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映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

映画「工作 黒金星(ブラック・ビーナス)と呼ばれた男 」  

2020-02-11 14:03:42 | 韓国映画(2020年以降)
映画「工作 黒金星」は2019年公開の韓国映画

韓国と北朝鮮との裏外交の駆け引きに絡む工作員を描いた作品である。両国の隠密組織の対決を描くだけでない。国家政治に絡んで北朝鮮の将軍様金正日まで登場させるのでスケールは大きい。新しき世界コクソンアシュラと存在感を見せてきたファン・ジョンミンが北朝鮮の裏経済ルートに接近する工作員となり、対峙する北朝鮮の対外政策のドンである李所長をイ・ソンミンが演じる。これが冷静沈着な演技で北朝鮮が持つ独特の冷徹さが伝わる。

1990年代初頭の朝鮮半島は、北の核開発をめぐり緊張状態にあった。92年、軍人のパク・ソギョン(ファン・ジョンミン)は“黒金星”というコードネームを与えられ、国家安全企画部のチェ・ハクソン室長(チョ・ジヌン)からの指令で工作員として北への潜入を命じられる。事業家になりすまし、北京に駐在する北の対外経済委員会の所長リ・ミョンウン(イ・ソンミン)に接近しようとする。


1995年3月、パクが北京で対外経済委員会に近い人物と接触して半年が過ぎたころ、委員会が急遽現金を必要とする事態に陥り、金持ちの実業家としてマークされていたパクにリ所長本人から連絡が入る。食堂に呼び出されたパクは、現金の他に南の情報を渡すよう持ち掛けられる。リ所長の傍らにいた国家安全保衛部のチョン・ムテク課長(チュ・ジフン)が高圧的に軍事機密を要求してくる。パクはスパイになる気はないと拒絶する。チョンとの確執を南の企業と取引をしたいリ所長がたしなめ、改めてミレニアムホテルで会食することになる。

パクは北での広告撮影を提案し、所長はピョンヤンに掛け合い3日で結論を出すと約束する。外貨獲得の責任者であるリ所長の信頼を得たパクは、最高権力者の金正日との面会にこぎつける。

その後、1997年、大統領選に立候補した金大中が支持率1位を獲得する。民主派の金大中当選を阻止したい与党寄りの国家安全部と北朝鮮当局が裏取引すると、自分の工作活動が無意味になるのでパクは改めて自ら動くのであるが。。。

新しき世界で破天荒なヤクザ、コクソンで祈祷師、アシュラで悪徳市長を演じたファンジョンミンがここでも若干お調子者の男だ。工作員でありながら表の顔はビジネスの世界に生きているという設定である。軍をやめた後でビジネスを始めたあとに自己破産したところを工作員に仕立てられる設定だ。裏世界に生きるのは新しき世界とアシュラの役柄に近いかもしれない。それでも度胸だけはあるといった感じで、高圧的な北朝鮮幹部に拳銃を向けられて物怖じしない。


イソンミンがいい。北朝鮮というと、拉致被害者が帰ってきたときにいた付き添いの男たちの顔が目に浮かぶ。人相は悪い。日本や米国と対峙する北朝鮮外交幹部も容赦ない冷徹なイメージがある。その路線にはピッタリだ。


北朝鮮も核開発しているのに相当な金もいるだろうけど、一部の海外貿易以外は門戸を閉じている訳だからそうは外貨は入らないだろう。今もニュースで話題になるが怪しい金を求めるのは仕方ない。だから、韓国から来た貿易商に関心を持つ訳だ。ここで注目したのは北朝鮮を写した写真を取扱うエージェントだ。これを機に行き来があれば観光産業の隆盛にもつながる。外貨も入る。


