今回のオリンピックでは、ロシア政府が「アンチ・ゲイ法」を制定し、LGBT(lesbian, gay, bisexual, transgender)の人々への差別を強化していることに対する抗議として、オバマ大統領をはじめ各国首脳が開会式への出席を辞退した。アメリカはさらに、LGBTであることをカミングアウトしている3人の元メダリストをアメリカ代表団に加えることで、ロシア政府に対する抗議の態度を示そうとした。
元メダリストの一人 Caitlin Cahow(アイスホッケーの選手)がスウェーデン公共テレビのインタビューに答える
スウェーデンの選手の中にも、LGBT差別への抗議の意志を何らかの形で示したい人が少なからずいる。ただし、スポーツ・イベントの場で政治主張の表明はタブーとされ、メダルの剥奪の恐れもある。
昨年夏の世界陸上選手権はモスクワで開催されたが、走り高跳びの競技においてスウェーデン選手Emma Green Tregaroが爪に虹色のマニキュアを塗って出場したことが大きな話題を呼んだ。虹色とはもちろんLGBTの象徴である。彼女の意図は「すべての人が同等の価値を持っていること」をアピールすることであった。競技に先駆けて、彼女がマニキュアを塗った爪の写真をInstagramにアップロードしていたこともあり、あっという間にニュースが世界に伝搬した。
決勝進出が決まった後のインタビュー
これに対し、ロシアの走り高跳びのライバルであるJelena Isinbajevaは、記者会見においてロシア政府の「アンチ・ゲイ法」を擁護し、このスウェーデン選手を激しく批判。「私たちの国と国民に対する侮辱だ」、「私たちは別におかしなことをしていない。(ヘテロな生き方は)歴史に基づいているだけだ。ロシアでLGBTの問題が存在したことはこれまでにないし、今後も存在してほしくない」と述べている。
このスウェーデン選手の抗議の仕方は非常に上手いものだと思う。主催者から文句を言われれば、自分の趣味でマニキュアの色を選んだと言い逃れできる。Emma Green Tregaro自身、このアクションを「抗議」ではなく「態度表明」に過ぎないと答えている。そして、そんなささやかな態度表明が、こうしてメディアに取り上げられ、ロシア選手が記者会見でそのことに触れたことで、ロシアにおいても(国営メディアは無理としても)ネット上では話題を呼んであろうから、効果はそれなりにあったと思う。
スウェーデンでの彼女の受け止められ方は非常に好意的であり、メディアで頻繁に使われた「nagelprotest」(爪による抗議)という造語は、年末に発表された昨年の新語の一つに加えられている。
さて、今回のソチ五輪において、スウェーデンの選手が競技において何らかの政治的主張を行っても良いのか? スウェーデン五輪委員会(SOK)として何らかのガイドラインを選手に対して提示しているのか?が、先日のニュース・ディベート番組で話題になった。
スウェーデン五輪委員会の委員長は「オリンピックの競技場ではデモやマニフェステーションは行わないという原則は大事。古代オリンピックは、戦争中の国でもその期間は停戦し、政治抜きでスポーツを楽しもうという精神に基いており、それは今でも尊重されなければならない」とした上で、オリンピック委員会として各選手の身なりをいちいちチェックするつもりはなく、「爪はOK」だと答えた。「例えば、十字架を首から下げる選手はいるが、それが単に本人の信仰に基づいているだけであっても、見る人によっては宗教的立場の表明と感じることもある」と指摘し、その程度なら許容範囲内であるという判断を示した。一方、「競技場で特定のロゴや旗を選手が身につけることはダメ」と答えていた。ロゴはダメでも爪・十字架はOKということなので、線引きが曖昧なようにも感じるが、自分の趣味や信仰・信念に基づく個人的な身なりの範疇なのか、政治的な意思表明なのかの違いにはどこかで線引きをせねばならず、スウェーデン五輪委員会としても頭を悩ませているように感じた。
スウェーデン五輪委員会の委員長
一方、言論の自由の原則は揺るがせないものであるから、各選手が競技場の外で、たとえば記者会見などで意見を述べたり、意思表明をしたりすることは全く自由だと強調。ロシアの現地でLGBTの活動家と交流する選手がいても、その選手がスウェーデンの代表として自覚を持って行動している限りにおいて、それは各選手の自由なので、スウェーデン五輪委員会としてその是非を判断をすることはありえない、と述べていた。
