ベルニたちも他のお客さんと同様に、お抹茶を点てたり、折り紙や、習字も楽しんだ。ベルニは日本滞在中に日本文化の教室にも通っていて、特に生け花が気に入っているようだった。
しかしハードスケジュールの観光から帰ってきた後では、疲れてもいた。
それでも最終日に着物の着付けはどう?と尋ねると、友人のドミニックは「疲れているので今回は遠慮したい」と言ったが、ベルニは「もちろん着るわ」と、疲れた表情が一転した。
実はこのベルニは、感情をそのまま出す人であることがわかった。一度朝のコーヒーをいれたとき、フィルターに急いでお湯を注いだためうまく出ないことがあった。
そのコーヒーを出した時だった。彼女はいきなりコーヒーカップからそばの器にジャーッと捨てたのだった。
紅茶のような色をしていたから仕方ないのかもしれないが、あの行動はとてもショッキングだった。あまりフランス人の言動で嫌な思いをすることはない私だが、これはいまだに苦い想い出でとして残っている。
また豚のしゃぶしゃぶをしたときのことだ。ドミニックにこう囁いた。「ほんとは牛肉のしゃぶしゃぶがおいしいのよ」
フランス語が分からないと思ったのか、私がそのくらいのフランス語が分かることを忘れていたのかはわからない。
しかし最終日にすき焼きをした時は、「ああ、これが大好きなのよ。夫もいたら喜んだのに」といった。まあ素直に思ったことを言う人だ。
抹茶のババロワなど、気に入ったものはレシピを尋ねるくらいだったが、コーヒーを捨てた事件は、その後もずーっと気になることであった。
彼女らが我が家を後にし、奈良から、まず姫路城に行き、その日のうちに高野山へ向かうということで、近鉄やJRや南海高野線等の経路を調べてあげた。
左がベルニ 右がドミニク
そして大阪駅に着いたころ電話を入れ乗り換えのプラットホームの番号を連絡してあげた。そのあと姫路についたころ、また電話を入れると「あなたのおかげで、うまくいったわ!!」と声が弾んでいた。
そして午後ベルニから連絡があったのでかけなおすと、「姫路から大阪駅に帰ってきたのだが高野山へ行くには何番線?」と言うことだった。その時外出先だったので調べることができないと伝えると、気の毒なくらいしょんぼりした声が返ってきた。
こういうタイプのフランス人は初めてで、彼女が帰ってからも、「もう友人を紹介してくれることはないかも」と思っていたのだが、その後、彼女が帰国する直前まで二組の友人を紹介してくれたり、帰国後も「パリに来たら連絡して」と言うメールをいただいた。
どうやらあのコーヒー事件は、彼女にとってはごく些細なことだったらしい。
珍しいといえば、大概外国人は年齢より老けて見える人が多いのだが、このベルニは60歳とあっけらかんと言って、びっくりした。彼女はどう見ても50代半ばくらいにしか見えなかった。
そういう意味でも彼女はちょっと例外的な人かもしれない。
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