実話が基とすると、こういう話には金正日が関心を持ちそうな気がする。しかも、金正日が秘宝というべき壺をたくさん持っている場面が出てくる。それを観光に関わるエージェントを通じて売りさばきたいなんて話はまんざらありえそうな話だ。もし、両国が軍事行動に至れば金正日の利権がパーになりかねないという予測にパクが持ち込むのがこの映画のポイントである。フィクションとあえて断っているが事実に近い話はあったのであろう。
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映画「パラサイト 半地下の家族」 ポン・ジュノ&ソン・ガンホ

2020-01-12 14:28:15 | 韓国映画(2020年以降)
映画「パラサイト 半地下の家族」を映画館で観てきました。

「殺人の追憶」の名コンビであるポン・ジュノとソン・ガンホが組んだ新作だというだけでも気にかかるが、カンヌ映画祭のパルムドール作品でもある。先週、週刊文春「シネマチャート」では全評者5点満点の25点をつけている。これには驚いた。何年ぶりであろうか?そこまでの評価の高さに早々と映画館に向かう。

先入観なしで観たが、これはすごい!
一寸先まで予想が立たないストーリー展開でハラハラドキドキしっぱなしである。
2020年早々に今年のベスト映画が決まってしまった感覚である。

過去に度々事業に失敗、仕事もないが楽天的な父キム・ギテク(ソン・ガンホ)。そんな甲斐性なしの夫に強くあたる母チュンスク(チャン・ヘジン)。大学受験に落ち続け、若さも能力も持て余している息子ギウ(チェ・ウシク)。美大を目指すが上手くいかず、予備校に通うお金もない娘ギジョン(パク・ソダム)。しがない内職で日々を繋ぐ彼らは、“ 半地下住宅”で 暮らす貧しい4人家族だ。


“半地下”の家は、暮らしにくい。窓を開ければ、路上で散布される消毒剤が入ってくる。電波が悪い。水圧が低いからトイレが家の一番高い位置に鎮座している。家族全員、ただただ“普通の暮らし”がしたい。
「僕の代わりに家庭教師をしないか?」受験経験は豊富だが学歴のないギウは、ある時、エリート大学生の友人から留学中の代打を頼まれる。“受験のプロ”のギウが向かった先は、IT企業の社長パク・ドンイク(イ・ソンギュン)一家が暮らす高台の大豪邸だった——。


パク一家の心を掴んだギウは、続いて妹のギジョンを家庭教師として紹介する。更に、妹のギジョンはある仕掛けをしていき…“半地下住宅”で暮らすキム一家と、“ 高台の豪邸”で暮らすパク一家。この相反する2つの家族が交差した先に、想像を遥かに超える衝撃の光景が広がっていく——。 (作品情報より)

この映画ほど、ネタバレしたくともできない映画はないだろう。
ビリー・ワイルダー監督の「情婦」アンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督の「悪魔のような女」など絶対に結末を語ってはいけませんといううたい文句の映画があった。いずれも最後に向けての逆転である。この映画の驚きは序盤戦から続く。中盤から終盤にかけては極めて短い時間の話なのに、波状攻撃のように我々を驚かせる。それでも途中までネタバレで追っていく。

1.英語の家庭教師の息子ギウ
何年浪人しても大学に行けない。警備員にも大卒が殺到する世の中なので仕事にもありつけない。そんな息子ギウにエリート校に通う友人が訪ねてきた。その彼から金持ち娘の女子高校生に英語の家庭教師をするピンチヒッターを頼まれた。


友人からはこれだけ浪人していれば英語くらい教えられるだろうと言われ、学校に行っているという証明書を偽造してバイト先の豪邸へ面接に向かう。証明書は紹介だということで母親は見もしなかったが、授業を一回聴かせてくれとテストされるもパフォーマンスが効いて無事合格。高額バイト料にありつける。そのときに絵心のある弟の美術の家庭教師を探してくれないとかと言われる。


2.美術の家庭教師の娘ギジョン
ギウは妹ギジョンをパク社長の息子の家庭教師にしようと思っても、もちろん正直には言わない。親類の知り合いにいい女性がいるとしかいいようにない。おもちゃだらけの広い子供部屋にいる息子のために雇われた美術の家庭教師は誰も長続きしない。ギジョンも母親の面談を受ける。ここでも予習が効いて母親をうまくたぶらかして無事合格。うまい具合に2人とも家庭教師になれたのだ。


