6月は、上空の偏西風が蛇行して、低気圧が停滞気味となったり、上空に寒気が入りやすくなったりして、東京と含めた関東地方や甲信越地方では、とりわけ雷の発生が多かった月でした。
月変わって7月になっても、この傾向は変わらず、1日も、関東地方や甲信越地方、東北地方一部中心に、あちこちで雷や一時的な強い雨に見舞われました。
このように、よく、天気番組などで、「上空に寒気が入って大気が不安定になり雷が発生する恐れがあります・・・」などの言い回しをよく耳にしますが、上空に寒気が流れ込んできて気象条件時、雷発生する箇所には、さらに、以下のような外的要因があります。
まず、引用図①ですが、
東京都心部が一時、時間雨量50ミリ前後の激しい雷雨に見舞われた、6月29日9時の、AXFE578図(上側・・・500hpa※上空5500m付近の渦度と等高度船分布図 下側・・・850hpa※上空1500メートル付近 の風向風速と等温線図と700hpa※上空3000m付近の、斜線部分が上昇流域 白抜き部分が下降流域 を示します。)をご覧ください。
①
引用図内、青丸線で、上側を500hpaの顕著な正渦度 を示していますが、 この正渦度、実線で示した等高度線とおおむね交差する位置にあり、こういう位置にありますと、この正渦度の集団、実線の等高度線に沿って移動している状態を示しています。
一方、下側を青丸線で、500hpaの正渦度の移動方向前側(移流に伴う と呼びますが)に分布する、上空3000m付近の顕著な上昇流域をしめしていますが、正渦度の移流とともに、この顕著な上空3000m付近の上昇流域も東へ移動することが考えられます。
この、引用図①の青線部分と、以下に図示する ②6月29日9時の日本付近レーダーアメダス解析雨量図 と ③6月29日15時の日本付近レーダーアメダス解析雨量図 とを比較してみましょう。
②
③
引用図①の青丸線・・・発達した降水域(発達した雷雲の集団ですが)500hpaの正渦度移流域に伴う、帯状に分布する上空3000m 付近の顕著な上昇流域に沿って、帯状になって本州を移動しており、引用図③より、29日15時になると、前記したように、帯状に分布しながらも、関東山地北部や西部あたりで、局地的に降水域が一層強まっている様子がわかります。
雷を引き起こす積乱雲というもの、上空(目安となるのが上空5500m付近となりますが)に寒気が入って、地表付近との気温差が大きくなる状態は、まず、必要条件となりますが、
さらに、外的要因として(以下、筆者調べ)
Ⅰ:上空3000m付近の上昇流域(500hpa※上空5500m付近の正渦度移流域にともなうもの)
Ⅱ:地形的特性や、海陸風の収束箇所、海陸風の変わり目部分に発生する海風前線 などの、地表付近の気流の収束箇所
が加わり、十分条件となって、雷雲を発生。発達せしめるものなのです。
前記、Ⅰ、Ⅱがより顕著になるほど、雷雲はより発達するようになりますね。
ちなみに、山梨県内では、北部山地が、前記した海陸風の収束箇所にあたり、雷雲が発生・発達しやすく、この雷雲は甲府盆地を南から南西方向へ進んで、静岡県方面へと進むパターンが雷雲が発達しやすいコースとなります。
なお、引用図③での、関東にかかる帯状の発達した降水域は、さらに強まりながら東京都心部を、29日16時~17時ごろにかかて通過し、都心部に落雷を伴った激しい降水をもたらし、都心部に、交通機関の混乱や、低地の浸水被害などもたらしました。