政治の季節【稗史(はいし)倭人伝】

稗史とは通俗的な歴史書等をいいます。
現在進行形の歴史を低い視点から見つめます。

司令塔不在の自民党、しかも兵の質は劣悪

2009-08-16 11:56:15 | 麻生太郎
唐突に飛び出した麻生の「負けっぷりをよくせにゃならん」発言。
心がけは結構なんだが、時と場所ということもある。
しかもまだ公示前である。
先日の都議選の応援での「惜敗を期す」をいやでも思い起こさせる。

ところで「惜敗」についてもう一人馬鹿なことを言っていた男がいた。
自民党幹事長細田博之である。
細田は自民党選挙対策本部本部長代理である。
本部長は麻生。細田はNo.2ということになる。

自民「惜敗率で上がってきて」 衆院選向け細田氏が失言? (47ニュース 7/2)
自民党の細田博之幹事長は2日の党代議士会で、衆院選準備に関し「東京にいる必要はない。ほとんどの時間を地元で過ごしてほしい」と地元活動を求める中で、「(衆院小選挙区選で)負けても惜敗率で上がってほしい」と述べた。出席者からは「『小選挙区で勝ってこい』と言うべきだ」とやじが出た。

 麻生太郎首相も先月、東京都議選の自民党立候補予定者の応援で「惜敗を期して」と言い間違えており、与党幹部の“弱気”が浮き彫りになった。


細田はどういうつもりでこんなことを言ったのか?
もしかしてこの男、小選挙区比例代表並立制の仕組みが分かっていないのか?
惜敗率は党内落選者同士の争いである。
比例の得票数で自民党の当選者数が決まった後、自民党の候補者の当選順位を決める基準になるだけであって、いくら惜敗率が高かろうと、自民党の当選者数が増えるわけではない。
いわば自民党内サバイバル競争の奨励である。

肝心の選挙対策本部長の麻生がバカで本部長代理の細田がバカで、No.3の選挙対策本部長代理として細田と並ぶことになった古賀誠がやる気がないときては、選挙を戦う態勢はシッチャカメッチャカである。
選対本部の下部機関で選挙の実務に当たるべき選挙対策委員会は委員長の古賀がやめた後、副委員長の菅義偉が采配を振るっているようだが、こちらは品性下劣、ここまですべて見通しをはずしてきた、自民党退潮を招いたA級戦犯である。
これで選挙が戦えるのか、他人事ながら心配になる。

さて「負けっぷり」についてである。

麻生首相:街頭で「負けっぷり」に言及…ハラくくった!? (毎日jp 8/12)
麻生太郎首相は11日、千葉県野田市内で行った街頭演説で、終戦時に首相だった鈴木貫太郎に言及し、「鈴木先生は『(戦争は)負けっぷりはよくせにゃいかん』と吉田茂に言っている。吉田内閣は長いこと続いたが、いろいろな意味で教えていただいた」と語った。演説場所が「鈴木貫太郎記念館」の前だったことから、昔話に言及したとみられるが、衆院選を前に首相が負けを覚悟したとも受け止められる発言は話題を呼びそうだ。

 吉田元首相は回顧録で鈴木からアドバイスを受けたと記しており、「負けっぷりのよさ」からマッカーサーの信用を得たとされる。【影山哲也】


ところでこの発言は街頭演説でとある。
この時期、麻生が一人で街頭演説にいくわけはない。
だれかの応援に行ったのだろう。

千葉県野田市と言うのは千葉県第七選挙区。
自民党公認候補は斉藤健氏(50歳)。

経歴(ウィキペディアより)

1983年 東京大学経済学部卒業。
    通商産業省(現・経済産業省)入省。
1991年   ハーバード大学修士課程修了。
1994年 通商政策局米州課
    大臣官房秘書課人事企画官
1999年 深谷隆司の下で通産大臣秘書官就任。
    内閣官房行政改革推進事務局企画官
2004年 埼玉県副知事就任。
2006年 衆議院議員補欠選挙(千葉7区・自民党公認)落選。86,091票(955票差)
同年、 自由民主党幹事長政策補佐に就任。


今度こそとの意気込みでいることだろう。

その場に居合わせた方のブログによると、麻生は斉藤健氏を従えての応援演説であった。
自分の目の前で、「負けっぷりはよくせにゃならん」と言われて、斉藤氏は心中何を思ったか。

