スウェーデンの今

スウェーデンに15年暮らし現在はストックホルム商科大学・欧州日本研究所で研究員

カール16世グスタフの誕生日

2006-05-02 14:40:30 | スウェーデン・その他の政治
スウェーデンの国王カール16世グスタフが60歳の誕生日を迎えた。
王宮前からストックホルム市庁舎までを20分かけてパレードを行った。
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スウェーデンの正式名称は「スウェーデン王国」であり、日本と同じ立憲君主制を採用している。現在の王朝は、18世紀前半にナポレオン配下の将軍だったベルナドッテをスウェーデンに招いて、王位につけたのが始まりで“ベルナドッテ朝”と呼ばれる。つまり、現在の王家は根っからのスウェーデン人ではない。現在の王妃はドイツ人。

スウェーデンにおける立憲君主制の存続も、近代の歴史の中であれこれ議論されてきた。1930年以降、ほとんどの期間、政権についてきた社会民主党の党綱領には、「君主制の廃止と共和制への移行」が党の目標の一つだと書かれてきたが、王室に対する国民の人気も厚く、極端な改革は党の命取りになる。かといって、党綱領からのこの条文の抹消も現在まで行われてはいない。

それでも、君主制の危機は1960年代終わりに訪れる。制度の廃止を訴える声も強くなり、1971年に各党の妥協の末に、ある合意がなされる。国王の役割を大幅削って「国家に関わる様々な重要事項について首相から常に報告を受けること」とのみとしたのだ。日本や他の国のように、議会を召集したり、解散させたり、もしくは法律に署名を加える、といった儀式的なことですら一切含まれていない。

スウェーデンの現在の国家の規定は1974年憲法に基づくが、ここでそれが正式に明記された。君主制をぎりぎりのところで維持するための妥協だったとされる。そのため、スウェーデンの立憲君主制はヨーロッパの中でも、かなり“整然と”したものになった。ある意味、“翼をもぎ取られた(vingklippt)”君主制だ。共和制にしようと思えば、憲法の条文を1、2行変えれば事足りるとか。

とはいっても、王室に対する現在の人気は、歴史的に見てもかなり高く、世論調査によると、国民の6~8割が現在の立憲君主制のままでよいと答えている。だから、当分は安泰だ。現在の国王の一番上の子供は女性なので、次の王位継承者は女性となる。そのための典範の改正もすでになされている。

王室や国王のファッションや写真、海外訪問などをタブロイド紙や週刊誌が盛んに書いているのは日本と同じだが、少し違うのはタブーがあまり無いこと。スキャンダルや恋人・愛人報道など、タブロイド紙はウソもまことも書きたい放題にやっているし、テレビのバラエティー番組などでは、国王や王妃の物まねがものすごく流行っている(国王はちょっとドモりがち、王妃はドイツ訛りのスウェーデン語を喋るので真似がしやすいのだ)。公共テレビですら似たようなことをやっている。政治・経済を扱う真面目なラジオ番組(しかも公共ラジオ)の中にも、有名人の物まねで一週間の出来事を茶化す、というコーナーが必ずあり、国王の物まねも毎週必ず登場する。これはかなり似ていて笑える。

でも、最近は、度が過ぎるのか、宮内庁がやたらと苦言をもらしている。国王の60歳を記念したテレビ・インタビューでも、国王自身「見るのもうんざり」と言っていた。しかし、そうやって、バラエティーのネタにされるのも王室が人気がある証拠、とテレビやラジオはお構いなし。

ヨーロッパに残る王室はどれくらいあるのだろう、と思っていたら、今日の新聞に一覧があった。
・イギリス
・リヒテンシュタイン
・ルクセンブルグ
・オランダ
・ベルリン
・ノルウェー
・スウェーデン
・デンマーク
・モナコ
・スペイン

てっきり、もっとたくさんあるのかと思ったけれど、10カ国だけのようだ。