政治の季節【稗史(はいし)倭人伝】

稗史とは通俗的な歴史書等をいいます。
現在進行形の歴史を低い視点から見つめます。

橋下と全国知事会の思い上り

2009-08-10 11:15:31 | 民主党
全国知事会というところが害毒を振りまいている。
橋下徹とそのまんま東が盛り上げ、それをマスコミが後押しして、いつの間にか地方分権が総選挙の前面に出てきてしまった。
今度は各政党のマニフェストの点数まで付けている。
思い上がりもたいがいにして欲しい。

知事会のマニフェスト採点、与党が一歩リード (YOMIURI ONLINE 8/8)
全国知事会は8日、自民、公明、民主3党の地方分権に関する政権公約(マニフェスト)の採点結果を発表した。


 100点満点で、自民党が60・6点、公明党が66・2点、民主党が58・3点だった。

公明党が1位、自民が2位、それで民主党が3位か。
綴り方教室の採点ではあるまいし。

結果ははじめから分かっていた。
音頭を取っている橋下はもともと自民党絶対支持を公言していた男である。今回は中立公平を装っているが、全くの嘘っぱちである。
人間そう簡単に変われるものではない。

彼のこれまでの言動をわたしの過去の投稿記事から抜き出してみる。

連合系メーデー出席辞退の弁(2008.06.13日投稿より)
「僕は自民、公明の支援で出てきたので。選挙は戦ですから。ちょっと、控えさせてもらいたい」
つぎは山口補選での与党候補への応援メッセージについて、
「僕自身も自民、公明の支持を得ることで知事になれた。自民、公明の判断に信頼を寄せてほしいという内容だ」

(2008-04-27 投稿記事より)
橋下知事は2月の山口県岩国市長選でも前自民党衆院議員を応援。同市が実施した米軍空母艦載機移転をめぐる住民投票について「地方自治体が国の防衛政策に異議を挟むべきではない」と批判し、前市長らの反発を招いた。

(橋下知事、山口2区で自民候補応援 2008-04-27 投稿記事より)
橋下知事によると、メッセージではガソリン税の暫定税率廃止について「無駄遣いの防止が重要であって、税収を放棄する考え方は政治として無責任」と民主党を批判。「政治で一番重要なのは国民や住民に我慢を説得できるかどうか」と訴えたという。


こういう人間なのである。
さらに全国知事会そのものにも問題がある。

都道府県知事名簿
数えてみると、全国47都道府県の内すくなくとも25の道府県知事は官僚出身者である。
出身省庁は旧自治省が圧倒的に多いが旧建設省、旧大蔵省などもある。
自民党議員から知事に転出していたのが少なくとも7人。そのほかにも橋下・そのまんま東等自民党の支援を受けているあるいは自民党シンパが数人いる。
結局、政治的に中立あるいは民主党系と思われるのはせいぜい5、6人であろう。

しかも全国知事会の事務総長は総務省からの天下りとか。

天下り禁止、官僚政治から政治主導の政治を唱える民主党に好意的な評価を出すはずはない。
民主党はむしろこんな全国知事会と戦う姿勢を示さなければならない。
彼等がいくら公平中立、客観的な立場を装ったとしても、彼等は自民支持者の集まりなのだ。

(地方自治体の借金:地方債残高+公営企業債残高+交付税特会借入金残高)
年月   国の借金 地方の借金 国と地方の借金
2007/3  834兆円  201兆円   1,035兆
(日本の借金残高)

彼等は、国が加害者、地方自治体は被害者であるというような言い方をする。
しかし地方自治体もこれまで国と同様にデタラメな行政を続けてきていることは明らかである。
不要不急の公共工事、箱物建設、乗る人もいない地方空港、第三セクターを利用した無駄遣いに天下り。
お手盛りの給与アップを続けた結果国家公務員より高い地方公務員の給与。
相変わらずなくならない裏金疑惑。
サッパリ進まない情報公開。
議会とのなれ合い行政。

彼等は国よりデタラメをやってきているとさえ言えるかも知れない。
政党のマニフェストに点数つけていられる立場ではなかろう。

彼等の言う地方分権とは、税金の分捕り合戦である。
国民にしてみれば、国に絞り取られるか、地方自治体にむしられるかという違いに過ぎない。
このことは地方消費税の論議に明確に現れている。

地方消費税の引き上げ提言 全国知事会、行革前提に (東京新聞TOKYO Web 2009年7月23日)
 全国知事会は二十三日、地方自治体の深刻な財源不足を解消するため、消費税5%のうち1%分を自治体に配分している地方消費税の引き上げを国に求める提言をまとめた。十五日の全国知事会議で増税論への国民の反発などを懸念した異論が出て、採択が持ち越された原案に「一層の行政改革を進める」などの修正を加え、了承された。原案になかった引き上げ時期についても「経済の好転を前提に低所得者の負担にも配慮」と、慎重な言い回しで示し、引き上げ幅も明記を避けた。知事会は提言文を与野党や関係省庁に提出し、対応を求めていく。


5%の取り合いである。
あわよくば、消費税そのものを引き上げようと隙を窺っている。
「一層の行政改革を進める」、「経済の好転を条件に」などとおざなりに付け加えるところなど、自民党とまったく同じである。

橋下は確かに大阪府の財政立て直しになにがしかの成果を上げたかも知れない。
だからといって全国知事会の音頭を取って税源、権限の移譲を国に要求するのはおかしかろう。
まず全国知事会に無駄排除、財政再建を徹底させるよう働きかけるのが先であろう。
国への要求はそれからではないのか?
少なくとも地方行政の反省と改革への明白な意思と工程を示すことの方が先であろう。

官僚という言葉は普通中央省庁の幹部(候補も含む)役人を指している。
地方自治体では使わないようだが、地方でも仕組みや意識はほぼ同じである。
民主党は官僚政治打破を標ぼうするなら、地方自治体に向かっても同じことを言わねばならない。
橋下のタワゴトにあわてふためき、こいつらの意を迎えるのに汲々としているようでは、たとえ選挙に勝ったとしても、たいしたことはできなかろう。



ついでにこちらもご覧ください。
「地方分権」という名の虚構 2009-07-12





裁判員制度廃止!天下り禁止!議員世襲禁止!


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