政治の季節【稗史(はいし)倭人伝】

稗史とは通俗的な歴史書等をいいます。
現在進行形の歴史を低い視点から見つめます。

読売と共産党が時間差共闘・政権交代阻止統一戦線

2009-08-24 06:43:34 | 官僚
政権交代阻止作戦もだんだん手が込んできた。
産経のように正面突破を図るアホマスコミもあるが、多くはもう少し巧妙かつ陰険である。
たとえば、次の読売の記事である。
「官僚政治打破」という民主党のスローガンに疑問符をつけるネガティブ・キャンペーンであろう。

官僚出身新人、民主11・自民7…候補者分析 (YOMIURI ONLINE 8/19)
官僚出身候補の数で初めて民主が自民を上回る――。

 18日に公示された衆院選の新人候補者の経歴を見ると、官僚主導政治の打破を掲げる民主党に官僚からの転身組が多く流れていることが、わかった。政権選択をかけた衆院選を戦う候補者たちの属性を分析してみた。

 自民党新人43人の経歴で最も多いのは県連事務局長など政党職員8人で、中央官僚、地方議員が各7人。民主党の新人164人では地方議員32人がトップで、中央官僚は11人だった。


民主党新人で官僚出身が11人もおり、自民党を上回っている。
これで官僚政治打破と言えるのか?、と言いたいのだろう

ところでこれとまったく同趣旨の内容を、すでに共産党機関誌「赤旗」が去年のうちに取り上げ、民主党を攻撃していた。

「官僚支配打ち破る」というが…(赤旗 2008年10月6日(月)「しんぶん赤旗」)
「官僚支配を打ち破る」。こんな官僚批判を旗印に掲げている民主党の新人公認候補のなかに多くの官僚出身者が含まれていることがわかりました。

 解散・総選挙が間近に迫るなか、民主党は九月十二日の第一次公認候補者発表を手始めに、同月末までに百九十一人に公認を与えました。このうち新人候補は四十七人にのぼりますが、中央官庁の職員や幹部などのいわゆる官僚を務めたことがある新人公認候補が、判明分だけで十人も含まれています(別表)。公認候補全体の5・2%、新人公認候補では21・3%を元官僚が占めていることになります。


この時点では民主党候補者は10人であったらしい。
ご丁寧にリストつきである。



どちらの主張も民主党の方が官僚出身者が多いことを指摘し、民主党批判につなげている。

畑浩治 平成17年1月 国土交通省退職
退職時年齢 39or40

福島伸亨 2003年 経済産業省を辞職
退職時年齢 33

奥野総一郎 平成17年4月 総務省を退職(郵政行政局調査官)
退職時年齢 42

橘秀徳
昭和44(1969)年6月24日、東京都出身 39歳
1995年 中央大学法学部政治学科卒業
1995年 内閣法制局事務官
1997年 国会議員政策担当秘書
2002年 松下政経塾に入塾(第23期生)
2005年 松下政経塾 卒塾


というふうにチェックしてきたのだが、面倒なので途中でやめる。ただ、気がつくことはほぼ一様に課長補佐あるいはそれ以下で退職しているということである。
課長という肩書きは一人だけである。
(ただ公務員の役職の上下はわたしにはよく分からないことを断っておく)

ここでわたしたちは、読売・赤旗が官僚出身という言葉で一括りにしているその「官僚出身者」の中身を見ていかなければならない。
「官僚出身者が多いから官僚政治打破はできない」という読売・赤旗の主張は正しいのか?

