「熱闘」のあとでひといき

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法政大学 vs 日本大学(2012.11.25)の感想

2012-12-03 02:05:06 | 関東大学ラグビー・リーグ戦
[キックオフ前の雑感]

リーグ戦グループで現在覇を競っているのは1997シーズンに1部昇格を果たした流経大と2000シーズンに1部復帰を果たした東海大。関東学院が力を失っていく中でいよいよ2強時代が到来したといえる。しかし、ちょっと待てよ、古豪で大学日本一にも輝いている法政、大学選手権でベスト4に進出した日大は何をしているのか? 残念ながら、法政も優勝争いから遠ざかり、日大は入替戦も経験する低迷状態にあると言える。中央大しかり、大東大もしかりでこれらのチームに元気がないことがリーグ戦Gの相対的な地盤沈下にも少なからず影響を与えているはずだ。

しかし、今シーズンは加藤HC体制になって4年目となる日大が好調だ。ここまで既に4勝を挙げ、大学選手権出場も決めた。また、法政のまだ本来のBK展開の切れ味は戻っていないがチーム力は上向きになってきた。しかしながら、両チームのラグビーの中身には大きな違いがある。日大が組織的な豊富なバリエーションを持つ(魅力的な)継続ラグビーを完成しつつあるのに対し、法政は相変わらず個人の能力に依存するラグビーから脱却できていない。同じく個々の強さで勝負する体質が残っている中央を組織力で圧倒した日大が、同じ問題を抱える法政も圧倒できるかがこの試合の見どころとなる。

それはさておき、両校にとっては泣いても笑っても最終戦。仲良く大学選手権出場を決めているとは言え、勝って有終の美を飾り、大学選手権に弾みを付けたいところ。とくに対抗戦G校はどのチームも強力で、その壁を乗り越えない限りお正月を迎えることはできない。そんなことを想いながら、両校のラストファイトのメンバーを確認する。

日大は1年生メンバーを4人含むがベストメンバーといえる陣容。負傷した徳留(1年生)の代わりに4年生の新井が入ったが、昨シーズンはレギュラーだった選手なので戦力的には問題ない。新井の他にはベンチに入ったSO及川(4年生)も実績がある選手。日大の場合は、将来性や継続性に対する意識が強いのかも知れないが、上級生の選手に対する見切りが早いような気がする。しかしピッチに立つ選手にとっては彼らがベンチに居るだけでも心強いはずだ。法政もシーズン中盤にしてようやく固まった盤石のメンバーと言える。正直、春からこの形でチームを作っていれば優勝争いに絡むことも可能だったのではと思わせる選手達が揃っている。本日のメインはこの後に行われる流経大と東海大の頂上決戦だが、3位争いが絡んでくるこの試合も見どころがたくさんあるはずだ。

[前半の闘い]

日大のキックオフで試合開始。序盤から大量点を奪って3位浮上を目指すという意気込みに燃えた法政が積極的に攻める。日大のようなシステマティックな「きれいに」陣形を整えたアタックではなく、セカンドフェイズで既にラインはガタガタの状態になるのだが、個々が強力でかつ全員が前を向いたアタックは迫力がある。アタックでもディフェンスでも、1対1の勝負で勝てば「数的不利」は関係ないといったような(ある意味での)開き直りが心地よかったりするから不思議。逆に日大は形へのこだわり(きれいにやろうとする)が強い分、攻守とも対応が遅れ気味のような感じがする。法政はアタックで詰まったらウラにキックと至ってシンプル。逆に日大は継続への拘りが強い。

