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映画とライフデザイン

大好きな映画の感想、おいしい食べ物、本の話、素敵な街で感じたことなどつれづれなるままに歩きます。

小早川家の秋  小津安二郎

2009-03-01 20:48:58 | 映画(日本 昭和35年~49年)
小津作品ではめずらしく関西が舞台、同じ関西舞台の成瀬巳喜男「めし」のようにはいろんな風景を見せるわけではない。京都の手の込んだ格子の多い和風建築の家をみせて関西らしさを出す。東宝に遠征した作品で、当時の東宝のオールスターがそろっている。ローアングル切り返しはいつもどおり。

原節子は造り酒屋の未亡人、大旦那の中村鴈治郎は健在だが、実務は妹新珠三千代とその婿さん小林桂樹が取り仕切っている。未亡人になって6年たっているので、鴈治郎の義弟加東大介が取引先の鉄工所の社長森繁久弥を紹介しようとしている。
森繁は原に一目ぼれだが、原は関心を持たない。もう一人の妹司葉子にも縁談がくるが、同僚の宝田明に心をよせている。しかし、宝田は札幌に転勤してしまう。
そんなころ大旦那鴈治郎は外出がちである。実は京都祇園に昔の恋人だった浪花千栄子がいて、そこに出入りをしている。そのことがわかり娘新珠は怒るが。。。。

ほのぼのとした流れはいつもどおり。鴈治郎、新珠三千代、浪花千栄子の関西人がちゃんとした関西弁を話すので不自然さはない。鳥取出身の司葉子の関西弁もまともである。森繁は登場場面がバーのシーンだけでここでは存在感を出さない。

小津作品で私が一番好きな「浮草」でも抜群の演技を見せている中村鴈治郎がここでも抜群である。いわゆる関西人らしいあくの強さがにじみ出る演技である。造り酒屋の遊び人の大旦那を巧妙に演じる。鴈治郎と浪花千栄子がいく競輪場のシーンが出てくる。画面に西大寺と出ていたので奈良競輪場ではなかろうか?「お茶漬けの味」でも後楽園競輪が出てくる。小津は競輪が好きだったのかな?
新珠三千代は当時31才小津の切り返しショットが一番映えているのが彼女である。聞くところによれば、相当小津は気に入ったと見える。関西弁もきれいだし、並み居る女性軍の中で一番の存在感をだしている。
原節子は41才この作品あたりで女優業を卒業としているみたいだ。確かに美しいが、今の41才の女性に比較するとちょっと上に見える感じもする。お上品な話し方は最近の女性にはない品性を感じる。

平均プラスアルファというところかな?
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乱れ雲  加山雄三

2009-03-01 06:18:42 | 映画(日本 昭和35年~49年)
成瀬巳喜男の最後の作品である。
「君といつまでも」を歌った直後の当代きっての大スター加山雄三と東宝の看板美人女優司葉子でロマンス映画をとる。東京のロケから一転青森へとロケを移す。

通産省の役人の妻司葉子は、夫の海外転勤に喜んでいたのもつかの間、出張先の箱根で夫が交通事故死をとげる。その加害者が商事会社に勤める加山雄三である。
司は妊娠中だったにもかかわらず、夫の実家より離籍の申し出を受け、子供をおろす。加山は慰謝料の仕送りを始めるが、司が故郷の十和田湖に帰るのでこれ以上は不要といわれる。そんなとき加山は左遷され、青森の出張所へと異動する。
そして二人は青森で再会する。。。。。

