映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

シェルブールの雨傘  カトリーヌ・ドヌーブ

2009-08-13 20:14:48 | 映画(欧州映画含むアフリカ除くフランス )
カトリーヌ・ドヌーブ21歳の時の代表作。全編セリフが歌で語られるミュージカル。色彩設計が見事で、このころのフランスの他の作品のようなどんよりとしたムードがない。画像の美しさだけで存在感がある映画である。

シェルブールの町で傘屋を営む母と一緒に店で働く17才のカトリーヌドヌーブは、20才の自動車修理工の男と一緒と付き合っていた。しかし、男は召集令状が出てアルジェリア戦線に駆り出されてしまう。その時彼女は妊娠していた。美しいドヌーブを追う男は多く、その中の一人からの求愛に彼女の心は動くが。。。。

ストーリー自体はたいしたことはない。戦争に出征した後、彼ないし彼女が別の相手を探すというパターンは古今東西たくさん映画で語られてきた。悲愛が語られても、正直少しも心は動かされないし、涙どころではない。ここでは映画の醍醐味といえる画像の美しさがすべてである。もちろんミシェルルグランの有名な主題歌は美しいメロディであるし、音楽自体は悪くない。しかし、画像の美しさに比べると驚くほどのことではない。
まずは衣装が素敵である。そんなにデザインが奇抜なわけではない。ドヌーブが着るとすべて引き立つ。フィオーレ・イエローや薄めのサーモンピンク、パッションオレンジ、パステル系のブルーなど原色よりは若干落とした淡い色の衣装を使う。そこに鮮やかな色の傘がコントラストで使われる。室内の色はオフホワイトというべき色でそんなに強い色ではない。一部使われるグリーンやブルーの室内の木部の塗装もきれいである。雪の中のシーンもホワイトに対するコントラストがよく考えられていた美術であった。シトロエンがジャガーEタイプでよく使われたオリーブグリーン色だったのも印象的で、単なるバックだがセンスのよさを感じさせた。

若いころに劇場で見た。しかし、なぜかDVDが絶版だった。つい最近デジタル化で映画公開された。見損なって悔しい思いをしたが、すぐDVD出てありがたかった。フランス映画は白黒のどんよりしたものと色鮮やかなカラー作品と両方あり対照的である。最近では「アメリ」の美術に感心した。いい伝統である。この作品と同時期の「男と女」には美しいアヌークエーメが出ているが、比較するとこの作品の美術の素晴らしさは際立つ。

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