先週はBグループの試合(早稲田vs法政)の初観戦だったが、今週も「初めてのCグループ」ということで立正大学のグランドに向かった。春シーズンは新宿回りの京王線に乗る機会が多いが、今日は地元埼玉県での観戦。家から近いというだけでも何だか嬉しくなってしまう。心配された天気もすっかり回復して絶好のラグビー観戦日和となった。
ラグビーファンの注目は、どうしても強豪校が鎬を削るAグループやネームバリューではAグループを上回る顔ぶれが揃うBグループに集まりがち。しかし、Cグループであっても上位進出を目指して頑張っているチームがあるはずだ。おそらくその中でも1、2を争うのが大東大と立正大。昨年末に仲良く(でもないか)入替戦を戦ったチーム同士だが、そのときの両チームに対する印象は全く違う。関東学院を撃破して1部リーグ復帰を果たした元気いっぱいの立正大に対し、満身創痍の中、何とか1部残留を決めた悲壮感漂う大東大といった感じだった。そして、大東大は監督が交代して再出発となったのだった。
家を出て国道17号線を熊谷まで走り荒川を超えると立正大学につく。さほど渋滞もなく1時間も経たないうちに試合場に到着する。駐車場からキャンパスマップを頼りに歩くと、一番奥にある一際立派なグランドがラグビー場だった。Cチーム同士の対戦中だったのだが、すでに観客席はほぼ満席。てっきりホームの立正大のファンと思ったら、実は半分以上が大東大のファンだった。そうだ、ここは大東大からもすぐ近くだったのだ。なかなか低迷状態から脱することはできなくても、熱心なファンが多いチームは幸せといったところだろうか。そんな観客のサポートに応えるべく、Cチームも元気いっぱいに戦っている。一気にA戦(春季大会)に対する期待度が高まってきた。
◆キックオフ前の雑感
立正側のスタンドに空席を見つけ、C戦に目をやりつつ両チームのメンバーを確認する。大東大は長谷川が欠場だが、PR高橋主将、FL鈴木、No.8テビタに期待の新人LOオネマセ・ハフォカが名を連ねるFWはなかなかの顔ぶれ、しかしながら、BKは7人中4人が1年生というフレッシュ過ぎる顔ぶれになっている。そして残りの3人が4年生で、しかも昨シーズンコンスタントに出ていたのはCTB梶のみという状況。WTB淺井はリーグ戦屈指のトライゲッターのはずだが昨シーズンは怪我に泣かされた。FWはいいとして、BKは果たして大丈夫だろうかと思ってしまう。
逆に立正大は大東大のメンバー構成を見て自信を深めたかも知れない。立正大もFWの柱の鶴谷やBKの早川(トライゲッター)らを欠いているが、実績のある選手で固めている。とくにSOツトネは1部昇格の立役者でもあり、対面が新人で大丈夫だろうかと(大東大ファンは)考えるはず。そんな状況もあってか、ホームの立正大選手の方が自信ありと言った感じでピッチに登場してきた。大東大のジャージがいつものモスグリーンではなく、いい結果が出たためしがない白ということも加勢した感じ。でも、キックオフ直後から、昨年までは大人しかったはずの「ホワイト・ダイトー」が大暴れすることになろうとは。
◆前半からエンジン全開で攻め続けた大東大
春季大会は自陣からでもキックを封印して継続するチームが多い。果たして、大東大もそうだった。FWからテンポ良くボールが供給され、BK選手が前を向いてパスを繋ぐ。ボールがハーフウェーラインを越えたところでFBのライン参加から左オープンにスペースが生まれ、パスを受けた左WTB淺井が一気に加速する。そして、ゴール前付近ではタックラーをはじき飛ばすパワフルなランを見せてゴールラインを越えた。GKも成功して大東大が開始1分にして7点を先制。あまりにも鮮やかな先制パンチに立正ベンチも静まりかえる。(実は、このBK展開志向のWTBで取る形こそが大東大の目指すラグビーであることは後でわかる。)
立正としてはたまたま形に填まってのハプニング的な失点と思いたいところ。気を取り直してリスタートのキックオフから体勢の立て直しを図る。大東大はやはり自陣からでも継続が本日のテーマのようだ。キックの選択肢はなく、どんどんボールがオープンに展開される。心配された1年生のHB団コンビだが、まったく心配なさそうだ。FWから安定した球が供給されることもあるが、迷いなく正確にパスがSOに供給される。SOも無理に仕掛けることはせずにCTBへパス。ここで、梶と新井のベテランコンビがしっかり前を向いてフェイクを入れながら前進を図る。ただし、無理に突破を目指すのではなく、あくまでもFBがタイミング良くライン参加できるようにタメを作る。そして、FBのライン参加で生まれたスペースをWTBが切り裂く形でゴールラインまでボールを運ぶ。
