エトルタでの翌日、朝の食事はヴィルジニが用意してくれた。
美味しいクロワッサン、大きなハム、バゲット、いろんなジャムそして鉄ビンで入れる紅茶、皆美味しかった。
でももっと私を驚かせたのは、食事をしている部屋のすぐ近くのドアにペンキでこう書いてあったことだ。
「此のやうな 末世に桜 だらけかな 」そして下に小さく「ISSA」とあった。
ヴィルジニが書いたのだ。
旧かなづかいだが、本から見よう見まねで書いたらしい。
「そう言えば一茶には、こういう俳句もあったかな」程度にしか知らない私には、もうびっくりだ。
私の寝室のある本棚に、日本についてのいろんなことを書いた本が沢山あった。
彼女は日本が大好きで、何時か日本へ行きたいと言っていた。
この朝、もうひとつ事件があった。
トイレの給水の所が故障していて、ヴィルジニが自分で応急処置していたのだ。
「ここをこうして、ここは触らないでね」と注意を受けていたが、うっかり失敗した。
そうすると給水の所から噴水が立ちあがり、そこら中水浸しになってしまった。
私の悲鳴を聞き駆けつけたヴィルジニがなんとか水を止めてくれたが、その間に頭から水を被ったのだった。
私は「大丈夫」と一応言ったところ、すまなさそうに「大丈夫じゃないわ」と彼女は言った。
これをきっかけにしてついに彼女は修理屋さんに電話して、本格的に修理してもらうことになってこの件は落着した。
朝食後、ヴィルジニの案内で、西の崖に登ることになった。
石ころの海岸の西の端にはドイツ軍の要塞跡があった。
ここはノルマンディーなのだから、それがあっても不思議はないが、ここから連合軍は上陸しなかったのではないかと思う。
つまり連合軍の艦砲射撃が無かったのではないか。
だからこの要塞も破壊されずに残っているし、西に二つ、東に一つあるゾウの鼻をした奇岩も無傷で残っているのではないかと思う。
西のゾウの鼻の崖の上から東を見ると、遠くに東のゾウの鼻が見えた。その間にある石ころの海岸が、綺麗なカーブを描いている。
一番西のゾウの鼻の崖の上まで歩き、戻ってきた。
三つ見た内の一番西のゾウの鼻
一番西のゾウの鼻の上から、真ん中のゾウの鼻を見る
西のこの崖の台地にはゴルフ場があった。そのゴルフ場付属のレストランで今夜食事することになった。
以前アヴィニョンのイザベル夫妻がここに来た時も、このレストランで食事したと言う。
最初の西の崖の近くに洞窟があった。ヴィルジニは他に用事があるらしく別れて、潮が引いていたのでその洞窟まで行った。
そのあと潮が満ちるまでに無事戻り、ヴィルジニの家まで帰った。
午後の話は次に続ける。
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