映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

青いパパイアの香り トラン・アン・ユン

2009-11-19 20:25:29 | 映画(アジア)
この映画を観るのは3回目である。「甘苦上海」で中国のけなげな少女たちの話をしたら、急にこの映画を思い出した。ベトナム映画である。お手伝いさんとして10歳のときに旧家に預けられた少女がその家でさまざまなことを学び、成長していく姿を描く。ベトナム映画の名監督トラン・アン・ユンがその名声を高めた作品で、美術も音楽もよく、しっとりと心にしみていく。

1951年のベトナムサイゴン、父を亡くして母と妹と暮らしていた主人公の少女は10歳にして、ある家の使用人として預けられる。その家族は夫婦の他に祖母、3人の息子がいた。まず同じように女中をしているおばさんに、料理や家事一般を仕込まれる。その家の主人は何度も家出したり、戻ったりしている。主人公が預けられて間もなくまた家を飛び出す。妻が布地屋で家計を支えているが、生活は苦しく、手持ちの骨董品を売って生活の足しにしている。家の中は非常に複雑だ。そんなあるとき、長男の友人が訪ねてきた。音楽家志望というその男性に幼心に一目ぼれした。
その後10年後に時は飛ぶ、生活も苦しいのでお暇を出された主人公は、その音楽家の家に家政婦としていくことになるが。。。。

美術が良い。セットの家は、彫刻のように細かい細工がはいった木の造作がしてあり、そこにアレンジされた植栽が美しい。いわゆるアジアンテイストのインテリアである。小さな昆虫や小動物が効果的に使われ、少年や少女にからんでいく。画像的にアジアの匂いがぷんぷんする。音楽もやさしい。

奉公に出てすぐ、年上のお手伝いさんから炒め物のコツを教わる。「野菜は強火で炒めて。。」とか「塩分が多いとご飯が欲しくなるから、おかずの量が少なくても大丈夫。。。」とか話が出てくる。この映画では、料理が一つの見せ所になっている。新しくお仕えする主人にだす料理も、パパイアで作った料理もみなおいしそうだ。楽園のような世界にも見える。

主人公の少女が本当にけなげな表情をしている。家の奥様は優しい女性。同じ年の娘を亡くしていて、お手伝いに来ている少女に強い愛情を見せる。このあたりのほのぼのさは小津安二郎の世界にもつながる。

物語は1951年と61年を写す。その後、あのおぞましいベトナム戦争が起こるのは、すぐ後だ。この子はいったいどうなったのであろう。
調べてみると、トラン・アン・ユン監督は戦争が始まるやいなやフランスに亡命したそうな。むごい戦争の事実を知らなかったせいか、もう一つの傑作「夏至」もほんのりとしている。もっともそこがいいけどね。その彼が村上春樹「ノルウェイの森」を撮っている最中という。どう仕上げるのか楽しみだ。



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