきた・・・。
2002年秋、こんな疑問から自ら調査に乗り出した一人の女性ジャーナリストがいた。彼女はそれまで環境ジャーナリストや文化ジャーナリストとして雑誌の編集長を務めたり、公共ラジオの番組で社会問題を扱ったりしていたが、それらの仕事を辞めた上での本格的な調査だった。
すると、スウェーデン近海ではバルト海だけでなく、ヨーテボリを中心とするスウェーデン西海岸でも漁業資源の枯渇が深刻であることが分かってきた。タラだけでなく、カレイやヒラメ、ホワイティング(タラ科の魚)といったかつては一般的だった魚が、最新機器を取りつけたトロール漁船を使っても、なかなか獲れにくくなっていたのだった。
問題の根源は明らかだった。数が減り続けている魚の群れを、より多くの漁船が追いかけ回している、という事実だった。水産資源の管理がなぜきちんと行われてこなかったのか? スウェーデンの行政機関は、なぜ事態がここまで深刻になるまで問題を放置してきたのだろうか・・・?
このような疑問に対する答えを追い求めながら、彼女はスウェーデンだけでなくヨーロッパ全体でも同様の問題があることに気づく。ヨーロッパ近海では、水産資源が減少してきたにもかかわらず、漁船の数や漁獲能力は増え続ける一方だった。そして、彼ら漁師の仕事を確保するために、EUはアフリカをはじめとする途上国の漁業権を買い取り、漁を行わせていた。途上国の沿岸部では本来、地元の漁師が小規模な沿岸漁業を通じて生計を立てていたものの、ヨーロッパから遥々やってくる効率的な近代漁船のおかげで、彼らの漁も次第に成り立たなくなり、貧困に追い込まれることになっていた・・・。
彼女は自らの調査や取材を一冊の本にドキュメンタリーとしてまとめ、「Tyst hav(沈黙の海)」と題して2007年夏にスウェーデンで出版した。スウェーデン国内では発売と同時に大きな反響を呼び、様々なメディアに取り上げられ、社会的な議論を呼び起こした。
そして、私の翻訳による日本語版が今月末に日本で発売される!
『沈黙の海 ― 最後の食用魚を求めて』(出版社・新評論より)
本の目次:
1.ウナギ
2.警告
3.鳴らされない警鐘
4.共有地の悲劇
5.ヨーテボリの漁船がやって来るまでは・・・
6.漁業への補助金行政
7.発展途上国との漁業協定
8.EUの共通漁業政策と「乱獲の義務」
9.魚の養殖 - 果たして最善の方法か?
10.解決への糸口
エピローグ「2秒間」
訳者あとがき
そして、この発売記念もかねたミニセミナーが11月30日に、東京・六本木のスウェーデン大使館で開催される!
☆ スウェーデンブックセミナー ☆
「知識ある食生活からはじまるサステナビリティ ― 2冊の本による日本への問いかけ」
11月30日(月)18時
会場:スウェーデン大使館 主催:持続可能なスウェーデン協会
セミナーの詳細や参加申し込みは上のリンクをクリック!
2002年秋、こんな疑問から自ら調査に乗り出した一人の女性ジャーナリストがいた。彼女はそれまで環境ジャーナリストや文化ジャーナリストとして雑誌の編集長を務めたり、公共ラジオの番組で社会問題を扱ったりしていたが、それらの仕事を辞めた上での本格的な調査だった。
すると、スウェーデン近海ではバルト海だけでなく、ヨーテボリを中心とするスウェーデン西海岸でも漁業資源の枯渇が深刻であることが分かってきた。タラだけでなく、カレイやヒラメ、ホワイティング(タラ科の魚)といったかつては一般的だった魚が、最新機器を取りつけたトロール漁船を使っても、なかなか獲れにくくなっていたのだった。
問題の根源は明らかだった。数が減り続けている魚の群れを、より多くの漁船が追いかけ回している、という事実だった。水産資源の管理がなぜきちんと行われてこなかったのか? スウェーデンの行政機関は、なぜ事態がここまで深刻になるまで問題を放置してきたのだろうか・・・?
このような疑問に対する答えを追い求めながら、彼女はスウェーデンだけでなくヨーロッパ全体でも同様の問題があることに気づく。ヨーロッパ近海では、水産資源が減少してきたにもかかわらず、漁船の数や漁獲能力は増え続ける一方だった。そして、彼ら漁師の仕事を確保するために、EUはアフリカをはじめとする途上国の漁業権を買い取り、漁を行わせていた。途上国の沿岸部では本来、地元の漁師が小規模な沿岸漁業を通じて生計を立てていたものの、ヨーロッパから遥々やってくる効率的な近代漁船のおかげで、彼らの漁も次第に成り立たなくなり、貧困に追い込まれることになっていた・・・。
彼女は自らの調査や取材を一冊の本にドキュメンタリーとしてまとめ、「Tyst hav(沈黙の海)」と題して2007年夏にスウェーデンで出版した。スウェーデン国内では発売と同時に大きな反響を呼び、様々なメディアに取り上げられ、社会的な議論を呼び起こした。
そして、私の翻訳による日本語版が今月末に日本で発売される!
『沈黙の海 ― 最後の食用魚を求めて』(出版社・新評論より)
1.ウナギ
2.警告
3.鳴らされない警鐘
4.共有地の悲劇
5.ヨーテボリの漁船がやって来るまでは・・・
6.漁業への補助金行政
7.発展途上国との漁業協定
8.EUの共通漁業政策と「乱獲の義務」
9.魚の養殖 - 果たして最善の方法か?
10.解決への糸口
エピローグ「2秒間」
訳者あとがき
そして、この発売記念もかねたミニセミナーが11月30日に、東京・六本木のスウェーデン大使館で開催される!
☆ スウェーデンブックセミナー ☆
「知識ある食生活からはじまるサステナビリティ ― 2冊の本による日本への問いかけ」
11月30日(月)18時
会場:スウェーデン大使館 主催:持続可能なスウェーデン協会
セミナーの詳細や参加申し込みは上のリンクをクリック!
ぜひお話を聴きに伺いたいと思います!
バルト海や地中海は利害関係者が多いし魚種が多くて資源管理が難しい?
climate-gateについて、スウェーデンでは
どのように報道されていますか?
日本メディアではほとんど情報がありません。
日本は情報面で孤立しているということかもしれません。
Yoshiさん知ってるかと電話があり、翌日でしたか、西早稲田の新評論に出向いていただきましたよね。
タイミング良く、<つなぐ>ことができて、私としても嬉しかったです。
いつか3人で一献傾けたいですね。
あいにくスウェーデン大使館にはうかがえませんが(今月末までに1本献上しないと闇討ちにあいます。確実に。この調子でいくと30日深夜に送信となりそうです。)、大成功を自宅の作業部屋から祈っています。
本、購入します。返す返すも残念でした…
魚好きとしてはとても気になるので本を読んでみたいと思います。
先日エコプロダクツ展に行ってきました。日本でもエコラベルが
増えているなと思いました。
段々とスウェーデンライク(?)になってきている感じがします^^