ここで調子に乗り作戦を立てる。ある日、遅くまで家庭教師をした日にパク家の運転手がギジョンを送ってくれた。盛んに家まで送ると言っている運転手だったが、駅までにしてもらう。

そのとき、ギジョンは自分のパンティを脱いで座席のポケットに入れた。これってどういうことなんだろう?と映画を観ながら思ったが、意図があった。送迎で車に乗るパク社長にこのパンティを気づかせて、運転手が後部座席でよからぬことをしているということでクビにしてしまうということなのだ。そこで父ギテクが運転手として登場する。

3.あっという間にパク一家に入り込む父と母
パク社長の家には、設計した建築家が家主であるころからいる家政婦がいた。この家政婦は家事が苦手な奥様の代わりに家内のことは全部任されていた。しかし、家庭教師に入った2人から見るとうっとうしい。あるとき、この家政婦が桃にアレルギーを持っていることがわかった。そこで3人は作戦を立てる。家政婦の後ろを通るたびに桃の粉を振りまく。すると、アレルギー反応を起こし思わず咳をしてしまう。こっそりと奥様に結核ではないかといい、ゴミ箱に置いた赤く染まったティッシュを見せたりして、長年いた家政婦を追い込むのだ。


父ギテクは富裕層宅の家事をまかなう人や運転手を斡旋するいい事務所を知っていると車の送迎をしている際にパク社長に名刺を渡す。電話をすると、娘ギジョンのところに通じることになっていて、母チュンスクも家政婦として採用されるのだ。

寄生虫のように巧みにパク社長の家に入り込んだ4人は、パク社長一家がキャンプで出かけたとき、この大豪邸で酒盛りをする。手入れの行き届いた広い庭をみながらのひとときのいい時間だった。そんなときに玄関のインターフォンが鳴るのだ。誰なんだろう?ドキッとする4人。

もちろん、このままではこの映画は終わらないだろうと思っていた。何かあるだろうと。

でも、ここからのどんでん返しは見てのお楽しみである。まさにネタバレ厳禁の世界が続く。
緻密なストーリーを創作したポン・ジュノはじつにうまい。二転三転するだけでない。ここでオチになるのかな?と思ってもそれで終わらない。全く先を読ませない韓国クライムサスペンスらしい緊迫感のあるものとなる。

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映画「THE NET 網に囚われた男」 キムギドク

2017-01-10 05:37:14 | 韓国映画(2020年以降)
映画「THE NET 網に囚われた男」を映画館で見てきました。
韓国の奇才キムギドク監督の新作、ヘビー級のパンチをくらったような重さがある傑作である。


系統としてはキムギドクが製作にかかわった北朝鮮の工作員が一般家庭に潜んで活動するという話の「レッドファミリー」と同様に南北朝鮮問題をとりあげている。日本公開では「殺されたミンジュ」に続くが、その間に福島原発事件に関わる話の「STOP」という映画があるらしい。どうもそれは3月に日本公開のようだ。

韓国映画は最終的に「チェイサー」キムギドク監督作品「嘆きのピエタ」など重い題材で、救いようのない結末に流れることがある。これも同様で、南北関係がこうなっている以上結末がハッピーになりにくい。途中どうなるのかハラハラすると同時に、やるせない感じを思った。映画館で鑑賞している周辺の女性はみんな途中からハンカチで目を押え泣いていた。

北朝鮮の寒村で、漁師ナム・チョル(リュ・スンボム)は妻(イ・ウヌ)子と共に貧しくも平穏な日々を送る.その朝も、唯一の財産である小さなモーターボートで漁に出るが、魚網がエンジンに絡まりボートが故障。チョルは意に反して、韓国側に流されてしまう。