同じ成瀬巳喜男だが、「乱れる」の凄みと比較するとちょっと期待はずれかも?
脚本が非常に不自然であること、司の演技が今ひとつうまくないことのせいだろうか?今だったら交通事故の死傷事故を起こしたら、会社にはいられないと思う。
しかも、劇中ではパンクでハンドル操作を間違ったと不可避の事故ということで無罪の判決が出ている。司が夫の実家より離籍の申し出を受けてそれを受けるという話も奇妙。これらは実に不自然だ。
司と加山が愛し合うようになるのも不思議だし、せっかくの最終作もちょっとどうかと思う。
しかし、脇役陣はいい。司の姉役の森光子、草笛光子、その夫藤木悠、旅館経営の森光子の情夫加東大介が芸達者振りを発揮している。それだけに司葉子の大根役者振りが際立ってしまう。

この時代は五社協定があって、俳優の所属意識がきわめて強かった。この当時の東宝は独特のハイソなムードを持っていたと思う。司葉子もその典型だし、姉役の草笛光子もいかにも東宝らしい。成城にスタジオがあったころで、東京に暮らしている風景で成城、砧の住宅街の風景が出てくる。これはいい。
また十和田湖の風景も観光したような気分にさせてくれる。

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座頭市物語  勝新太郎

2009-02-26 20:51:03 | 映画(日本 昭和35年~49年)
その後26作も続く座頭市の第一作である。
小さいころ五反田の大映で座頭市を見た記憶があるが、これかどうかはわからない。勝新太郎もまだ若かったけれど、すごい迫力だ。剣の扱いがちがう。

目くらの座頭市は昔ひょんなことで知り合った親分を訪ねてくる。
その町は二つのやくざ勢力がしのぎを削っている。映画「用心棒」のような設定。
やくざの身内に目くらだと最初は馬鹿にされるが、座頭市の剣の実力を目にして一目置かれる。
そんな時反対勢力の用心棒天知茂と釣り場で一緒になる。座頭市と天知は気が合い杯をかわすが、やがて両方の勢力の対決の中に巻き込まれていく。。。

のちにテレビ朝日の「非情のライセンス」で渋みを発揮する天知茂もまだ若い。「明智小五郎」もよかったなあ。うまい歌ではないが「昭和ブルース」が渋すぎた。
確か新東宝所属だった気がするので、この作品は移ったばかりか?
本当は対決するはずではなかった二人が斬りあうシーンは見ものである。

大映は映画の斜陽と放漫経営でつぶれてしまうが、初期の勝新、市川雷蔵が描く、東映時代劇と比較すると暗めの時代劇が好きだ。女性も若尾文子、直後に離れるが山本富士子と色気をむんむんさせる美人が目立つ。

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女の中にいる他人  小林桂樹

2009-02-15 06:55:09 | 映画(日本 昭和35年~49年)
成瀬巳喜男の作品
ミステリータッチで描く。昭和40年の東京横浜が舞台である。

出版社の管理職小林桂樹と設計事務所を経営する三橋達也は親友同士。二人で酒を飲んでいるとき、三橋が妻の親友に呼び出される。行くと妻若林映子が殺されていた。犯人探しに警察も動くがつかまらない。そんな時三橋は妻の親友草笛光子の訪問を受け、葬儀の際会った三橋の親友小林が以前若林と一緒にいるのを見たことがあるといわれる。三橋は軽い疑念を抱くが、まさかとそれ以上には捉えない。
小林はノイローゼ気味になっていた。そして妻の新珠三千代に実は若林映子と付き合っていたと告白する。新珠はショックを受けるが、もう死んでいるからと気を取り直す。それでも気になる小林は仕事が手がつかず旅に出る。途中から新珠を呼び出し楽しいひと時を過ごすが。。。。。。

小林桂樹が殺人犯人だというのはすぐわかる。しかし、この映画の肝はその犯人探しではなく、小林とその妻新珠三千代の心の中の葛藤がテーマである。
画像的には驚いたときのアップの表情がポイント。前作「乱れる」での高峰秀子のアップもポイントであるが、ヒッチコックの「サイコ」ばりに撮影の手法で脅威の表情を強調する。新珠三千代も美しく、そのアップに十分耐えられる。「細腕繁盛記」をテレビでやり始める前である。

