映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「告発小説、その結末」 ロマン・ポランスキー&エマニュエル・セニエ

2019-02-13 09:04:23 | 映画(フランス映画 )
映画「告発小説、その結末」は2017年のフランス映画である。


ロマン・ポランスキー監督の新作である。2011年日本公開の「ゴーストライター」の不安に満ち溢れた映像には魅せられた。これはその年のキネマ旬報外国映画ベストテンの1位である。「ゴーストライター」に比較すると、ひっそり公開されてあっという間に上映終了した「告発小説、その結末」であるが、個人的には映画終了まで不安心理に追われるサイコスリラー的映像に引き付けられた。

美貌のゴーストライターがベストセラー女流作家に近づいてくる。人付き合いの悪い作家がめずらしく心を許して付き合うが、次から次へと作家の周辺に悪いことが起きる。「シェイプ・オブ・ウォーター」でアカデミー賞作曲賞を受賞したアレクサンドラ・デスプラの不安を掻き立てる音楽でいやなムードを増長させる。美貌のエヴァ・グリーンのストーカーのような存在はその昔の「何がジェーンに起ったか?」でのベティデイヴィスの怪演を思わず連想してしまう。


心を病んで自殺した母親との生活を綴った私小説がベストセラーとなった後、スランプに陥っているデルフィーヌ(エマニュエル・セニエ)の前に、ある日、熱狂的なファンだと称する聡明で美しい女性エル(エヴァ・グリーン)が現れる。差出人不明の脅迫状にも苦しめられるデルフィーヌは、献身的に支えてくれて、本音で語り合えるエルに信頼を寄せていく。まもなくふたりは共同生活を始めるが、時折ヒステリックに豹変するエルは、不可解な言動でデルフィーヌを翻弄する。はたしてエルは何者なのか? なぜデルフィーヌに接近してきたのか? やがてエルの身の上話に衝撃を受けたデルフィーヌは、彼女の壮絶な人生を小説にしようと決意するが。。。(作品情報より)


最初にサイン会で読者の要望に応じるデルフィーヌは気分にすぐれず、サイン会を中座してしまうくらいむしろ人嫌い。それなのに愛読者だと言って近づいて来た謎の女エルと親しくなる。彼女は向かいのアパルトマンに住んでいるゴーストライターだという。夫とは死に別れたらしい。デルフィーヌの部屋に出入りするようになった後で、家主から追い出しを食らったとエルは同居をお願いする。そうすると、エルの行動はエスカレートする。PCのパスワードを巧みに聞き出し、デルフィーヌのクライアントや大切な友人たちにまで、頼みごとを断るメールを勝手に送りつけてしまうのだ。

1.エルの怖さ
第三者の他人がある家庭に入ってきて錯乱させるというのが、怖いストーカー映画のパターンである。「ゆりかごを揺らす手」の家政婦や「エスター」の同居する女の子などから感じる同居人の怖さは格別である。いずれも大暴れだ。この映画ではエヴァ・グリーン演じるエルが怖さを炸裂させる。007のボンドガールを演じたくらいの美貌を持っているだけに、悪女的ギャップに我々がびくつく。いったいどうなっていくのであろうかと?

主人公デルフィーヌを執筆に向かわせるため、すべての雑音を遮断するという名目を言ってはいる。映像に映る他の悪さはエルがやったとは特定できないが、すべてはエルと付き合うようになってからの出来事だ。デルフィーヌに来たメールに対して相手に失礼な返事を書いたり、フェイスブックのアカウントを勝手につくって炎上させたり現代的な悪さも見せる。


ここでのエヴァ・グリーンは過去に出演した作品とはちがった美貌を見せる。どぎつい化粧がやわらいでいる。インテリ的要素を見せるためか?主人公デルフィーヌが自分をとりまく困った出来事に当惑するのと対照に毅然とした顔を見せ、悪さを働く。いったいどういう結末にもっていくのか?そういう謎づくりがこの映画の面白さだ。

2.ロマン・ポランスキー組
英国首相も登場し政治的な要素も強かった「ゴーストライター」の題材とは全く違うんだけど、同一の撮影者や音楽構成者による不安を観客に感じさせる音と映像が類似している。個人的には好きだが、この映画って「ゴーストライター」の二番煎じ的な部分もある。それでも不朽の名作「チャイナタウン」「ローズマリーの赤ちゃん」といった一時代前の作品から映画に携わっているロマン・ポランスキーならでの観客誘導術は見事である。ここでは小技にこだわるヒッチコックというより観客を突然驚かせて楽しむブライアン・デ・パルマへの類似を感じる。


ここでは自分の妻のエマニュエル・セニエを起用する。もう大ベテランだ。映画「ナイトクローラー」で脚本家出身のダン・ギルロイ監督が自分の妻のレネ・ルッソをヒロイン的に使っていた。年とっても色っぽい女だが、さすがにババア。場末のスナックのママのようだ。ある意味似ているねえ。日本でいえば、やくざ映画時代の深作欣二監督が自分の妻の中原早苗を脇役で使ったのと同じかな。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 映画「クリード 炎の宿敵」マ... | トップ | 映画「七つの会議」野村萬斎 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

映画(フランス映画 )」カテゴリの最新記事