「熱闘」のあとでひといき

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大学選手権決勝(帝京vs筑波)の感想

2013-01-18 02:10:45 | 関東大学ラグビー・リーグ戦
帝京の圧勝に終わった今シーズンの大学選手権。試合前は6対4で帝京が優位に立っていると見ていたが、実際はさらに大きな力の差が出てしまったと実感した。ただ、手に汗握る接戦にはならなかったもの、見どころがたくさんあった決勝戦に相応しい試合だったと思う。少し時間が経ってしまったが、試合内容と両チームの印象などについて。

◆普段着で戦えた帝京

帝京のセカンドステージ緒戦の相手は拓大だった。実力差は如何ともし難く、帝京の圧勝に終わったのだが、筑波と戦った帝京はさらに強力なチームになっていた。身に纏っているのはどちらも赤いジャージなのに、強さの面ではまるで別のチームを見ているかのような印象を受けた。試合内容を見比べると同じチームに見えない。

しかしながら、プレースタイルを比較すると、拓大を相手にした帝京も、筑波を相手にした帝京も(実は)殆ど変わらない。あくまでもシンプルに確実にボールを繋いで15人で戦うスタイルは不変だった。攻守の両面で対戦相手から受けるプレッシャーが違うのに同じ(普段着)のラグビーができること、これこそが帝京の強さの源泉となっている。

◆キックオフが要注目だった

筑波のキックオフで始まった試合。序盤は仲良くノックオンを繰り返す展開となった。片や史上初の4連覇がかかり、片や悲願の初優勝がかかる状況。だから、選手達にはどうしても堅さがでてしまうと誰もが思いがち。しかし、今にして思えば、このノックオン合戦にその後の試合展開を象徴するヒントが隠されていたように思う。筑波にはやはり緊張感があったと思うが、帝京のノックオンは周到に錬られた作戦が反映された結果だったように思われるのだ。

この試合の帝京は自陣からでもキックを殆ど使わず、積極的に継続する作戦だった。だから、ゲームの入りの部分でノックオンが起こった。帝京が得点を重ねたため、筑波のキックオフで試合が始まることが多かったわけだが、そこでひとつ印象に残ったことがある。それは、ボールを受ける帝京のFWの陣形だ。普通なら、スクラムがばらけるような形での配置になる。もちろん、レシーバーになる確率が高い長身選手が要になるわけだが、基本的にはどのチームもこのことは変わらないと思う。

しかしながら、帝京は全体的にFWを前に揃え、後方にBK選手を置く形で相手のキックオフに臨んでいた。最初は面白い並び方だと思った程度だったのだが、その後の展開を見て閃いた。それは、帝京が意図的に深く蹴らせるようにしたのではないかと言うこと。それでなくても、帝京にはハイタワーのマニングが居るので、浅く蹴って競り勝つことは難しい。だから、必然的にキックは深めに前に陣取ったFWと後方に位置したBK陣との間にできたスペースに蹴りこまれる。そこに走り込むような形でボールを受けたBK選手は蹴らずに前へ出て展開、あるいはFWにボールを渡してワンクッション置く形で展開する。キックという選択肢はなく、自陣からも継続で意思統一が成されていたわけだ。もちろん、FWがボールキープに絶対の自信を持つ帝京だから取れる戦術でもあるわけだが。

結果的に見れば、筑波は最初から帝京の術中に填まっていたことになる。同じことの繰り返しにならないように、反対サイドに蹴ってみるとか工夫があってもよかった気もする。もちろん、ノックオン合戦につきあってしまい、敵陣起点のセットプレーという絶好の先制機を逃し続けたことが惜しまれる。しっかり準備ができていて緻密な帝京に比べて、筑波のプランはどうだったのだろうか?

