映画とライフデザイン

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映画「クライムズ オブ ザ フューチャー」 デイヴィッドクローネンバーグ& ヴィゴモーンテンセン

2023-08-19 08:39:23 | 映画(洋画:2022年以降主演男性)
映画「クライムズ オブ ザ フューチャー」を映画館で観てきました。


映画「クライムズ オブ ザ フューチャー」は奇才デイヴィッドクローネンバーグ監督が2022年のカンヌ映画祭に出品した近未来を描いた作品である。近未来モノは正直苦手なジャンルだけど、自分のベストラインナップにも入る「ヒストリーオブバイオレンス」ヴィゴモーンテンセンとデイヴィッドクローネンバーグ監督とコンビを組むとなると話は違う。しかも、ヴィゴの相手役が現代フランス映画の人気女優レアセドゥである。他にも「トワイライト」クリステンステュワートも出演してキャストはかなり豪華だ。予告編にはちょっとエグいイメージを持つが映画館に早速向かう。

映画がはじまり、いきなり母親が息子を殺すシーンがでてくる。父親も号泣するが、普通に遺体を処理する。これっていったいどういう意味だろうと思いながら映像を追う。すると、主役のヴィゴモーンテンセンとレアセドゥがでてきて、手術と思しきシーンで体内の臓器を持ち出す。ロボットのような機械装置が無機質に身体にナイフを入れて行う。内臓を見るとグロテスクだと思うけど、あまりにも飛んでいる世界なので意味がよくわからない。

理解不能なシーンが続くので、作品情報をそのまま引用する。

そう遠くない未来。人工的な環境に適応するため進化し続けた人類は、その結果として生物学的構造が変容し、痛みの感覚が消え去った。

体内で新たな臓器が生み出される加速進化症候群という病気を抱えたアーティストのソール(ヴィゴモーンテンセン)は、パートナーのカプリース(レアセドゥ)とともに、臓器にタトゥーを施して摘出するというショーを披露し、大きな注目と人気を集めていた。しかし、人類の誤った進化と暴走を監視する政府は、臓器登録所を設立し、ソールは政府から強い関心を持たれる存在となっていた。そんな彼のもとに、生前プラスチックを食べていたという遺体が持ち込まれる。(作品情報 引用)



エグい映像も多いけど近未来はこうなのか?という想像をかき立てる作品だ。映像のレベルが高い。
いきなり子どもを殺す場面はあるけれど、近未来に戦争が起きたり殺しあったりするストーリーではない。その方がいい。ロボットのような手術装置がたやすく解剖をしてしまう。自動車が自動運転する世界が間近となってきたのと同様に、手術装置が実現するのもそんなに遠い世界ではないだろう。医者がチェックリストをもとに手術してもミスがあるのに、AIの頭脳で精巧な機械が手術した方が確実な印象をうける。

臓器にタトゥなんてありえるけど、すごい発想だ。ショーでは手際よい手術装置とともに視覚的にエグい臓器も何度も映る。内臓の美的コンテストをやろうとする話がある。現代では考えられない。デイヴィッドクローネンバーグが想像する近未来は割とどぎつい。あらゆる内臓を人工的にしてしまうと人間が人間でなくなるなんてセリフも映画にある。人間の知能をAIが凌駕するシンギュラリティが実現する頃に人間の血流の中にカプセル(ナノロボット)を入れ込むことがレイカーツワイルの本には書いてある。レイカーツワイルの予言はこれまで次々と実現している。今、着々と科学の世界で進められているプロジェクトがこの映画の題材に組み込まれている気もする。


デイヴィッドクローネンバーグには近未来の出来事を予測する超能力者を描いた「デッドゾーン」という名作がある。薄気味悪いけど好きな作品である。クリストファーウォーケンの怪演が光る。ヴィゴモーンテンセンと組んだ「ヒストリーオブバイオレンス」は、日本で言えば高倉健が何度も演じているような話だ。もともとマフィアだった男が堅気になってひっそり生活していたが、暴漢を退治したことが記事になり旧知のマフィアがお礼参りに来るなんてストーリーは高倉健の十八番そのものだけど、おもしろい。そんな映画もあるけど、いつも大胆な発想で驚かせる。


それにしても、デイヴィッドクローネンバーグは80にして想像力豊かな監督である。これを1980年代に作れと言われても、そこまでのVFXなどの映像技術はない。ずいぶんと前からこの映画の構想を持っていたというが、こんな感じで自分が頭に描いたことを実際に映像にしてしまうところがすごい。ただ、異様な雰囲気は漂う。カンヌ映画祭では途中退出者も多かったらしい。映画を見る人は覚悟して映像を見た方が良い。


今回、ヴィゴモーンテンセンの存在自体は未来人だけど、人格的にはそんなに個性豊かな役柄ではなかった。ここでレアセドゥとクリステンステュワートの2人の美人女優をキーパーソンに持ってくるところが、配役の妙だ。レアセドゥもしっかり脱いで美しい裸体を見せてくれるし、クリステンステュワートの情感こもったキスシーンもさすがという感もある。エゲツないシーンだけで構成されているわけではなかった。

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