この一連の動きを見て悟った。今年の大東大は去年までのチームとは明らかに違うことを。CTBは前に出ることよりパスを考え、WTBもせっかくいい形でボールをもらっても勝負せずにウラに蹴ってしまう消極的な攻めでファンを落胆させ続けたのがここ数シーズンの大東大。これでは点が取れるわけもなく、得点力不足なら勝利も遠のく。新体制となった首脳陣が最初に取り組んだのは、大東大のDNAとも言えるBK展開で積極的に攻める姿勢を植え付ける「意識改革」ではなかっただろうか。最後の勝負はWTBに託す。そのためにFWやフロントスリーとFBは何をすべきか。前をしっかり見て、可能な限り前進を図る。ただし、無理はせずパスをしっかり繋ぐ。タックルに遭ってもサポートを待ってボールを殺さない。できるだけいい形でWTBにボールを渡すという基本コンセプトは、プロセスは違っても帝京と同じ「シンプル・イズ・ベスト」の攻撃ラグビーだ。
ついつい大東大の方に熱が入ってしまったが、立正も簡単には突破を許さない。そして、マイボールでは大東大に対抗する形でオープン展開勝負。SOにパワフルで安定したツトネが居るのが強みだ。キックオフからミスも殆どなく繰り広げられる両チームの攻防を観ていると、先週のニッパツ三ツ沢で開始早々から繰り広げられた光景(イージーミスの応酬)は悪夢だったとしか思えない。ランクがひとつ下のチーム同士の方がより締まった内容のラグビーをしている。いっそのこと、2チームともそっくり入れ替えたいという衝動に駆られた。
大東が先制した後はやや膠着気味の展開となる。ただ、やることが明確な大東大の方が優位にあることは確か。立正はWTBまで展開した後のアタックで詰まってしまう。飛ばしパスも決定打とは成らない。そんな中で13分、大東大が追加点を奪う。立正大のキックに対し、自陣からカウンターアタックを仕掛けてパスを受けNo.8テビタが力強く前進。テビタはタックルに遭うがパスを受けたSH小山が抜け出してゴールラインに到達した。ここで大東大のアタックが一気に加速する。
18分、立正大のアタックの局面でラックとなったところでボール奪取に成功してオープンに展開。絶妙のタイミングでパスを受けたWTB淺井がこの日2つめのトライを奪う。24分にはスクラムからオープン展開での連続攻撃からFL篠原がラックサイドを突破してラストパスをテビタに渡す。続くリスタートのキックオフではカウンターアタックから巨漢のオネセマがパワフルかつスピーディー!な突破を見せて前進を図る。立正大の人数をかけたタックルにボールデッドとなったと想った瞬間、実はパスを受けていたWTB根岸が一気にゴールラインまで到達。さらに36分、大東の度重なるオープン攻撃にFW周辺の防御が甘くなったためか、ラックからパスを受けたFL鈴木がゴールラインまで走りきった。38-0と大東大のテンポがよくスピードに乗ったトライシーンばかりが印象に残る前半の戦いだった。
◆何とか一矢報いたい立正だったが
防戦一方ではなかったものの、前半はラグビーをさせてもらえなかった立正大はとにかく1トライ返したい。しかし、大東の勢いは止まらない。開始早々の2分、PKからの速攻でラックからオープンに展開し、絶妙のずらしでパスを受けたWTB淺井が3つめのトライを奪う。それにしても、FBの大道はとても1年生とは思えない落ち着いたプレーを見せる。大東はさらにたたみかける。6分、自陣10m/22mでのラインアウトからオープンに展開し、アウトサイドのCTBにボールが渡った段階で大外に11番と14番が並んだ状態。これで勝負ありだった。まず11番が突破を図り、相手を十分引きつけた状態で14番へパス。あとはボールを落とさずにゴールを目指すだけだ。大東大のリードは48点に拡がる。