元メダリストの一人 Caitlin Cahow(アイスホッケーの選手)がスウェーデン公共テレビのインタビューに答える
スウェーデンの選手の中にも、LGBT差別への抗議の意志を何らかの形で示したい人が少なからずいる。ただし、スポーツ・イベントの場で政治主張の表明はタブーとされ、メダルの剥奪の恐れもある。
昨年夏の世界陸上選手権はモスクワで開催されたが、走り高跳びの競技においてスウェーデン選手Emma Green Tregaroが爪に虹色のマニキュアを塗って出場したことが大きな話題を呼んだ。虹色とはもちろんLGBTの象徴である。彼女の意図は「すべての人が同等の価値を持っていること」をアピールすることであった。競技に先駆けて、彼女がマニキュアを塗った爪の写真をInstagramにアップロードしていたこともあり、あっという間にニュースが世界に伝搬した。
決勝進出が決まった後のインタビュー
これに対し、ロシアの走り高跳びのライバルであるJelena Isinbajevaは、記者会見においてロシア政府の「アンチ・ゲイ法」を擁護し、このスウェーデン選手を激しく批判。「私たちの国と国民に対する侮辱だ」、「私たちは別におかしなことをしていない。(ヘテロな生き方は)歴史に基づいているだけだ。ロシアでLGBTの問題が存在したことはこれまでにないし、今後も存在してほしくない」と述べている。
このスウェーデン選手の抗議の仕方は非常に上手いものだと思う。主催者から文句を言われれば、自分の趣味でマニキュアの色を選んだと言い逃れできる。Emma Green Tregaro自身、このアクションを「抗議」ではなく「態度表明」に過ぎないと答えている。そして、そんなささやかな態度表明が、こうしてメディアに取り上げられ、ロシア選手が記者会見でそのことに触れたことで、ロシアにおいても(国営メディアは無理としても)ネット上では話題を呼んであろうから、効果はそれなりにあったと思う。
スウェーデンでの彼女の受け止められ方は非常に好意的であり、メディアで頻繁に使われた「nagelprotest」(爪による抗議)という造語は、年末に発表された昨年の新語の一つに加えられている。
さて、今回のソチ五輪において、スウェーデンの選手が競技において何らかの政治的主張を行っても良いのか? スウェーデン五輪委員会(SOK)として何らかのガイドラインを選手に対して提示しているのか?が、先日のニュース・ディベート番組で話題になった。
スウェーデン五輪委員会の委員長は「オリンピックの競技場ではデモやマニフェステーションは行わないという原則は大事。古代オリンピックは、戦争中の国でもその期間は停戦し、政治抜きでスポーツを楽しもうという精神に基いており、それは今でも尊重されなければならない」とした上で、オリンピック委員会として各選手の身なりをいちいちチェックするつもりはなく、「爪はOK」だと答えた。「例えば、十字架を首から下げる選手はいるが、それが単に本人の信仰に基づいているだけであっても、見る人によっては宗教的立場の表明と感じることもある」と指摘し、その程度なら許容範囲内であるという判断を示した。一方、「競技場で特定のロゴや旗を選手が身につけることはダメ」と答えていた。ロゴはダメでも爪・十字架はOKということなので、線引きが曖昧なようにも感じるが、自分の趣味や信仰・信念に基づく個人的な身なりの範疇なのか、政治的な意思表明なのかの違いにはどこかで線引きをせねばならず、スウェーデン五輪委員会としても頭を悩ませているように感じた。
スウェーデン五輪委員会の委員長
一方、言論の自由の原則は揺るがせないものであるから、各選手が競技場の外で、たとえば記者会見などで意見を述べたり、意思表明をしたりすることは全く自由だと強調。ロシアの現地でLGBTの活動家と交流する選手がいても、その選手がスウェーデンの代表として自覚を持って行動している限りにおいて、それは各選手の自由なので、スウェーデン五輪委員会としてその是非を判断をすることはありえない、と述べていた。
資料として参考にしたいので、変更を期待しております。
ロシアの法律が成立する前にすでに出来ていたということですが。
http://www.dn.se/sport/inte-en-fortackt-protest/
あと、ストックホルムのスタジアムで行われた7色の旗がひらめく中で大衆がロシアの国歌を歌っている動画も面白いと思いました。
(URL転載きんしみたいです。)