韓国の警察に拘束された彼は、身に覚えのないスパイ容疑で、取調官(キム・ヨンミン)から執拗で残忍な尋問を受けることに。一方、チョルの監視役に就いた青年警護官オ・ジヌ(イ・ウォングン)は、家族の元に帰りたいというチョルの切実な思いを知り、次第にその潔白を信じるようになる。そんな時、やはりスパイ容疑で捕えられた男が、チョルにソウルにいる娘への伝言を託して、自ら舌を噛み切り息絶える。やがて、チョルを泳がせようという方針から、物質文明を極め人々が自由に闊歩する、ソウルの繁華街に放置される。街を彷徨う彼は、家族を養い弟を大学に入れるために身を売る若い女性と出会い、経済的繁栄の陰に隠されたダークサイドに気付く。何とか探し出したかの男の娘に伝言を告げ、ジヌが待つ場所に戻るチョル。


ところが、街中のチョルの姿を映した映像が北に流れ、南北関係の悪化を懸念した韓国当局は、チョルを北朝鮮に送還する。資本主義の誘惑を退け、晴れて祖国に帰って来たチョル。だが、彼を待ち受けていたのはいっそう苛酷な運命だった。(作品情報引用)


以下ネタバレありご注意

1.南北の対立
キムギドク「葛藤を抱える韓国と北朝鮮、その2つの国家のなかでひとりの男が苦痛を受け、非情な運命にさらされていく。状況設定がすでに残酷で恐ろしいもの。」
(作品情報引用)としている。本当につらい立場だ。まったく本意でなく国境を渡ってしまうと、脱北者のレッテルを張られてしまう。


主人公は北朝鮮よりも発展しているソウルの町を見るまいと目をつぶる。この設定は日本ではないが、もし先の大戦後ソ連の北海道支配を当時のトルーマン大統領とマッカーサー元帥が阻止しなかったら、現状の北方領土問題でもわかる通り朝鮮半島と同じような状況となったかもしれない。アメリカには感謝しなければならない。

2.公安当局の取り調べ
南北の公安当局それぞれに主人公は取り調べを受ける。南側の取り調べには反抗的な態度をとり、暴力もふるう主人公が一転自国の取調官にはいっさい逆らえないのが印象的だ。ご存じのように北朝鮮の幹部が将軍様の逆鱗に触れ、次々射殺されているのは日本でも報道されている。

それでもキムギドクは南北ほぼ同じような手法で取り調べているように描く。
それぞれの国を舞台にした取調室の光景は印象的だ。ナムチョルを尋問する両国の取調官たちが、まるで合わせ鏡のような態度をとることについて「どちらの国の人間にしろ、権威主義的で攻撃的、卑怯な側面を見せたかった」と述べ「シナリオ執筆段階から意識していたこと」とキムギドクは告白。(キムギドクインタビューより)
いずれも背後から話しかけるような設定で意識的にしている。

南側の取締官が暴力的で何としてでも主人公をスパイに仕立てて自分の手柄にしようというところや南側の責任者が失敗を恐れて強引にスパイに仕立てるのを抑え、マスコミにも注意を払うところが印象的だ。同時に南北両国の取調官にそれぞれ不正がある面を強調する。

3.リュ・スンボムとイ・ウヌ
主人公チョルは映画を見はじめてすぐに以前見たことあることに気づく。「ベルリンファイル」での北朝鮮公安監視員と韓国版「容疑者Xの献身」での主人公の数学者役はいずれもよかった。特に数学者役は日本版が元来二枚目の堤真一を持ってきたのに対し、まさにネクラそのもので福山に対応する探偵役がいない中主人公を巧みに演じた。でもここでの主人公役は南北問題に挟まれ行き場所のない姿になりきっているし、うまい!


イ・ウヌ「メビウス」の一人二役が印象的だ。最初主人公の奥さんの顔を見て気づかなかった。最後にヌードになり乳房をみてアレあの時の?と感じたが、常連になりつつある。最後に向けてずいぶんと切ないシーンだよね。





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