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映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「オーバーフェンス」 オダギリジョー&蒼井優

2016-09-19 21:25:34 | 映画(自分好みベスト100)
映画「オーバーフェンス」を映画館で見てきました。「そこのみにて光り輝く」に続く函館出身で悲運にも自殺した佐藤泰志原作の映画化である。


呉美保監督、綾野剛主演「そこのみにて光輝く」は胸にしみる傑作であった。今回は「マイパックページ」、「苦役列車」山下敦弘監督がメガホンを取り、オダギリジョーの主演である。期待して映画館に向かったが、「そこのみにて光り輝く」ほどストーリーの浮き沈みは少ない。でも独特の後味はなんとも言えずよかった。

今年はなぜか函館に縁があり、6月と8月の2回函館に行った。昔は会社の事務所があったが、函館経済の衰退と同時に撤退。6月は同業者の重鎮たちと旅して、おいしい海の幸を楽しんだ。8月は家族で北海道新幹線に乗り連泊した。2年前にも旅したこともあり、函館の街に詳しくなってしまった。こうして函館の映像を見ると今まで以上に故郷のような親近感を覚える。

妻と別れ世捨て人のように故郷函館に帰った白岩(オダギリジョー)は、実家に顔を出そうとせず、失業保険を受けながら職業訓練校建築科に通い、大工になるための訓練を受けている。一癖も二癖もある同僚とも距離を置き、訓練校とアパートを往復するだけの生活を送っていた。ある日、同じく訓練校に通う代島(松田翔太)にキャバクラに連れていかれた彼は、聡という名の風変わりなホステス(蒼井優)と出会う。帰りがけ車で送ってくれた彼女に白岩は親近感をおぼえ、急速に2人は接近するのであるが。。。


蒼井優演じる聡は普通のキャバ嬢よりもかなり精神が不安定な女の子である。器用に付き合えないもどかしさを感情に表わす。オダギリ演じる白岩に何で別れたんだとしつこく聞く態度が、男性からすると、強烈でまわりくどい面倒くさい女性に見える。その感情の起伏の激しさをみせるところが映画の見どころだろう。それを受け止めるオダギリジョーの演技は落ち着いていて、男から見ると好感が持てる。でも何で泣きじゃくるんだろう。やさしさに胸を打たれたという設定かもしれないが、自分にはよくわからない。


⒈函館
市電が走る人口が30万弱から50万程度の都市の雰囲気って好きだ。ロケハンティングもうまく、何気なく市電が走るシーンを映像に組み込む。見事なカメラ構図だ。「そこのみにて光り輝く」が海岸線に沿っての映像だったのに対して、函館山のふもとの美しい坂や函館公園の遊園地、海を見るデッキなどを映像にとりいれているのもいい。


実際にこの映画に出ている飲み屋街を昼間に訪れると、さびれた感が強い。デパートなんかも同様のさびれ感だ。中国台湾からの観光客が急増すると同時に、北海道新幹線も函館まで通って経済的に落ちぶれた函館を観光で復興させるように見えるけど、まだまだだろう。ただ、この街は妙に相性が合う。

⒉印象に残るシーン
函館公園の中に遊園地や小さな動物園がある。そこを貸し切ってうまく映像化している。キャバ嬢の蒼井優は昼間は遊園地でバイトをしている設定だ。そこでオダギリジョーとケンカしたりくっついたりするが、なかなか味わいあるシーンもある。


また、蒼井優がめずらしく肌を見せる。実家の敷地内の離れに住んでいる。そこには風呂がないのか、昔式の台所で水道の水を身体にかけている。もちろん胸は見せないが、背中をあらわにする。今まで見たことがない。それ以外では、この映画はエロティックな雰囲気は少ない。あとは一癖も二癖もある訓練所の同僚を映しだす映像がいい感じだ。

⒊函館を舞台にした映画
高倉健主演の「居酒屋兆治」での倉庫街の映像が一番印象に残るが、日活映画では石原裕次郎と浅丘ルリコのコンビの「夕陽の丘」小林旭の出世作「ギターを持った渡り鳥」が先駆しているのではないだろうか。この映画でも函館の護国神社に向かう坂を映しだすが、50年以上も前になる「ギターを持った渡り鳥」でも同じ坂が映像に映し出される。


実に美しい函館の坂だ。今までの佐藤泰志作品と同様に人生に疲れ果てた男女をうつしだすので、裏函館というべきエリアの映像がこの映画でも出てくる。逆にその方がいい感じだ。

コメント
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