映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

草笛光子と成瀬巳喜男

2009-03-04 11:21:58 | 映画(日本 昭和35年~49年)
新入社員で会社に入ったとき、大変お上品なマダムがアルバイトに来ていた。働いたことなんてないんじゃないかと思われる50くらいの女性である。
家にいるよりは仕事でもしてといういかにも「有閑マダム」
事実お金持ちのマダムで、会社の女の子なんかは六本木の肉の老舗「和田門」につれてもらったりしてごちそうになっていた。私自身もお世話になった。
その年の年末、母が気にして、三越?からもらったミュージカルの券をそのマダムにプレゼントすると言った。主演は草笛光子であった。
草笛の演劇ときいて、そのマダムはたいへん喜んだ。
たいへんよかったそうで翌年入ってすぐ達筆な字でお礼状を母に下さった。「旧蝋の。。。。よかったです。」なんて
旧蝋なんて言葉は頭の辞書にないので戸惑った。

草笛光子はおばさんのイメージしかなかったので、あんなに喜んでもらえるとは思わなかった。
新入のときは30以上の女性は全部おばさんに見えてしまうわけだからね。
その後ずっと気になる存在だった。そして昔の東宝映画をみるにつれ縁がまたできた。
やはり美しい女性である。成瀬巳喜男の映画にも出てくる。

「放浪記」では男を取り合う女優兼文筆家役、「女という他人」では殺される女性の友人役
「乱れる」では加山雄三の姉役で小姑役、「乱れ雲」では夫を交通事故で亡くす司葉子の姉役

女っぽさが前面にでるのが「放浪記」である。
高峰秀子が貧乏暮らしの生計を立てようとして、カフェで働く(カフェは今で言うキャバクラだ)
そこで俳優兼文筆家の仲谷昇と知り合い、同棲するようになる。
ところが、仲谷には女優の恋人草笛がいた。草笛のもとへと仲谷はいくが、結局別れる。
その後またカフェで働く高峰(林芙美子)のところへ他の文筆家と草笛がきて、二人で組んでいこう
となる腐れ縁の仲である。

ここで草笛が演じる役がかっこいい。当時30前だったはずだが、ぱりっとして気の強そうな
役を素敵に演じる。ネットで見たらこの当時芥川也寸志と結婚していたらしい。
これは驚いた。あまり結びつかない二人だが、あの情念ある演技を見るだけでも彼が草笛光子を好きになったのがわかる。

なぜか不思議とひかれる女性である。
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グリーンマイル  トムハンクス

2009-03-04 06:34:53 | 映画(自分好みベスト100)
「ショーシャンクの空」のフランクダラボン監督の次の作品である。
信じられないほどの感動を与えた前作に劣らないほどの素敵な映画
スティーブンキング原作は同じで、多少ムーディーなムードがある。

はじめに108歳になった主人公の回顧談からスタートする。1935年44歳だったときの出来事を語る。
刑務所の看守の主任だったトムハンクスは、死刑囚と向かい合う。電気椅子での処刑はむごい場面である。
死刑囚として入ってくるのが黒人の大男、気は優しそうだが入所理由は幼い子供二人を殺したこと。
周りにはかなりきわどい死刑囚が何人かいて、トムハンクスのチームは手を焼く。
ある夜、牢の中からトムが大男に呼ばれる。トムはオリの前で突然急所を握られる。
トムは泌尿器系の疾患で放尿時に痛むのを悩んでいたが、握られたあと突如うそのように回復する。
それを見てほくそえむ大男の姿。。。。大男は超能力を持っているようである。

同じ刑務所映画でショーシャンクの空と似たようなところもある。
冤罪で刑務所に入り込む設定は同じ、さまざまな囚人を食材のようにに使って、異常な刑務官をスパイスのように配置させるのも前作と同じである。そこにファンタジー映画的要素を加える。超能力を与えることで変化球を作る。
その超能力が安らぎのような世界をつくる。そこが心地よい。
逆に死刑囚が処刑される場面がある。ショーンペンの「デッドマンウォーキング」やイーストウッド「ブラッドワーク」にも出てくるが、今回の電気椅子のシーンのほうがかなりむごい。

