
新藤兼人監督の作品。小説に基づいている部分もあるが、戦後にまで話は進み、作家永井荷風の晩年を描く。津川雅彦は好演、何より墨田ユキが美しい。
結婚二度した後、気楽な独身生活をしている津川雅彦は、麻布の洋風住宅に住み、創作のかたわら、若い芸者の面倒をみてあげたり、銀座の女給宮崎美子に金をせびられたりしている。荷風の母親杉村春子には、理想の女性を捜し歩いているんだと言っている。
若い芸者が田舎に帰ると挨拶に来た後、荷風は花街で知り合った女性に似た美人が玉の井行きバスに乗っているのを見て、私娼の町玉の井にふらふら出かける。有名な「ぬけられます」の表示看板のある玉の井の中を歩いているときに雨が降ってきた。そのとき女郎墨田ユキに雨が降ってきたのでちょっと入れていってもらえません。と言われる。ついていくと一人の部屋にだどりつく。そこで意気投合する。美しい裸体を見せられるがその日は帰る。そして毎日のように通うようになるが。。。。
荷風の遊郭通いやレヴュー嬢を面倒みていた話は有名元慶応の教授、文化勲章受賞流行作家というプロフィールもあるが、資産家として死んだときにお金をたくさん残していたと言われる。まさに適役と言うべきか、この時代の津川雅彦はちょっとエロなおじさん役が実にうまい。杉村春子、新藤作品には欠かせない乙羽信子はじめ脇役陣は鉄壁 。
墨田ユキは単にきれいなだけでなく、情感あふれる演技はすばらしい。幼い顔をしているようで、きわどい色っぽさを見せる。 画像も美しく、脚本もよく、戦前遊郭の姿をうまく描いた傑作だと思う。