自 遊 想

ジャンルを特定しないで、その日その日に思ったことを徒然なるままに記しています。

近代化ゆえの窮乏

2013年11月28日 | Weblog

 柳田国男の民俗学への発心の一つは、日本の近代化への批判的な視点にあると思う。
 農政学を専攻し農政家となった点にも、そこから転じて民俗学を興した点にも、そういう視点が貫かれている。近代化は人々の暮らしに不幸感を蓄積しつつあるという視点。『遠野物語』などの民族学研究にも、このような視点が色濃い。
 その不幸感の源は近代化ゆえに発生してきた窮乏にあった。柳田曰く「昔の貧乏と云えば放蕩その他自ら招いた貧乏か、又は自分の家に現はれて来た一時の大なる災害不幸の結果で稀に起こることでありましたが、現代では此外に真面目に働きつつ尚少しづつ足りないと云う一種の不幸が現はれて来ました」。
 こう述べて柳田は、「是は金銭経済時代の特色で」、「今日の貧乏は自覚しつつ防ぐに術の無い苦しい窮乏」と断定している(『時代ト農政』1901年)。
 100年以上前の警告ではあるが、現代の所謂ワーキングプアを予想していた感がある。「防ぐに術の無い苦しい窮乏」の時代が繰り返すということか。近代化、就中、工業化という事を考え直す時代も繰り返す方が良いと思う。
 第一次産業への立脚を重視すべきだと思う。