前回紹介したバルト海における3つの現象、つまり(1) アオコの大量発生、(2) 海鳥の大量死・発育不良、(3) タラの枯渇、に共通するものは何だろうか? 答えは、3つとも互いに関連し合っているということだ。
より正確に言えば、(3) タラの枯渇 が(1) と (2) と (3) の背景にあるということだ。((3)が(3)の背景にあるというのは、タラの枯渇がさらにその枯渇を助長している、という悪循環に陥っているということ)
バルト海の生態系は、次のような食物連鎖の絶妙なバランスの上に成り立っている。
他の魚を食べる魚(タラ・サケ)やネズミイルカ
↓↓↓
動物プランクトンを食べる魚(ニシン・スプラット)
↓↓
動物プランクトン
↓
植物プランクトン
一番上に位置する魚としては、ネズミイルカ(トゥンムラレ:tumlare)が以前から数を減らしてきただけでなく、既に触れたようにタラが過去20年ほどで激減した。
(ちなみに、サケは野生種はほとんどいなくなり、現在バルト海に生息しているのは人工孵化され放流されたサケがほとんどだ)
そして、これらの動物が数を減らすと、彼らの餌であったニシンやスプラット(ニシン科の小魚)が天敵がいなくなったのをいいことに数を大きく増やすことになる。実際にこれらの魚の大量繁殖は確認されている。すると今度は、ニシンやスプラットが餌としている動物プランクトンが枯渇することになる。そして、逆にこのことによって今度は動物プランクトンが餌としてきた植物プランクトンが大量発生する、という連鎖反応が起きることになる。
アオコは植物プランクトンの一つだ。だから、この説が正しければ、生態系の頂点に立っていた肉食魚やイルカが姿を消したことが、巡りめぐってアオコの大量発生につながっているということになる。
他の魚を食べる魚(タラ・サケ)やネズミイルカ[枯渇]
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動物プランクトンを食べる魚(ニシン・スプラット)[大量発生]
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動物プランクトン[枯渇]
↓
植物プランクトン[大量発生]
また、食物連鎖の途中に位置している動物プランクトンは、先に触れた理由で数が減っており、それを増殖したニシンやスプラットが奪い合う状況になっている。その結果、ニシンやスプラットの一匹あたりの重量が大きく減少し、痩せた魚が多くなっている、という現象も確認されている。
前回書いたように、海鳥の大量死の原因は、ビタミンB1(ティアミン)の不足によることが明らかになっているが、ティアミン不足の原因は、実は海鳥が餌としているニシンやスプラットの組成に何らかの変化があったためではないか?という説が近年浮上している。(私は正確なことは分からないが、ティアミンは動物プランクトンによって生成されるということだと思う)
さらに、タラの枯渇によって、ニシンやスプラットが大きく増えたために、これらの魚にタラの卵や稚魚が食べられやすくなり、タラの減少にさらに拍車がかかるという悪循環に陥っている。
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複雑な相互依存関係の上に成り立っている自然の生態系。一つの魚の枯渇や絶滅は、その種の存続だけでなく、その生態系を織り成している他の種にも大きな影響を及ぼすことになる。(続く・・・)
より正確に言えば、(3) タラの枯渇 が(1) と (2) と (3) の背景にあるということだ。((3)が(3)の背景にあるというのは、タラの枯渇がさらにその枯渇を助長している、という悪循環に陥っているということ)
バルト海の生態系は、次のような食物連鎖の絶妙なバランスの上に成り立っている。
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動物プランクトンを食べる魚(ニシン・スプラット)
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動物プランクトン
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植物プランクトン
一番上に位置する魚としては、ネズミイルカ(トゥンムラレ:tumlare)が以前から数を減らしてきただけでなく、既に触れたようにタラが過去20年ほどで激減した。
(ちなみに、サケは野生種はほとんどいなくなり、現在バルト海に生息しているのは人工孵化され放流されたサケがほとんどだ)
そして、これらの動物が数を減らすと、彼らの餌であったニシンやスプラット(ニシン科の小魚)が天敵がいなくなったのをいいことに数を大きく増やすことになる。実際にこれらの魚の大量繁殖は確認されている。すると今度は、ニシンやスプラットが餌としている動物プランクトンが枯渇することになる。そして、逆にこのことによって今度は動物プランクトンが餌としてきた植物プランクトンが大量発生する、という連鎖反応が起きることになる。
アオコは植物プランクトンの一つだ。だから、この説が正しければ、生態系の頂点に立っていた肉食魚やイルカが姿を消したことが、巡りめぐってアオコの大量発生につながっているということになる。
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動物プランクトンを食べる魚(ニシン・スプラット)[大量発生]
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動物プランクトン[枯渇]
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植物プランクトン[大量発生]
また、食物連鎖の途中に位置している動物プランクトンは、先に触れた理由で数が減っており、それを増殖したニシンやスプラットが奪い合う状況になっている。その結果、ニシンやスプラットの一匹あたりの重量が大きく減少し、痩せた魚が多くなっている、という現象も確認されている。
前回書いたように、海鳥の大量死の原因は、ビタミンB1(ティアミン)の不足によることが明らかになっているが、ティアミン不足の原因は、実は海鳥が餌としているニシンやスプラットの組成に何らかの変化があったためではないか?という説が近年浮上している。(私は正確なことは分からないが、ティアミンは動物プランクトンによって生成されるということだと思う)
さらに、タラの枯渇によって、ニシンやスプラットが大きく増えたために、これらの魚にタラの卵や稚魚が食べられやすくなり、タラの減少にさらに拍車がかかるという悪循環に陥っている。
複雑な相互依存関係の上に成り立っている自然の生態系。一つの魚の枯渇や絶滅は、その種の存続だけでなく、その生態系を織り成している他の種にも大きな影響を及ぼすことになる。(続く・・・)
エントリーとほとんど無関係ですが。。
日本でもサケの放流は大量にされていますが、実のところ、放流してもしなくても個体数は変わらないと言う研究報告を聞いたことがあります。(放流は公共事業のだから続いているだけ)。
バルト海ではサケの放流が功を奏しているのですね? 野生種が減ったとは、在来種とは別のサケを放流したと言う事ですか? 日本で種どころか、川ごとにサケの管理をするのが普通です。
私がここで書いた野生種とは、自力で繁殖地まで戻り産卵し、人間の手を借りずに次世代が生まれているものということです。スウェーデンではそのような河川は数少なく、そのために人工放流によるサケ(在来種と同じ)でサケ漁が細々と成り立っています。
ただ、人工的に産卵させ、放流し、戻ってきたサケに産卵させ、放流し、ということを繰り返していくと世代が進むにつれて、本来の野生種とは遺伝的にも異なってくるようで、野生種とは異なるものと考えたほうが良いのではないかと思います。
>実のところ、放流してもしなくても個体数は変わらないと言う研究報告
放流した分だけ、成魚として川に戻ってくるサケはやはり多くなると思いますが、「個体数が分からない」というのはどの段階の個体数のことなのでしょうか?
http://cse.fra.affrc.go.jp/moritak/pink.html