7分、積極的に攻めた法政に先制点が生まれる。日大が自陣22m内でのスクラムを起点として、ブラインドサイドからライン参加したWTB瀧水を使って果敢に攻めるものの、タックルに遭ってオフサイド。法政のSO猪村が正面22m余りのPGを確実に決めて3点を先制した。リスタートのキックオフでは、日大のマイケルが大きな壁となったかのようなタックルで法政のノックオンを誘うが、スクラムからの日大の攻めはモールパイルアップとなる。日大は攻守とも接点で苦戦を強いられ、反則が増えていくことでゲームの流れを法政に渡す。12分には法政が日大陣に入ったところで得たPKからタップキックで攻め、パスをもらったWTB半井が一気にゴールラインまで到達する。GK成功で法政のリードは10点に拡がる。

粗削りながらも元気いっぱいの法政に対し、洗練されたスタイルの日大は身体が重いように感じられる。アタックではパス受ける選手が止まっているように見え、ディフェンスでは踏み込みが一歩足りないような印象。数では上回っているのに「ウォッチャー」になっている選手が多いようにも感じられる。こうなるとパワーも勢いも上回っているチームの方が優位に立つことは自明の理だ。リーグ戦グループでも屈指の面白いアタックを見せていた日大は何処に行ってしまったのだろうか?という想いを禁じ得ない。17分にも猪村がゴール正面20mのPGを決めて13-0となる。

完全に勢いに乗った法政が畳みかける。リスタートのキックオフに対するカウンターアタックからHO小池がタテを突いて大きくゲインし、フォローしたNo.8堀にパスを繋いでトライを演出。FWのタテ連発によるトライは展開の法政らしからぬパターンではあるが、他にもFL西内、WTB半井にFB森谷といった強力なランナー達が揃う今シーズンの法政にとっては一番効果的にトライが取れるスタイルでもある。日大でパワフルと言えるランナーはCTBマイケルくらいだが、相変わらずショートキックなどの小技が多く、相手が畏れているはずの強引に行くプレーが少ない。ルーキーのLOキテもまだまだパワー不足の感が否めない。

法政が日大陣での攻勢をゆるめない中で、日大が反則を重ねるという(日大にとっては)悪い流れが続く。22分の30m余りのPGは外れるが、25分に日大陣10mラインから少しゴール寄りに入った位置からのPGは決まりあれよあれよという間に法政のリードは23点まで拡がった。その後、日大は法政陣奥深くまで攻め入り、30分、34分に相次いで法政陣22m内でのラインアウトのチャンスを掴むが、いずれもノックオンで絶好の得点機を逃す。日大は継続ができているものの、法政のようにスピードに乗った状態でパスが繋がるシーンが殆どなく、簡単にタックルに捕まってノットリリースの悪循環の連鎖を断ち切れない。

試合の流れをなかなか自分たちの方に引き寄せられない日大だが、38分に法政ゴール前えたPKのチャンスでクイックスタートからSO下地がトライ。GK成功で7-23とようやく日大の反撃体制が整ってきた。リスタート直後にも日大は継続攻撃から法政ゴールに迫るがパスミスでチャンスを潰す。ただ、日大にとっては前半終了間際に1本返すことができたのが大きかった。前半は生彩を欠いた日大だが、後半は気持を切り替えて逆転に迫れるか。

[後半の闘い]

おそらくハーフタイムでは首脳陣からの厳しい言葉を浴びたであろう日大のメンバー達。しかしながら、後半になっても前半の悪い流れ(アタックもディフェンスも消極的に見えてしまう)を断ち切れない。最終戦と言うこともあり選手達に疲労が溜まっているのだろうか。ただ、前日に上柚木で観た拓大は完全固定メンバーで戦い続けているにも関わらず元気いっぱいだった。それを考えると、日大の場合はメンタル的な部分が大きいのかも知れない。いや、そうとしか思えないくらいに本日の日大には元気が見られない。