あとは殺される若林映子が思いっきり小悪魔的表情を見せる。「007は二度死ぬ」でボンドガールを演じる。あの時も殺されてしまうが、美しさの絶頂の時期なのであろう。ゾクゾクするような色っぽさである。それも見ものであった。
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氾濫  伊藤整

2009-02-11 20:21:56 | 映画(日本 昭和35年~49年)
伊藤整の名作の映画化
ここしばらく伊藤整の小説が書店に文庫本として売っているのを見たことがない。高校の授業で取り上げられていたし、チャタレー夫人の恋人のわいせつ裁判はあまりに有名。「女性に関する十二章」はものすごい大ベストセラーだ。昔は新潮文庫にたくさんあったのに、時代を感じる。
この小説は非常に重厚感があり、恋愛小説としてだけでなく経済小説風にも読める名作だ。

増村保造、若尾文子の名コンビだが、主人公を演ずるのは佐分利信、ただ不思議なことにクレジットでは佐分利が脇役とも言うべき順番で出てくる。
これは永田雅一社長の意向か?
でもいかにも佐分利らしい名演である。

主人公は化学会社の重役。単なる一研究者だったのが、接着剤を研究して著名な賞を受賞する。同時に彼の研究の成果で多大なる利益をあげて取締役に昇進した。
もともと質素な生活をしていた主人公は、会社から多額の報奨金を受け取り、家を建て、家族の生活も一変する。邸宅には妻や娘のお客がたくさんきて派手な生活に変わる。
妻沢村貞子は娘のピアノ教師船越英二に誘惑されたり、娘の若尾文子を貧乏研究者川崎敬三が追いかける。主人公は昔工場の勤労に駆り出されていた左幸子の突然の訪問をうけ次第に魅かれていく

金を突然手にしたときの生活の変化と、金に渦巻く人の流れを説く原作を基にしている。ただエンディングはちょっと小説と変えている、映画のほうがどつぼにはまっている感じだ。

渡部昇一の「知的生活の方法」に「氾濫」の主人公の話が出てくる。
映画では触れられていないが、主人公は接着剤に関するあらゆる文献を20年間カード化し地道に研究していた。推計学すなわち統計学の手法が進歩したときにそれを利用して論文を書いたという伊藤整の原作のニュアンスを知的生活の見本のように記していたのが印象的だった。

絶版になっているが、家には大切にとっている本がある。
読み返そう!
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乱れる  高峰秀子&加山雄三

2009-02-01 16:28:23 | 映画(日本 昭和35年~49年)
映画が終了する瞬間、背筋がぞっとした。
たくさん映画見ているけど、こんなにゾクゾクすることはそうそうない。
エンディングが鮮烈だった。

「乱れる」は成瀬巳喜男監督の晩年の作品である。
東宝映画で相手役に加山雄三が起用されるが、高峰秀子がここでもいい。

時は昭和38年静岡清水の商店街で酒屋を営む高峰秀子は戦争未亡人、夫の母三益愛子と夫の弟加山雄三と一緒に暮らす。彼女は戦後バラックでスタートした酒屋を大きくしたが、最近は近くにできたスーパーの影響で売り上げも伸び悩み。近くの商店街の店もスーパーに客を奪われている。
加山は大学を出て就職したが、辞めて静岡に戻ってきた。毎日酒を飲んだり、近くの商店主と麻雀をしたりしてぶらぶらしている。
そんな時加山の姉草笛光子は高峰の縁談を持ってくるが高峰は乗り気でない。
これも草笛の主人と加山を経営者にして、現在の酒屋の場所にスーパーの計画をたくらんでいるからだ。この話を聞いて加山は高峰を新会社の役員じゃなきゃいやだという。実は11才下の義弟加山はずっと高峰に思いを寄せていたのであった。
あるときその思いを高峰に告白するが、高峰は拒絶する。。。。。