トムハンクスは主人公であるが、いつもほどの存在感は持たせず、黒人大男の死刑囚を思いっきりクローズアップさせる。彼の存在はショーシャンクのモーガンフリーマンよりも重い。
他の死刑囚の演技もなかなかである。

180分と長いが、時間を忘れさせる。
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続夕陽のガンマン  クリントイーストウッド

2009-03-02 21:21:54 | クリントイーストウッド
日本映画ばかりが続いた。
洋画を見ていないわけではないが、今ひとつ乗り気になれなかった。
そこでクリントイーストウッドの世紀の大傑作を見る。
イーストウッドは「いつもの声」で話す。ミリオンダラーベイビーでヒラリースワンクを後ろから指導している「あの声」と40年前も変わらず話す。そんな彼の声を聞くためにも吹き替えで見ることはありえない。

内容は話せないが、ラストシーンの緊張感
これは映画史上でもそうはないすごいシーンだ。

ここではイーストウッドは主役3人の内の一人である。映画の本題は「いい奴、悪い奴、汚い奴」(the good the bad the ugly)である。イーストウッドは「いい奴」だからといって、正義の見方ではない。悪さをたくらむ連中の一人である。

イーストウッドと「汚い奴」とはコンビを組んで金をせしめている。
「汚い奴」はお尋ね者で2000$の賞金が出ている。彼を狙って賞金稼ぎの連中が捕まえようとしている。捕まえようとする連中を横目にイーストウッドが捕らえる。捕らえて当局に出し賞金をもらう。その後公然の前で絞首刑にあう寸前にイーストウッドが助けて分け前を取り合うなんてことをしている。
「悪い奴」は依頼を受けて殺しを請け負う。しかし、金をもらったとたん依頼者を殺してしまうような奴
南軍の将校が20万$の金貨を持って逃げているいると聞きそれを追う。

いつものようにイーストウッドはコンビをくんで賞金を奪おうとしたときに、仲間割れをして「汚い奴」を僻地に置いてきぼりにする。しかし、しぶとい「汚い奴」はイーストウッドを見つけ復讐的に砂漠の中を引きずりまわす。
イーストウッドにとどめを撃つ寸前砂漠を走る馬車を見つける。馬車には負傷した南軍の兵士たちが乗っていた。
死にかけていた将校がポツリと金貨のありかの話をする。
「汚い奴」はある墓にあることを聞いたが、具体的な場所はイーストウッドが聞いてしまい殺せなくなる。
二人は墓のありかに向かう、その目前に軍勢が来る。南軍と思って近づくと北軍の兵士で捕らえられる。
捕虜の収容所にいくが、そこにいたのは北軍の刑務官として紛れ込んでいた「悪い奴」だった。。。。。

単なる西部劇ではなく、南北戦争の真っ最中という設定で、戦争シーンも含まれる。「戦場にかける橋」を思わせる木製の橋の爆破シーンもある。
160分を超える長編となっているが、お互いの対決の間合いの部分を丹念に撮っていく。アップの使い方が実にうまいし、間合いをとった画像が上手である。
セリフも粋である。人間には二種類あるで始まるセリフは少しずつ変えて反復されていく。コメディ的な笑いをそそる「汚い奴」の演技は抜群だ。

映画を見ている量では世界10本の指に入るといわれるタランティーノが自身のベスト10の中に入れている。確かに画像的に影響を受けるシーンは多いと思う。
私自身はイーストウッドの渋さにただ感嘆!!


