映画とライフデザイン

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映画「孤狼の血」役所広司と松坂桃李

2018-05-23 20:01:13 | 映画(日本 2015年以降主演男性)
映画「孤狼の血」を映画館で観てきました。

昭和の広島を舞台にしたやくざ映画というと「仁義なき戦い」を連想する。しかも、白石和彌監督の一連の作品「日本で一番悪い奴ら」「彼女がその名を知らない鳥たち」はいずれも自分もお気に入りだ。今回は広島県の架空の街呉原市のマル暴担当刑事の2人役所広司と松坂桃李が主人公、それを江口洋介、真木よう子、石橋蓮司、ピエール瀧などが脇を固める。観てみると、予想以上におもしろい。ストーリーは単純そうで、そうはならない意外性がある。

昭和63年、広島の呉原では暴力団組織が街を牛耳り、新勢力である広島の巨大組織五十子会系「加古村組」と地元の「尾谷組」がにらみ合っていた。ある日、加古村組関連の金融会社の社員が行方不明になる。ベテラン刑事の刑事二課主任・大上章吾(役所広司)巡査部長は、そこに殺人事件の匂いをかぎ取り、新米の日岡秀一(松坂桃李)巡査と共に捜査に乗り出す。


いきなり養豚場が映し出され、若い男がリンチにあっている。豚のクソを食べさせられたり、ひどいもんだ。指を詰められたりした挙句殺される。これが金融会社の社員だ。その人間が行方不明になり、マル暴の2人が動き出しているが、怪しいと思われる組関係者はなかなか口を割らない。携帯電話のない黒電話で、捜査員たちがたむろう部屋では机でみんなタバコを吸っている。いかにも昭和らしい猥雑な雰囲気の中話が進んでいく。

1.「ベテランと未熟者」の対比を描く刑事もの
若い刑事とベテラン刑事がチームを組んで犯罪捜査にあたる。このパターンは古今東西の警察アクション映画の定番だ。日本でいえば、黒澤明監督「野良犬」志村喬と三船敏郎のコンビ、デンゼルワシントンが悪徳刑事を演じてアカデミー賞主演男優賞を受賞した「トレーニングデイ」が自分のお気に入りだ。いずれも「ベテランと未熟者」の対比を見事に描いている。


この映画はむしろ「トレーニングデイ」に近い。役所広司の悪徳刑事ぶりが、麻薬組織の元締めに入り込み、金や麻薬を平気で横領するデンゼルワシントンの腐敗刑事ぶりに通じる。銃を乱射し、イーサンホンク演じる若い刑事に平気で強い麻薬を吸わせる。ここではいつものデンゼル・ワシントンと違い徹底的にワルに徹していた。多分作者は影響を受けたのではないか?

2.役所広司の悪徳刑事ぶり
ヤクザから平気で金をもらったり、捜査のためには平気で放火したり家屋に不法侵入する。行方不明の男を探してくれとやってきた女を取調室でやってしまう。このパフォーマンスは深作欣二監督、菅原文太主演「県警対組織暴力」で、松方弘樹演じるやくざ組織の幹部とつるみ、若いヤクザを手玉に取る刑事ぶりを思わず連想してしまう。


県警本部から派遣された松坂桃李演じる若い刑事は、本当は役所広司演じる刑事を内偵するように本部の警視から指示されている。いい加減で腐敗に満ち溢れている大上刑事に嫌気がさし、何度も処分してくれと警視に訴えるが、大上刑事は泳がされたままだ。そして行為もエスカレートしていくのだ。ヤクザがペニスに入れ込んだ真珠を素っ裸にして抜き取ってしまうシーンには笑える。

それを演じる役所広司もうまい。深作欣二作品での菅原文太よりも悪い存在かもしれない。やりすぎという感じもあるが、ワルを演じる役所広司の存在が強烈なスパイスとなって効いてくるのだ。

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