映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「絶唱浪曲ストーリー」港家小そめ

2023-07-08 04:53:58 | 映画(自分好みベスト100)
映画「絶唱浪曲ストーリー」を映画館で観てきました。


映画「絶唱浪曲ストーリー」浪曲師になろうと奮闘する女性の成長をドキュメンタリーにした映画である。これまで浪曲は自分には無縁の世界であった。何気なく観た予告編に心を揺さぶられて映画館に向う。


ちんどん屋稼業で渡り歩いていた港家こそめが、浪曲界の大ベテラン港家小柳の舞台に魅せられて弟子入りを志願する。しかし、港家小柳は持病が悪化し舞台に立てなくなる。こそめが名古屋にある小柳の自宅に見舞いに行く姿も映しながら、100歳直近の三味線弾きの曲師玉川祐子の元で修行する場面を追い、襲名披露の舞台に立つまでを描く。

感動しました。
本当に観てよかった。予想よりも胸に響くものがあった。

浪曲といえば、歌謡曲に転向した三波春夫や村田英雄を思い浮かべる。あとはドスの効いた声の玉川良一かな。いずれも昭和だ。全国で昔3000人いた浪曲師は今全国で100人に満たないという。実際に浪曲をまともに聞いたことがないし、行こうと思ったこともない。そんな自分でも予告編で浪曲師のお姐さんがうなる浪曲が心に響く

最初は、何人か登場人物が現れるけど、何が何だかわからない。浅草にある木馬亭で三味線をバックに先ほどまでヨタヨタしていた80すぎのおばあさんが浪曲を口演するのだ。これが素晴らしかった。港家小柳である。この凄さはぜひ映画館で体感して欲しい。文章に書けない圧倒的な迫力だ。(浪曲に字幕があったのは助かった)

女性が次々登場するわけだが、美女はいない。ごく普通の人たちである。主要登場人物は3人だ。80代と90代のおばあさんが2人いる。普段の姿は街でヨタヨタ歩く年寄りとかわらない。でも、舞台に上がった時はシャキッとするのだ。こんな長いセリフ、よく覚えているなと。それを年季の入った声で唱える。これは哲学者西田幾多郎が言う「純粋経験」の境地なのだ。

港家こそめ
女子美短大を出たあと20代からちんどん屋稼業をやっていたのに、40過ぎて港家小柳の浪曲に感動して弟子入りを志願する。


港家小柳
1928年佐賀生まれ、80歳を超えて現役の老浪曲師。大阪で修行時代を過ごし、自ら一座を率いて地方のどさ回りをしてきた。映画の前半で、舞台の上で年季の入った浪曲を口演する姿を映す。「水戸黄門尼崎の春」だ。しかし、身体にはガタが来ている。弟子のこそめも小柳が住む名古屋に見舞いに行くが、もう戻れない。


玉川祐子
1922年茨城笠間生まれ、映画の中ではもうすぐ100歳になる老曲師(三味線弾き)。故郷の奉公先の横のレコード屋から流れる浪曲に魅せられて18でこの世界に入る。もともと浪曲師を目指していたが、声質から曲師を勧められる。結婚離婚再婚と浪曲のような人生だ。名古屋に住む小柳が上京するときには玉川の家に泊まる。小柳の身体が限界に達して舞台を降りたときから、こそめの面倒をみる。(現在でも100歳超えて存命)


この作品はかなり長期にわたるドキュメンタリーだ。監督の川上アチカ港家小柳の芸に感動しなかったら、この作品は生まれていない。しかも、カメラで捉えている映像には歴代の浪曲師が信頼してきた名曲師沢村豊子 と港家小柳が組んだ圧巻の舞台だけでなく、衰えて舞台を降りるときの姿も映る。自分の行く末をさとり、病床からこそめにアドバイスを贈る。


また、港家こそめ玉川祐子の元で稽古に励む姿も映す。「たまには汚い声も出すのだ。いい声だけではダメだ。」と教える。味のある言葉だ。師弟関係を超越した心のふれあいに感動する。同時に川上アチカ監督粘り強さと、的確な編集を経て一般公開に持ち込んだ執念に感動する。拍手をおくりたい。もう一度観たい映画に久々に出あった。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 映画「小説家の映画」 ホン... | トップ | 映画「1秒先の彼」岡田将生&... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

映画(自分好みベスト100)」カテゴリの最新記事