「熱闘」のあとでひといき

「闘い」に明け暮れているような毎日ですが、面白いスポーツや楽しい音楽の話題でひといき入れてみませんか?

大東文化大学 vs 拓殖大学(関東大学リーグ戦G1部-2018.09.22)の感想

2018-09-28 02:56:42 | 関東大学ラグビー・リーグ戦


好天に恵まれたニッパツ三ツ沢球技場に流れる港町横浜の爽やかな海風。この季節に青空の下で2試合観戦できることに幸せを感じる。第1試合では東海大に日大が肉弾戦を挑み、着実なパワーアップを感じさせる健闘を見せた。トップリーグに多くの選手を送り出している東海大の身体作りの確かさには定評があるが、ヘラクレス軍団復活を目指す日大も負けては居なかった。強い肉体がないと戦えないという雰囲気が大学ラグビーにも漂ってきたのはいいことに違いない。

第2試合は昨年度のリーグ覇者大東大とチャレンジャー拓大の戦い。大東大は大学屈指のNo.8として人気も高いアマト・ファカタヴァが欠場となったものの、ほぼベストの陣容と思われる。留学生3人の同時出場が可能となったことでCTBシオペが固定できるのも大きい。一方の拓大も緒戦の東海大戦での激闘をものともせず、先発はCTB12の松浦を除き緒戦を同じ顔ぶれ。第1戦で背番号12を付けていた高橋の名はリザーブにあるのでケガによる欠場がないのは立派だ。

さて、この試合のみどころだが、1にも2にもスクラム。大東大、拓大ともにその強さには定評がある。とくに、ここ2年の大東大のスクラムは尋常ならざる強さを誇り、対戦相手を震え上がらせる存在となっている。しかしながら、拓大も拘りのスクラムを武器に戦っているチーム。もちろん、スクラムの優劣だけで試合が決まるわけではないが、言わば(ノックオンが怖くなくなる)精神安定剤みたいな効果はあり、戦いを優位に進める上で欠かせない武器であることも確か。だから、この試合はスクラム抜きには語れない。いや、正確に言えばスクラムの強さがどう戦いに活きるかなのだが、それが解ったのは試合のあとのことだった。



◆前半の戦い/スクラムでの覇権争いは5分と5分に見えたが...

メインスタンドから見て右から左に攻める拓大のキックオフで試合開始。拓大に気負いがあったためか序盤から反則が続き、拓大は開始2分でいきなり自陣ゴールを背にした相手ボールラインアウトのピンチを迎える。大東大はラインアウトからモールを形成してFWで攻めFL湯川がトライ。GKは失敗するが大東大が幸先良く5点を先制した。

拓大キックオフでのリスタートで大東大にノックオン。大東大陣22m内でのファーストスクラムという形でもう一つの戦いの幕が上がった。拓大としてはここで一気にスクラムを押し込んで得点もプライドも奪い取りたいところ。しかし、大東大が簡単にはスクラムを組んでくれるはずもない。結局組み直しが4回(だったと思う)を数え、大東大のコラプシングで第1ラウンドが終了。ここで拓大の応援席から大歓声が沸き上がった。拓大はPKからラインアウトを選択し、モールを押し込んでマシヴォウがトライ。GKは失敗するものの拓大は5-5の同点に追い付く。

今度は大東大のキックオフでリスタート。大東大のカウンターアタックに対し、拓大は接点でハンドの反則を犯して再び自陣で相手ボールラインアウトのピンチ。お互いに反則が目立つ展開でラインアウトが多いが、スクラムでも熾烈な戦い。と言いたいところだが、組み直しが多く不意のコラプシング(おそらく)が起こることも反則が増えた原因のように見えた。しかしながら、スクラムを組む回数が増えていく内に、次第に大東大が拓大を押し込む場面が多くなっていく。24分、大東大は拓大のコラプシングからPKを得てラインアウト。ここもモールを押し込み平田主将がトライ。GK成功で12-5と再びリードを奪う。

