「熱闘」のあとでひといき

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関東学院大学 vs 立正大学 [入替戦](2012.12.8)の感想

2012-12-15 19:35:46 | 関東大学ラグビー・リーグ戦
[キックオフ前の雑感]

毎年2試合が同じ日に行われる入替戦だが、第2試合を戦うチームにとっては第1試合の内容が重要な情報になる。入替戦を戦う上でポイントになるのは、1部リーグと2部リーグの力の差がどのくらいあるかを把握することだと思う。その重要なヒントを与えてくれるのが第1試合になるわけだ。ここで1部のチームはひとつ上の、また、2部のチームはひとつ下のそれぞれ直接対戦したチーム同士の闘いぶりを参考に実戦に臨むことになる。たとえ直前であっても、いや直前であるからこそ貴重な情報と言える。

そう考えてみると、第1試合で大東大と山梨学院がほぼ互角の戦いを演じたことは関東学院のチーム関係者に動揺をもたらしたであろうし、逆に立正大学の関係者にとっては大きな自信になったのではないかと思う。いつの間にかスタンドを埋めていた多くの関東学院ファンには、これから起こることに対して心の準備を必要とするような試合となることを自覚させたかも知れない。つい2週間前、自分たちが応援しているチームは大東大に大敗を喫してしまった。だが、その大東大は2部リーグ2位のチームに負けても不思議はないような試合をしたから。そうでなくても、チームの形ができている大東大に対し、未だチーム完成に至っていない関東学院の関係者は不安でいっぱいのはずだから。

キックオフ前に両チームのメンバーを確認する。関東学院は安井がNo.8として「復帰」を果たしたのが目を惹くが、基本的には大東大戦と同じメンバー構成。2週間でどこまでチーム力をアップすることができたかがカギとなる。とくに大量失点続きのディフェンスの整備は急務だったはず。対する立正大は(山梨学院と同様に)実戦を観ていないのでわからないが、両WTBに配置された2人の留学生をトライゲッターとして活用する布陣に見える。サイズ的にはやや関東学院を上回るといった感じ。ただ、ピッチ上に登場した選手達を見比べると、関東学院の選手達の方がどうしてもスリムに見えてしまう。

第1試合の開始時はほとんど風もなく、さほど寒くは感じられなかったが、ハーフタイムを境にいつもの晩秋の底冷えの熊谷になってきていた。ピッチも観客席も冷たい赤城おろしの風で吹きさらし状態になる、選手も観客も寒さとの戦いを強いられる熊谷だ。大東大にとっては、後半から吹き始めたこの風が「神風」となった面があったが、関東学院にとってはどうなるのだろうか。

[前半の闘い]

試合開始前から(第1試合の状況から)既に暗雲が垂れ込めるような状況になっていた関東学院サイドの観客席。ファンの望みは今日こそはディフェンスが崩壊しないで欲しいということではなかっただろうか。風上に陣取った立正大のキックオフで試合が始まった。キックオフのボールが関東学院の選手に触れて(遠目にはそう見えた)タッチを割り、立正大のラインアウト。立正大は素速くオープンに展開し、WTBヘンリーがさして抵抗を受けることもなくあっさりと関東学院陣のゴールラインを越えてしまった。関東学院ファンにとっては悪夢(3ケタ失点を喫した東海大戦)の再現としか言いようのないキックオフから僅か1分での失点。「やはり今日もダメか...」というムードが応援席に立ちこめる。

立正は畳みかける。というか、関東学院が何もできない間に4分にはPG、7分にはキックオフに対するカウンターアタックから再びWTBヘンリーのノーホイッスルトライにより失点。さらに、10分には関東学院陣10m付近のラインアウトからのオープン展開でCTB鶴谷がトライと、僅か10分の間に立正大のリードは18点に拡がった。突貫工事をしてでもディフェンスを整備する必要があった関東学院だが、結局何もできずに2週間が過ぎてしまったと考えざるを得ない。

このままずるずると失点を続けそうな関東学院だったが、何とか落ち着きを取り戻し反撃に転ずる。15分には立正大ゴール前でのラインアウトの絶好のチャンスを掴むがモールを押し切れない。しかしながら、立正大が自陣22m内の位置での反則を犯す。PGで確実に3点取れる位置だが、関東学院は再びゴール前のラインアウトから5点以上を狙う。が、立正大にターンオーバーを許し、後ろに大きく蹴られて自陣10mライン付近まで後退を余儀なくされる。その直後に関東学院に反則があり、立正大はPGで3点を追加し21-0。「いったいどうなってるんだ?」と立正大ファンも喜びよりは戸惑いが感じたかもしれないくらいに一方的な展開となってしまった。

ここで熊谷名物の赤城おろしが立正大にとっては神風となった感じ。とにかく自陣奥深くからでも蹴れば陣地が挽回できる。そして、25分にスクラムが組まれるのが、これが何とファーストスクラム。セットプレーは大半がラインアウトだったことにここで気付く。27分には立正大がラインアウトでスティールに成功し、パスを受けたSO正田がウラに抜けてあっさりとゴールラインを越える。今シーズンの関東学院の闘いぶりを象徴するようなシーンが続くのだが、シーズン当初はここまで酷くはなかったはず。立正大は31分にPKからの速攻でさらに7点を追加してリードを35点に拡げる。前半は関東学院がまったくいいところを見せられずに終了。関東学院ファンは、風上となる後半に望みを託したいところだが、その糸口さえも見えない。