◆戦力の分散を余儀なくされた筑波

筑波の魅力は、メンバーに個人能力の高い選手を揃えたタレント軍団が織りなす観るものをワクワクさせるようなラグビー。そのことは、観客を魅了したニュースター福岡のトライに象徴される。だが、ここまでの試合では、個人技に溺れることなく、チームワークの良さでバランスよく戦ってきた。この試合も、そんな筑波の個人技をベースとした継続ラグビーが観客を魅了するはずだった。しかしながら、帝京はそれをさせなかった。エース彦坂に突破を許す場面はあったものの、基本的には大きくディフェンスラインを破られることは少なかった。

帝京が畏れていたのは、個々の強い選手が連携して戦いを挑んで来ることだったと思う。だから、多少は個人で突破されても、孤立させて無理をさせるような状況に持って行けば怖くない。ブレイクダウンは厳しく行ってテンポよく攻めさせないようにし、数的優位を保ち、極力ミスマッチにしないようにする。相手を熟知している強みもあるが、アタックでも戦力の分散を余儀なくされてしまったことが筑波にとっては誤算だったかも知れない。

◆BKでも塊で動く帝京

BK攻撃の魅力といえば、ワイドな展開、飛ばしパス、緻密なサインプレーといったような華のあるプレーが中心になりがち。そう考えると、帝京のBK選手達のプレーはとても地味に見えてしまう。個の強さを活かした突破やスピードに乗ったランを持ち味とした選手達が揃っていても、結果オーライ型のトリッキーなプレーは帝京のラグビーの教科書にはないのではとついつい考えてしまう。帝京のライン攻撃はショートラインを基本とした確実なパス回しを基本としている。

だから、パスミスが少なくなり、見方同士が近くに居ることでバリエーション豊かな攻撃も可能。学生相手なら、平パス、ショートラインだけでも問題なく勝負ができる。また、インターセプトに遭う危険も少ない。帝京BK陣のトップスピードに乗った状態での軽快なパス回しを見て、BKもFW同様に「塊」で動くことで迫力のある攻撃ができることがわかった。ショートラインの効用は見直されてもいいような気がする。

◆一時的に暗澹たる気持になったが

見事前人未踏のV4を達成した帝京には心から祝福の言葉を贈りたい。と同時に、正直なところ暗澹たる気持にもなった。このままいったら帝京はずっと連続V記録を伸ばし続けてしまうのではないだろうか。施設や体制面の充実に加え、しっかりした規律と帝京に死角は見当たらない。シーズンを重ねるごとに、帝京にキャッチアップできるチームが確実に減っていく中で、帝京ファンの方には申し訳ないが、大学ラグビーの楽しみは減っていくのではないだろうかと、どうしても行き着く先のことを思うとネガティブな気持になったのだった。

しかし、帝京も4年前のチームには今の規律はなかったそうだ。また、帝京はけして難しいことをしているわけでもない。当たり前のことを当たり前にやり続けることで、ここまで来ることができるという良いお手本を示してくれていると思うと、もやもやは消えた。帝京が確立したスタイルを踏襲することでチャレンジする考え方もあるが、別のやり方もあるはずだし、また、それを実現させるチームがどんどん出てきて欲しい。

◆チャレンジを続けて欲しい筑波、そして東海も

完敗を喫してしまったとは言え、やはり来シーズンも帝京の連続Vを脅かす存在の最右翼は筑波だと思う。帝京とは違った個人能力の高さが活きるファンタジックなラグビーを追求して、次こそは日本一に輝いて欲しい。それは準決勝で涙を呑んだ東海にも言えること。各々が各々のスタイルでトップを目指すことで大学ラグビーを活性化させて欲しいと思うのだ。

いずれにせよ、「伝統校」「新興校」という言葉はもう死語にしてもいいのではないだろうか。10数年以上の期間をかけて熟成されたチームを未だに「新興校」と呼び、片や数年単位で指導体制が変わりその都度リセットになってしまうチームを「伝統校」と呼ぶことには大いなる矛盾を感じる。

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