以前ドイツに住んでいた頃、デパートの地下でカモやガンなどの野鳥が羽が付いたまま売っていました。野生のシカ肉も売っています。ライン河で捕れたウナギも養殖の鱒もドイツ鯉も活きたまま売っています。
私は嬉しくなり野鳥のカモ、活きた鱒、活きウナギ、野生のシカ肉などを買って来て料理をして美味しいドイツビールとともに食べました。
ところがバターでムニエルにした活きた鱒以外は美味しくなかったのです。それ以外は酷く不味かったのです。
ドイツの食文化としての料理法に無知でそれぞれの料理方法が間違っていたのです。
素材を煮たり焼いたりする前の下準備が重要なことを無視していたのです。熟成が大切なのです。
以前に北海道で獲れたエゾシカ肉を沢山頂く機会がありました。その鹿肉を送って下さった「でいしゅうさん」という方から鹿肉を美味しく食べる下準備の方法を教えて頂きました。
今日は野生の鹿肉を美味しく食べる方法をご紹介いたします。
美味しい肉はあまり凝った料理をしないで、焼いて塩コショウだけで食べると美味しいのです。
焼いた鹿肉は実に柔らかで滋味豊かな奥深い美味しさがあったのです。ほんの少し野生の風味がして奥行のある味です。その上、同じ草食動物の和牛のような風味がかすかにするのです。
そこで鹿肉を送ってくれたでいしゅうさんにどうして美味しいのかを聞きました。
3つの絶対条件があるようです。
(1)鹿を一発で即死させ苦しめない。(苦しんで死んだ肉は全て不味い)
(2)即死後、体温の下がらないうちに完全に血を抜く。
(3)解体の時、毛皮に触った手で肉に絶対に触ってはいけない。毛皮に触った手で肉に触ると腐敗菌や雑菌がすぐに繁殖し長期の熟成が出来なくなるのです。
以上をきちんと行った鹿肉は数日間の冷蔵庫での熟成で柔らかになり風味も増すのです。
以上の3条件を完全に出来る猟師の獲った鹿肉は美味しいのです。
草食動物の肉は和牛でも輸入牛でも鹿でも数日間熟成しないと不味いのです。
私は濡れタオルで包んで3日間冷蔵庫で熟成しました。
そうしたら実に柔らかになりました。風味も一段と増したのです。
写真は「でいしゅう」さんに送って頂いたエゾシカ肉です。

1番目の写真は私の家で3日間の熟成が終わったモモ肉を切っている場面の写真です。

2番目の写真は切り終わった肩ロースの写真です。これも私の家で3日間の熟成が終わったものです。
あまり美味しかったのででいしゅうさんに更に美味しい鹿肉について聞きました。そうしたら以下のような事が大切だと教えくれました。
1、美味しい年齢(2歳の牡)の鹿であるか。
2、牧草をしっかり食べて肥育している季節か。(北海道の鹿は牧草地に出て牧草を食べている)
3、雪の季節は美味しくない。
4、撃った時に一発で首の骨を砕いて、即死させたか。苦しめた鹿は不味い。
5、直ぐに放血を行う。小バケツ一杯は出る。
6、内臓をすぐに抜く。
7、体温を下げる。皮は早く剥いだ方が良い。
8、皮を剥ぐときに、毛に触った手で肉を掴まない。
9、大分けにした肉は吊るして血を抜く。
10、肉をブロックにしてから、濡れタオルに包み、3日ほど熟成さす。
11、肉からはスジを取り、肉の繊維に気を付けて切る。
私は山梨県の甲斐駒岳の麓にある肉屋さんから鹿肉やイノシシ肉を買って食べたことが何度もありました。
イノシシ肉は美味しいのですが、鹿肉は全て不味かったのです。
その肉屋さんの息子さんが鉄砲撃ちの猟師で甲斐駒岳の麓で獲った新鮮な肉なのです。
鉄砲撃ちの息子が獲った新鮮な鹿だから美味しいよと女主人が自慢していました。
しかしその息子さんの血抜きや解体処理が間違っていたのです。
その長年親しんでいた肉屋さんも、主人が病気になり廃業してしまいました。
さて冒頭にスーパーに並んでいる牛肉も豚肉も美味しいと書きました。それらは解体方法が適切で熟成されているからです。
西洋人な野生のカモや鹿肉を購入後に自分で適切に処理し美味しく料理します。
ドイツ人もカモなどの野鳥の熟成と料理法を知っているのです。
ライン河で捕れたウナギを清浄な水で3日飼って泥を吐かせることも知っています。その後輪切りにて美味しいウナギのスープにするのです。
ドイツと言えばニシンの発酵させたものもあります。日本の鮒寿司に似た強烈な匂いと味がします。
上手に発酵させれば最高に美味ですが下手に発酵させたものは最低です。
この様に西洋の食文化も奥が深いのです。ドイツ料理は不味いと言う人は上手に発酵させたシン(マテユエステ・ヘリング)を食べたことが無いのです。
もう一つ。スウェーデンには「シュールストレミング」があります。世界で一番臭い食べ物 と言われているニシンの缶詰です。
缶の中で発酵するため缶を開けると中の汁が飛び出しその汁が付くと一週間以上匂いが取れないとか があります。
缶の中で発酵するため缶を開けると中の汁が飛び出しその汁が付くと一週間以上匂いが取れないとか があります。

3番目の写真はスウェーデンの「シュールストレミング」です。
世界各国の食文化というものは現地に行って食べてみないと分かり難いものですね。
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。後藤和弘(藤山杜人)