腹をくくったか、と言えば麻生の最近顕著な右回帰の発言もその表れであるらしい。

首相「伝統、国旗…守るべきもの守る」演説で保守色拍車 (asahi.com 8/2)
 麻生首相は2日、総選挙に向けた地方遊説で愛知県を訪れた。民主党に追い風が吹いているなか、ただでさえ同党が強い地域とあって、首相は17選を目指す海部俊樹元首相の事務所開きにも激励に駆けつけた。

 演説では失言を避けようと慎重な言い回しだが、「保守」強調には拍車がかかる。この日は「我々は守るべきものは守る。伝統であり、歴史であり、皇室であり、日本語であり、国旗を大事にする。日教組の先生をされた民主党が国旗を振りますか。日本にとって最も大事にすべきだ」と訴えた。


これはわたしが自制心をなくした麻生自民党 2009-08-06 投稿で引用した記事である。
麻生発言の超右寄り発言の唐突さに少々驚いたものである。

数日後、どこかのテレビ局で中川昭一元財務大臣の選挙活動を紹介していた。
ご多分に漏れず、苦しい選挙戦を展開している様子が映し出された。
ここで一つの事実が紹介された。
取材中のその日の夜、中川は麻生に電話をしたというのである。
電話の中身は、
「保守色を強調して、自民党離れを食い止めよう」というものだった。
そしてその次の日、麻生は上の演説をしたと番組ははっきり言っていた。

以前から麻生は”人の話を聞き過ぎる”と言われている。
しかも、最後に聞いた人の意見に従う、と言われる。
上の極右発言の唐突さにも、それでようやく納得がいった次第である。
それにしても分かりやすい男である。

靖国に関する発言もこの延長上にある。
首相、戦没者の国立追悼施設に慎重姿勢
麻生太郎首相は14日夜、靖国神社に代わる国立戦没者追悼施設を建設する必要性について「国民の合意を得られるかというところが一番の問題だ。施設をつくったら靖国の話がなくなるのかというと、なかなかそんな簡単にはいかないのではないか」と指摘し、追悼施設建設に慎重な考えを示した。首相官邸で記者団に語った。


何が何でも靖国でなければならない、という考えが根底にこびりついている。
しかしながら、8月15日の参拝を避けたのは、まだ覚悟が中途半端であることの表れであろう。

景気・雇用対策の成果訴え=麻生首相と自民幹事長が確認
麻生太郎首相は14日、自民党本部で細田博之幹事長、古賀誠選対本部長代理と会い、18日の衆院選公示を控え、選挙戦では政府・与党が最優先で取り組んできた景気対策や雇用対策の成果を中心に訴えていく方針を決めた。また、民主党の衆院選マニフェスト(政権公約)について「あまりにも長期に国の財政負担になることが多すぎる」として、引き続き財源問題を取り上げることも確認した。
 会談では、衆院比例代表の名簿順位についても協議した。細田幹事長は会談後、記者団に対し「(衆院選では)しっかりわれわれの考え方を訴えるしかない」と語った。 (2009/08/14-21:40)


自民党選挙対策本部の3バカトリオによる戦術会議らしきものか。
「引き続き財源問題を取り上げることも確認した」
結論はやはり財源問題か!
自分の店の売り物が無くて人の店の商品にケチをつけるいつものやり方である。

「負けっぷりをよくせにゃならん」と言ったが、本人がジタバタ見苦しくしているのは変わらない。

麻生首相:民主のFTA修正を批判 (jiji.com 2009/08/14)
麻生太郎首相は5日、鳥取県米子市で街頭演説。民主党がマニフェスト(政権公約)の「米国との間で自由貿易協定(FTA)を締結する」とした部分を修正することに「自由化すると、FTAはやりますって間違いなく書いてあった」と述べ、同党の対応を批判した。


しかし、自民党の政権公約にもこんなことが書いてある。
「WTOドーハ・ラウンド交渉の早期妥結、経済連携協定(EPA)や自由貿易協定(FTA)交渉を積極的に行う。」
一方的に責めている場合ではなかろう。
「交渉を積極的に行う」ということは、締結を目指すということではないのか。

「農業交渉等については、各国の持つ多様な農業との共存や林・水産資源の持続的利用が可能となるルールの確立を目指す」

こんな文章が付いているが、自分では「自由貿易協定(FTA)交渉を積極的に行う」と言いながら、民主党を責めることへの免罪符になるわけではない。





裁判員制度廃止!天下り禁止!議員世襲禁止!


古書 那珂書房

特に歴史書が充実しています