官僚出身者もいくつかのタイプに分類できる。
一つは世襲までの箔付けの一時的腰掛け官僚がある。
絆創膏で大臣を辞職した赤城徳彦
自民党幹事長細田博之
町村派会長町村信孝

……等がその代表であるが意外にこれは多い。

もう一つは中央省庁の力を背景にして議員に転身し、そしてまた出身省庁の利益代表として働く議員達である。多くは出身省庁に関連した族議員として活躍する。
監督官庁としてその影響下にある業界・団体などの組織票を動員するケースも多い。
これらは比較的高い地位まで昇進した後での転身ということになる。
一種の天下りあるいは天上がりというべきか。

泉信也元国家公安委員長  建設省 第四港湾建設局長、大臣官房審議官 在職30年
野呂田 芳成元防衛庁長官 建設省
陣内孝雄元法務大臣    建設省河川局長を最後に退官


この連中は比較的政界入りが遅いために大した業績を残すことは多くはない。
またこのタイプの官僚は地方の都道府県知事になる連中も多い。
わたしが数えたところでは全国47都道府県の内すくなくとも25の道府県知事は官僚出身者である。

今度の総選挙と同日選挙になる茨城県知事選には国交省事務次官経験者の小幡政人氏が自民党の応援を受けて立候補している。
現職橋本昌知事は5選目を狙うがこちらも官僚出身である。
ところが年齢は小幡氏64歳。
橋本氏63歳。5選目とは言えこちらは比較的早い時期に転身を果たしていた。
橋本氏もこれまで自民党の支援を受けてきており、自民党分裂選挙の様相である。
出身地域の位置から茨城の南北戦争などとも言われている。
民主党は都道府県知事の5選は認めない方針であるため今回は自主投票という、何とも締まらない対応である。
小幡氏の例は官僚の政治家転向の一典型として、余計なことでもあるが挙げさせて貰った。

この二つのタイプの官僚出身者はほとんど保守・自民党寄りである。
官僚政治に対する攻撃から省庁を守る側に立っている。

役人出身は嫌われる!ここまで来た官僚候補者たちの落日 (@nifty ニュース 8/18)
●伊吹、町村、片山も絶望

 かつては、霞が関の官僚から政治家に転身するのはパターンだった。自民党前職議員を見回しても元官僚は大勢いる。ところが、最近は、官僚出身がマイナスに働く。

 06年の千葉7区補欠選挙で、旧通産省出身で埼玉県副知事まで務めたエリート、自民党の斎藤健が、キャバ嬢の経歴のある民主党・太田和美に敗れたのがいい例だ。「自民党」「官僚」という看板がセットになると、忌み嫌われてしまうのだ。


そしてもう一つのタイプが若くして省庁を飛び出して政界に転身する官僚たちである。
いわばスピンアウト組である。
この連中はさほど出身省庁に対する愛着を持っているわけではなく、むしろ批判・不満を持っているケースが多い。
天下りなどを期待してもいない人たちでもある。
このタイプの官僚は自民党よりも民主党を選ぶ人たちが多い。
そして比較的地位も低く年齢も若いうちに飛び出す。
もちろん自民党を選ぶ人たちもいる。

赤旗のリストにある候補者達はすべてこの3番目のタイプである。
既存の官僚体制からスピンアウトした人たちである。
打破すべきは、省益優先、官僚主導政治、保身・天下り擁護の現状である。
この人達を吸収し、官僚政治打破に用立てるのはまっとうな戦術である。
なんら批判・非難を受けるべきことではない。
官僚政治打破のためには大きな戦力になるはずの人材である。

読売が今頃になって赤旗の二番煎じのような民主党攻撃をしているのにはあきれる。
しかしどちらも自分たちが、クソもミソも一緒にしたような主張をしていることは分かっている。
分かっていてわざとやっていることであろう。


官僚という言葉を使うときには注意がいる。
官僚と公務員を区別することが必要である。
官僚というのは国家公務員のほんの数パーセントのⅠ種試験合格者だけを指している。入省した時点で将来の天下りまで保証されている連中なのである。
Ⅱ種試験以下の合格者は省庁の事務次官にはなれない。
もちろんそんな法律はない。




裁判員制度廃止!天下り禁止!議員世襲禁止!


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