試合は得点板が動かない膠着状態となるが、スクラムでの大東大優位が明確となっていく。とくに32分に見せた強力なプッシュは決定的に見えた。最初に組んだ段階では大東大、拓大とも低い模範的な姿勢で拮抗した形のスクラムになっている。しかし、ほどなく拓大の姿勢が若干崩れる。ここから大東大が押し込むのだが、とくに前5人のパックが強固で1枚岩のようになっている。両チームのFW8人の体重を比べると大東大の825kgに対し拓大は848kg。むしろ拓大が重いことを考えると大東大の強固さがより浮き彫りになる。変則スクラムで対抗しようとしてもおそらく真っ直ぐに押し込まれてしまうだろう。

前半の後半の段階でスクラムの優劣が決したという印象を持つに至る。だが、もちろん拓大はここで引くわけにはいかない。序盤戦こそ拓大に押されたりコラプシングを取られたりした大東大だったが、相手のスクラムを受け止めながら力関係や押し方を探っていたのかも知れない。HOを務める平田主将はチームのまとめ役であると同時に研究熱心な選手。3年生時でもハーフタイムでベンチに下がる時にレフリーに話しかけていた場面を何度か見ている。

終盤はスクラムの優位性を活かす形で大東大のアタックの場面が多くなる。拓大の強いタックルに遭ってノックオンを犯したりと得点には至らない。一方の拓大はスクラムに集中と言った感じでBKが手持ち無沙汰の状態。ただ、スクラムでの熱い戦いがそんなことは忘れさせた前半だった。



◆後半の戦い/スクラム戦で消耗の拓大に対し、大東大のアタックが爆発

後半に入って大東大は強力なスクラムを活かす形で一気に攻勢に出る。拓大にコラプシングの反則が増えたことで大東大にラインアウト起点のアタックの機会が多くなる。ここで威力を発揮したのがタラウ・ファカタヴァ。ライン参加でボールをキャリーしパスを確実にBKに渡す。ファカタヴァ兄弟ではどうしてもNo.8を務めるアマトの方に注目が集まるが、堅実な仕事人と言った感じのタラウも大東大にとっては欠かせない選手。

5分の大東大の後半の初トライは、ラインアウトを起点としてタラウからパスを受けたCTBシオペが決めたもの。14分のラインアウト起点でオープンに展開してWTB朝倉が決めたトライも然り。2連続トライで24-5となり、大東大のリードは一気に19点に拡がる。さらに23分にもHWL付近でのラインアウトを起点としたパス回しからFL湯川がトライ。この時間帯から拓大FW周辺のディフェンスが甘くなり、大東大選手が一気にウラに抜ける形での得点場面が増えていく。

1人が大きくウラに抜けてしまった場合は、選手が孤立してトライに至らない場面が多い。だが、大東大にはこの常識?が当てはまらない。必ず1人ずつ順番にフォロワーが現れてパスが次から次へと繋がる。マジックのようなパス回しに翻弄される形で拓大のディフェンダーが足りなくなり、満を持してワイドにボールが展開される。このためラストパスを受けたWTBはゴールラインまで走るだけでよい。

結局、大東大が後半に挙げたトライは7つを数えた。前半の接戦がウソのように後半の拓大はスクラム戦の完敗も含めていいところがなかった。拓大はFWがスクラムに注力したことで消耗させられ、足が止まる形となる。そこを見越した大東大の選手がディフェンスの穴をつく形でウラにボールを運ぶ。スクラムの最前線に立っていた平田主将には前半の段階で後半のこのような展開が見えていたのかも知れない。拓大が強力なスクラムを持っていたが故に、より強力なスクラムを持つ大東大の策に填まってしまったというのがこの試合の感想。アマトが不在だったことを考えると、大東大恐るべしという他ない。



◆試合後の雑感/強力なスクラムの活かし方

最初にも書いたように、拓大は強力なスクラムを看板として戦うチーム。だから、大東大との真っ向勝負は見応えがあった。だが、劣勢に立たされても強力なスクラムを活かす方法はなかったかなという想いも禁じ得ない。あえてスクラムを捨て、BKへの展開を交える場面を作るという戦術。捨てると言うと語弊があるので言い換える。場面場面に応じてコンテストするかボールを出すだけにするかを選択するということ。大東大にとっても、必ず押してくるという前提が崩れたら少し混乱するかも知れないと邪推してしまいたくなる。

とはいえ、スクラム1つ取ってもこれだけ観ていて楽しめる。大学ラグビーには大学ラグビーなりの戦い方があり、また面白さもある。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする