映画とライフデザイン

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映画「あしたの少女」 ペ・ドゥナ

2023-08-30 09:01:27 | 映画(韓国映画)
映画「あしたの少女」を映画館で観てきました。


映画「あしたの少女」は韓国映画、人気女優ペ・ドゥナが傑作「私の少女」でも組んだチョンジュリ監督の作品である。ペ・ドゥナは「私の少女」刑事役を演じた後で、直近では是枝裕和監督の「ベイビーブローカー」でもねちっこい刑事役が印象的だった。どうした訳か今回も刑事役である。実質的な主演は高校生役のキム・シウンで韓国独特の実業高校の実習生制度が映画のテーマになる。韓国の実業高校では、高校生が単位の一環として実習生として数ヶ月企業に勤める制度があるようだ。実話を題材にして脚本化したようだが、かなり深刻な話で驚いた。

日本でもブラック企業なんて言葉があるけど、さすがに一時代前ならともかく、ここまでこの映画に映る韓国の労働事情ほどひどい話はないんじゃないかなあ。搾取もはなはだしい。韓国の暗部が浮き彫りになる。


高校生のソヒ(キム・シウン)は、担任教師から大手通信会社の下請けのコールセンター運営会社を紹介され、実習生として働き始める。しかし、会社は顧客の解約を阻止するために従業員同士の競争をあおり、契約書で保証された成果給も支払おうとしなかった。
そんなある日、指導役の若い男性チーム長が自殺したことにショックを受けたソヒは、自らも孤立して神経をすり減らしていく。やがて、凍てつく真冬の貯水池でソヒの遺体が発見され、捜査を担当する刑事・ユジン(ペ・ドゥナ)は、彼女を自死へと追いやった会社の労働環境を調べ、いくつもの根深い問題をはらんだ真実に迫っていくのだった…(作品情報 引用)


よくできている映画だと思う。しかも、わかりやすい。
半端ないリアル感で高校生のソヒを追う。元来うつの傾向がある子ではなく、飲み屋で自分たちの陰口をたたく男に絡んでいくくらいの元気のいい子だ。そんな高校生が理不尽な対応に呆れ果てて自死を選ぶ構図を丹念に描いていく。説明口調ではなく、いくつかのエピソードを重ねて韓国の実業高校生の実習制度の理不尽さを訴えていくのは監督のうまさであろう。現状の労働事情に対するチョンジュリ監督の強い抗議と主張を感じる脚本だ。

実習生だからといって、就業契約書どおり給与を支払わない。勤務するコールセンターにかかってきた顧客からの解約申出を説得して継続させるとポイントがついて、報奨金を支払う約束だ。しかし、主人公の給与明細には金額が反映されない。上司は何ヶ月かしたら支払うと言って支払わない。高校の先生のところへ行っても、そのまま仕事を続けろと言われる。ひょっとしたら企業と高校がグルなのかもしれない。次第に八方塞がりになっていく。


通常自殺だと判明すると、警察の捜査は中断する。しかし、警察の上司がもう解決している事件だから捜査を止めろと言っても、ペ・ドゥナ演じる刑事は労働管理に問題ありと徹底的に追及する。ここでのペ・ドゥナのパフォーマンスはカッコいい。胸がスッとする。高校に乗り込んで教頭がウダウダ言っていると、刑事のペ・ドゥナが殴ってしまう。さすがに日本映画だとこんなシーンはないだろうなあ。


この映画では、主人公の高校生が飲酒する場面が何度もでてくる。これにも驚いた。映画を見終わった後思わず調べてしまう。どうやら、韓国では19歳から飲酒可能だそうだ。しかも、それは数え年で、19歳になるときの1月1日から飲めるようだ。ただ、それにしてもちょっとフライング気味の飲酒ではと感じる。もっとも日本は最近未成年飲酒にきびしすぎる気がするけど。

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