映画とライフデザイン

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陽炎座  松田優作&大楠道代

2011-06-01 19:08:25 | 映画(日本 昭和49~63年)
『陽炎座』(かげろうざ)は鈴木清順監督の代表作の一つだ。前年の『ツィゴイネルワイゼン』の成功を受けて製作され「フィルム歌舞伎」と呼ばれた81年の作品。松田優作演じる新派の劇作家が、大楠道代演じる謎めいた女に翻弄される。



1926年の東京が舞台。新派の劇作家松崎こと松田優作は偶然に、美しい謎の女品子こと大楠道代と出会う。三度重なった奇妙な出会いを、松田はパトロンである玉脇こと中村嘉津雄に打ち明けた。ところが、広大な玉脇の邸宅の一室は、劇作家が謎の女と会った部屋とソックリ。謎の女はパトロンの妻ではと松田は恐怖に震えた。
数日後、主人公は品子とソックリの振袖姿のイネと出会う。イネは「玉脇の家内です」と言う。しかし、驚いたことに、イネは、主人公と出会う直前に息を引きとったという。主人公の下宿の女主人みおは、玉脇の過去について語った。玉脇はドイツ留学中、イレーネと結ばれ、彼女は日本に来てイネになりきろうとしたことなど。そして、イネは病気で入院、玉脇は品子を後添いにした。そこへ、品子から主人公へ手紙が来た。「金沢、夕月楼にてお待ち申し候。三度びお会いして、四度目の逢瀬は恋死なねばなりません……」金沢に向う主人公は列車の中で玉脇に出会った。彼は金沢へ亭主持ちの女と若い愛人の心中を見に行くと言う。金沢では不思議なことが相次ぐ。品子と死んだはずのイネこと楠田恵理子が舟に乗っていたかと思うと、やっとめぐり会えた品子は、手紙を出した覚えはないと語るが。。。。

レトロ基調の美術の色合いがカラフルだ。独特な映像美である。前作同様難解な物語の進行が見るものを困惑させる。でもまったく訳がわからないわけではない。大正末期のセレブ社会を映し出すだけでなく、遊郭や花柳界のあでやかな姿やジャズで踊りまくる場面、旅芝居の芸も登場させて見るものを楽しませる。衣装もあでやかだ。終盤にかけての色彩設計には驚く。



「太陽にほえろ」のジーパン刑事でさっそうと登場した松田優作は、我々少年たちに強烈なインパクトを与えた。学校では彼をまねる少年たちがあちらこちらにいた。殉死した回の演技はテレビ史上に残る名演技でコメディアンたちがモノマネしたものだ。この映画はそんなときから7年たっている。ワイルドで暴れまわる彼とは違った面を見せるので、若干戸惑う部分はある。しかし、この辺りから遺作の「ブラックレイン」までのキャリアは緩急入り混ぜお見事としか言いようにない。



大楠道代というのも強い個性を持つ女優である。この当時はまだ30代半ばで、本来の美貌を残している。今は水商売またはそれあがりのような初老の女性を演じると天下一品である。「人間失格」でレトロなバーのママを演じたが、まさに地で行っていた。作品リストをみると「顔」「赤目四十八瀧心中未遂」「空中庭園」と傑作にしか出ていない。というよりも彼女が出演すると、傑作になってしまうということなのかもしれない。

彼女はもともと大映の女優で、東映の藤純子に対抗して江波杏子とつぼを振っていた。自分は当時五反田にあった大映の映画館の前で「やくざ映画」の看板をじっとみていた。安田道代という女優の名前とその美貌が子供心に妙に印象に残った。でも子供の自分はその「やくざ映画」を見ることなく大映は倒産した。

陽炎座
大楠道代の妖艶ぶり


ツィゴイネルワイゼン
鈴木清順の美学を楽しむ

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