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小早川家の秋  小津安二郎

2009-03-01 20:48:58 | 映画(日本 昭和35年~49年)
小津作品ではめずらしく関西が舞台、同じ関西舞台の成瀬巳喜男「めし」のようにはいろんな風景を見せるわけではない。京都の手の込んだ格子の多い和風建築の家をみせて関西らしさを出す。東宝に遠征した作品で、当時の東宝のオールスターがそろっている。ローアングル切り返しはいつもどおり。

原節子は造り酒屋の未亡人、大旦那の中村鴈治郎は健在だが、実務は妹新珠三千代とその婿さん小林桂樹が取り仕切っている。未亡人になって6年たっているので、鴈治郎の義弟加東大介が取引先の鉄工所の社長森繁久弥を紹介しようとしている。
森繁は原に一目ぼれだが、原は関心を持たない。もう一人の妹司葉子にも縁談がくるが、同僚の宝田明に心をよせている。しかし、宝田は札幌に転勤してしまう。
そんなころ大旦那鴈治郎は外出がちである。実は京都祇園に昔の恋人だった浪花千栄子がいて、そこに出入りをしている。そのことがわかり娘新珠は怒るが。。。。

ほのぼのとした流れはいつもどおり。鴈治郎、新珠三千代、浪花千栄子の関西人がちゃんとした関西弁を話すので不自然さはない。鳥取出身の司葉子の関西弁もまともである。森繁は登場場面がバーのシーンだけでここでは存在感を出さない。

小津作品で私が一番好きな「浮草」でも抜群の演技を見せている中村鴈治郎がここでも抜群である。いわゆる関西人らしいあくの強さがにじみ出る演技である。造り酒屋の遊び人の大旦那を巧妙に演じる。鴈治郎と浪花千栄子がいく競輪場のシーンが出てくる。画面に西大寺と出ていたので奈良競輪場ではなかろうか?「お茶漬けの味」でも後楽園競輪が出てくる。小津は競輪が好きだったのかな?
新珠三千代は当時31才小津の切り返しショットが一番映えているのが彼女である。聞くところによれば、相当小津は気に入ったと見える。関西弁もきれいだし、並み居る女性軍の中で一番の存在感をだしている。
原節子は41才この作品あたりで女優業を卒業としているみたいだ。確かに美しいが、今の41才の女性に比較するとちょっと上に見える感じもする。お上品な話し方は最近の女性にはない品性を感じる。

平均プラスアルファというところかな?
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乱れ雲  加山雄三

2009-03-01 06:18:42 | 映画(日本 昭和35年~49年)
成瀬巳喜男の最後の作品である。
「君といつまでも」を歌った直後の当代きっての大スター加山雄三と東宝の看板美人女優司葉子でロマンス映画をとる。東京のロケから一転青森へとロケを移す。

通産省の役人の妻司葉子は、夫の海外転勤に喜んでいたのもつかの間、出張先の箱根で夫が交通事故死をとげる。その加害者が商事会社に勤める加山雄三である。
司は妊娠中だったにもかかわらず、夫の実家より離籍の申し出を受け、子供をおろす。加山は慰謝料の仕送りを始めるが、司が故郷の十和田湖に帰るのでこれ以上は不要といわれる。そんなとき加山は左遷され、青森の出張所へと異動する。
そして二人は青森で再会する。。。。。

同じ成瀬巳喜男だが、「乱れる」の凄みと比較するとちょっと期待はずれかも?
脚本が非常に不自然であること、司の演技が今ひとつうまくないことのせいだろうか?今だったら交通事故の死傷事故を起こしたら、会社にはいられないと思う。
しかも、劇中ではパンクでハンドル操作を間違ったと不可避の事故ということで無罪の判決が出ている。司が夫の実家より離籍の申し出を受けてそれを受けるという話も奇妙。これらは実に不自然だ。
司と加山が愛し合うようになるのも不思議だし、せっかくの最終作もちょっとどうかと思う。
しかし、脇役陣はいい。司の姉役の森光子、草笛光子、その夫藤木悠、旅館経営の森光子の情夫加東大介が芸達者振りを発揮している。それだけに司葉子の大根役者振りが際立ってしまう。

この時代は五社協定があって、俳優の所属意識がきわめて強かった。この当時の東宝は独特のハイソなムードを持っていたと思う。司葉子もその典型だし、姉役の草笛光子もいかにも東宝らしい。成城にスタジオがあったころで、東京に暮らしている風景で成城、砧の住宅街の風景が出てくる。これはいい。
また十和田湖の風景も観光したような気分にさせてくれる。

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