ただ、ここで大東大に攻め疲れが出たためか攻勢がやや鈍り、逆に立正大にもチャンスが生まれる。しかしながら、立正のアタックは大東に比べるとテンポが遅く、ミスも多いためなかなか敵陣の22m内に入ることもできない。大東大は26分にオネセマに替えてWTBホセア・サウマキを投入する。187cm、100kgの大型選手だ。この選手がスーパーサブとしてリーグ戦Gの対戦校に脅威となりうることはすぐにわかる。スクラムからのオープン展開でボールを受け取ったサウマキは50mを駆け抜けて名刺代わりの初トライを記録してしまった。スピードと高さは流経大のリリダムと比べても遜色ない。いやむしろ堅実性の面でリリダムを凌駕する選手になるかも知れない。楽しみであり恐ろしい選手だと想った。サウマキは終了間際にも1トライを奪う。
大東大が鮮やかにトライを決め続けるため、立正大については殆ど書くことがない。が、けしてサボっていたわけでも、大敗ムードの中で気落ちしていたわけでもない。最後まであきらめずに頑張っていたことは間違いない。ただ、いかんせん役者不足。突破できる選手はSOツトネだが、彼は同時にゲームも作らなければならない。大東大のオープン展開に付き合ってしまった(付き合わざるを得なかった?)こともペースをつかめなかった原因かもしれない。私的期待選手はセブンズでも活躍したNo.8の加藤だったが、彼がボールを持つ場面が殆どなかったのも残念だった。秋のリーグ戦では、自ら仕掛けていく積極性も必要になるだろう。もっとも、本日の大東大が出来過ぎだったのかも知れないが。下克上ではないが、今一歩ピリッとしない上位チームに活を入れて欲しいし、それも可能だと思う。
さて、ゲームは終盤に。実は、ここで意識改革された大東の本領を見ることになる。何とかゼロ封を免れたい立正が最後の力を振り絞って攻勢に出る。大東は自陣ゴールを背負って守勢に回る。過去の大東、いや殆どのチームがどこかで集中を欠いてトライを取られてしまうのが落ちだ。ましてや60-0と大東は大量リードしており、1トライくらい取られてもという気持ちになりがち。しかし、大東はゴールラインまであと一歩という土俵際まで追い詰められながらも全員で猛攻を凌ぎきる。キックオフからノーサイドまで両チームとも集中を切らさずに戦い抜いた熱戦はとてもCグループの戦いとは思えないくらいに充実していた。
◆復活への確かな手応えを感じさせた大東
リーグ戦グループの昨シーズンの注目チームは、劣勢を予想されながらも3位にまで上り詰めた拓大だったが、どうやら今シーズンは大東大ということになりそうだ。今の勢いなら、Bグループの3校より上に行く可能性は十分あるし、東海や流経がもたつくようなら優勝争いにも絡む可能性がある。BK陣の恐るべきルーキー達の成長がよい刺激となり、上級生も頑張るという図式になれば強力なチームができあがる。怖いのはやはり怪我だろうか。基本コンセプト(WTBで勝負)は帝京並みにしっかりしているので、あとは焦らずじっくりパワーアップして欲しいところ。気のせいかも知れないが、例年に比べると大東の選手達の体つきががっちりしているようにも見える。課題克服へのチャレンジは既に始まっているのかも知れない。
それにしても、指導体制が変わるだけで、それも短期間でこんなにもチームが変わるのだろうか?という想いを抱かざるを得ない。もう一つ理由があるとすれば、それは最高のキャプテンに恵まれたということになるだろう。後半は脚を引きずりながらも、常に最前線に立って身体を張り続けた高橋主将そのひとだ。彼のプレーは1年生の時から見ているが、おそらくFW第1列では日本で1,2のタックラーではないかと思う。沈滞ムードの漂うチームの中にあって、闘志を失うことなく戦い続けた選手が主将ならチームメイトも付いてくるはずだ。
些細なことだが、試合後にとても印象に残るシーンがあった。立正大の監督への挨拶を終えた後、高橋主将は(歩いてではなく)ジョギングで自チームのサイドに戻っていったのだ。少なくとも、過去数シーズンの大東大とは違うことをキャプテン自らが示したことがとにかく素晴らしいと思った。
パナソニックの飯島部長(OB)のサポートがあるから、GMも現監督も思い切って指導ができる。パナからも臨時コーチが次々教えにくるという昨年とは全く違うチーム体制になりました。勿論、元監督の最後の置き土産ならぬスカウトも素晴らしいのでしょう。
これで法政・大東と古豪が復活してくると、リーグ戦も活気が出てくると思います。国立の超満員を経験しているのはこの2チームだけですから。。。