試合の流れを変えるために日大は先に点を取りたい。法政がたくさん得点を取って居るように見えるが、1トライ1ゴールで7点取れるラグビーの場合は16点のビハインドはさほど重くない。3分に法政陣10mの位置でのスクラムを起点としたオープン展開も、マイケルからWTBにボールが渡ればビッグゲイン間違いなしのシーンでWTBがボールを取り損ねてノックオン。そんな波に乗れない日大を尻目に法政は確実に得点を重ねていく。8分にはゴール前で得たPKのチャンスから法政はスクラムを選択。FWのサイド攻撃で前進を図り、後半からピッチに登場したPR石澤がボールを日大ゴールにねじ込む。10分にもリスタートのキックオフから法政はFWでタテを突き、HO小池が持ち前の脚力を活かしてゴールに到達する。後半10分の時点で法政が35-7と大きくリードする展開を誰が予想できただろうか。

日大は10分にFWの2人とBKの1人一気に入れ替えて起死回生を図る。15分にはそのメンバー交代が効を奏し、SOに入った及川(下地はCTBへ移動)が法政ディフェンスを切り裂いてトライを奪った。及川は4年生で昨シーズンはレギュラーのSOを務めていた選手。下地の台頭もあり、今季はリザーブでベンチを温める及川にとっては(おそらく)不本意な形となっているが、そんな鬱憤を晴らすかのような面目躍如といった感じの素晴らしトライだった。その後の及川の溌剌とした動きを観ても、結果論かも知れないが当初からSO及川、CTB下地でラインを組んでいたら日大のアタックはさらに魅力を増していたかも知れないと思った。

14-37で残り時間が25分は日大にとって厳しい状況ではあるが、3T3G+1PGで試合をひっくり返すことはけして不可能ではない。しかし、24分にそんな日大の反撃への気持を萎えさせるような残念なプレーが出てしまう。自陣ゴールラインを背にした法政の猛攻に耐えてターンオーバーに成功し、パスが数的有利となった外に繋がればビッグゲイン確実と見られたところで、法政のCTB金がインターセプトに成功して一気に日大ゴールまで到達した。法政はさらに29分に1PGを追加して47-14と法政のリードが33点に拡がった時点で勝負ありとなった。

35分に日大は法政陣22m付近で得たPKからSH小川がタップキックからトライを奪うものの、法政は終了直前に堀がトライを奪って最終スコアは54-21となりゲームは終了。整備された組織が個人能力の高さをベースとした無骨とも言えるプレーを前に敗退したかっこう。しかしこのことは、1対1で負けないことがラグビーの原点であることを改めて教えてくれたとも言える。そして、勝利に向けた強い気持ちを15人が共有することが何よりも大切であることも。残念ながら、日大は気持の部分でも負けていたという感が強い。せっかくほぼ4年をかけてここまで来た日大にとっては残念な敗戦となった。

[試合後の雑感]

何故かリーグ戦の終盤に失速してしまうことが多い日大。この試合では「燃え尽き症候群」という言葉も頭の中でちらついた。途中出場ながら溌剌としたプレーを見せてくれた及川のことを思うと、こういうときこそ4年生の力が必要なのではないかと痛感させられた。チーム作りの難しさを感じさせられたと同時に、結果も3位が確実とみられた状況から一気に5位に転落という形になってしまった。ただ、日大にとってはさらに3試合、チーム力をアップするチャンスが残されている。強豪が揃うグループに入ることになってしまったが、全国のラグビーファンに日大が4年をかけて培ってきた魅力的なアタックを披露して欲しいと思う。

ここまでもやもやした戦いが続いているように見えた法政にとって、ようやく「覚醒」したとも言える会心の勝利となったこの試合。大学選手権を前にして復活への手がかりを掴めたことは、リーグ戦Gのサポーターとしても嬉しい。パワフルなランナー達を活かす形でシンプルに前を向くラグビーを貫いていくことで大学選手権ではいい結果を出して欲しいと思う。また、おそらくこの試合で対戦校の法政に対する警戒心は一気に高まったはず。復活を目指す法政にとっては価値のある1勝になったことは間違いなさそうだ。
コメント (2)
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