[後半の闘い]

前半、思わぬ大量リードを許してしまったとは言え、後半の関東学院は風上に立つ。気持を取り直してキックオフから立正大にプレッシャーをかけボール奪取に成功。オープンキックは立正大ゴール前でタッチを割り、相手ボールながら、関東学院が得点のチャンスを掴む。立正大ボールラインアウトに対してもプレッシャーをかけてボールを奪いゴール前でラック。そこから出たボールをSO高城がインゴールまで持ち込み、ようやく関東学院の得点板に5の数字が表示された。このまま攻め続けていけば逆転も夢ではない。関東学院の応援席が少し元気になってきた。

後半は風下に立ったこともあるが、前半にあまりにも簡単にリードを奪うことができたことが立正のリズムを狂わせたのかも知れない。立正大にイージーなミスが目立ち始めたこともあり、ようやく関東学院がじっくりと攻めることができる時間帯がやってきた。とくに10分以降はゲームが殆ど立正陣内で行われる状況となり、立正は追加点を奪う糸口を掴むことができない状況に陥る。立正大は関東学院の変則的なアタックに戸惑ったのかも知れない。セオリーに従って広くワイドに守っても、関東学院は狭いエリアでのタテの継続に拘るスタイルで攻め、ラインに立つ人数が確実に減っていくのだ。ただ、いかんせん関東学院にはペネトレーターになれる選手がいない。アタックが必ず手詰まりになることが分かってしまえばパニックに陥る必要はない。立正大はちょっと正直に対応し過ぎたのかも知れない。

しかし、関東学院のこの狭いエリアでの継続に固執したようなラグビーを何と表現すればいいのだろうか。「スモールラグビー」と書くと「スモールベースボール」が連想される。しかし、「スモールベースボール」は日本の誇りと言えるが、このラグビーはそれとはかなり違う。ボールを保持していても、また、相手のミスに助けられてもなかなかゴールラインまでボールを運べない状況に対し、関東学院の応援席からはため息と厳しい意見が止まないような状態になる。思えば、関東学院を応援しているファンは、ここ10年以上にわたってトップレベルのラグビーを見続けてきているのだから、厳しい見方になってしまうのは致し方ない。

35-5で立正大がリードのまま時計はどんどん進んだ27分、立正大にようやく追加点が生まれる。GKは失敗したが40-5の35点差は、風上とは言え、残り時間10分余りで縮めるには重すぎる点差となる。しかし、関東学院も簡単に諦めることはできない。リスタートのキックオフでここでもボールの奪取に成功してWTB今井がノーホイッスルトライ。12-40となり、スタンドからは「(奇跡まで)10分で4トライだ!」の声も上がる。関東学院の気迫に優位にあるはずの立正大が腰砕けのような状態になってしまい、関東学院の攻勢が続く。34分にはPKからの速攻でLO井澤がインゴールに飛び込み17-40になった。

しかし、いかんせん遅すぎた。関東学院の猛攻を立正大が何とか凌ぎきり、ついにノーサイドを告げるホイッスルが鳴った。2部降格が確定した瞬間、ピッチ上でへたりこむ関東学院の選手達に対し、1部復帰を果たし歓喜に沸く立正大。入替戦だから仕方ないが、久しぶりに天国と地獄を見たような気がした。ただ、内容的には完敗だったこともあり、関東学院の選手達は現実を冷静に受け止めているようにも見えた。中でも、うなだれている選手達ひとりひとりに声をかけながら立つように促していた稲垣主将の後ろ姿が強く瞼に焼き付いた。おそらく、もっとも悔しい思いをした選手に違いないはずだが、最後まで責任を果たそうとする姿勢に強く心を打たれた。ここに至るまでの戦いで、主将の頑張りだけではどうしようもなかったはずと推察される状況がはっきり見えていただけに、よけいにそう見えたのかも知れない。

[試合後の雑感]

ついに関東学院の2部降格が決まってしまった。勝負の世界である以上、力及ばずという理由で落ちるのは仕方ないことだと思う。しかし、いくら昨年に比べて戦力が落ちたとは言っても、ここまで来ることは想像できなかった。はっきり言ってしまうと、チームをしっかり作っていれば入替戦も回避できたと思う。そのことが残念で仕方ない。というのも、緒戦から最終戦まで「スモールラグビー」から脱却できなかった関東学院の状況を観て、伝承されるきものが殆ど失われてしまったと感じざるを得ないから。関東学院のラグビーは、大学最強まで熟成されていく過程で多くの有形無形のサポートを得たはずだが、それらが殆ど失われてしまい、結局残ったのがこのラグビーだったのか思うという寂しい想いを禁じ得ない。関東学院のラグビーに対する深い想いについては、日を改めて書いてみたいと思う。

関東学院に圧勝し、見事1部復帰を果たした立正大だが、このままなら来シーズンの戦いは厳しいものとなりそうだ。単純比較はできないが、チーム力はむしろ昨シーズンの方が上だったような印象も受ける。それと、風下に立ったとは言え、どうしても後半のもたつきぶりが気になってしまう。今度こそ、立正ラグビーの目指す形をはっきりと見せることができるようにチャレンジを続けて欲しい。
コメント (3)
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