ストーリーは淡々と展開していくが、途中でいくつかの谷を作る。
主人公高峰の感覚は現代の感覚とは違う女性である。お嫁に行った先で主人が死んだあともずっとご奉公するような女性は現代では考えられないであろう。高峰らしい落ち着いた振る舞い、話し方がいい。ラストの表情もすごくいい。この映画では普段に着物を着ることが多い。ここに一時代前の感覚がある。三益愛子も明治の女といったお母さんをそれらしく演ずる。加山雄三もいつものブルジョアのにおいが抑えられ、できの悪い酒屋の息子を演じる。ダメ男の役ってあまりないのでは?小姑草笛光子も小姑らしいいやらしさがでていていい。

清水駅をでて東京を経由して東北に高峰が向かうシーンで、昔の東海道線が出てくる。なつかしい。母のふるさと静岡に行くときずいぶんとお世話になったからだ。
新幹線は国に大きな進歩をもたらしたが、映画だけをとってみると、新幹線以前の映画における列車の描写の方が味があっていいと思う。
停車駅で加山雄三がそばをすするシーンがある。こういうことも昔はできた。
同じ高峰秀子がでる「張り込み」の東海道線から九州に向かうシーン、黒澤映画の「天国と地獄」は新幹線ができる寸前のこだま号である。

成瀬の映画は時折見せるロケのシーンが非常に味がある。ここでも静岡清水の町並み、東北山形の銀山温泉いずれも素敵に撮っていた。成瀬の映画では「流れる」が一番と思っていたがこれが上回るようだ。



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娘の文化祭見学とキューポラのある街

2008-09-05 22:14:24 | 映画(日本 昭和35年~49年)
家に帰ったら、娘が高校の文化祭を見に行く話をしていた。

まだ中学一年生である。女の子は早熟なのか?
自分が中一の時は考えもしなかった。
私は中学三年になって初めて高校の文化祭を見に行った。慶応高校の文化祭に行って、校舎の中を戸惑いながら歩いていた気がする。占いをやってもらったとき、ドキドキした。
今思うとそれまでトランプ占いなんてやってもらったことなかった。
また、慶応女子高校の学生とマンドリン?を仲良くやっている姿を見ていて良いなあと思った気がする。青春っていいなあと感じた想い出だ。

娘が行くのは昔からの浦和の名門公立女子高だ。
女の子の仲間同士4人くらいと自転車に乗っていくといっていた。妻は危ないといっていたが、約束だから行くのであろう。女子高はいじめがありそうだからいやだといって、娘は共学に行きたがる。それでいいのだと思う。
大学の同じクラスにその名門女子高出身の子がいた。おとなしい子であんまり話したことなかったが、埼玉の銀行へ就職した。昨年その銀行の役員さんと話す機会があって、彼女どうしているかと聞いたら、まだ独身でその銀行にお勤めしているとのことだった。埼玉の名門から名門へとわたっていまだ独身の人も多いんだろうなあ。そんな話を娘にしたら、やっぱりなあといっていたけど、人それぞれでしょう。

「キューポラのある街」という吉永小百合の代表作といわれる映画がある。川口が舞台のその名を知っていても見たことない人の方が多いかもしれない。川口駅に近い貧民街に生まれた吉永小百合は、鋳物工場に勤める職人東野英治郎を父にもつが、父はけんかばかりして家は貧しい。母親も飲み屋で働いて家計を支え、吉永小百合はパチンコ屋の機材の裏にいる球出しのバイトを中学生だてらにしている。
勉強はできるんだけれども、修学旅行に行く金すら困る彼女は高校進学をしたいのだけれども家計を考えて戸惑う。
その時に浦和の名門女子高校が映画の場面に出てくる。吉永小百合が川口駅で「浦和」と言って切符を買う。そして学校に向かい本当は行きたい女子高の校庭を眺める。場面では女子学生が仲良く体操をしていたシーンが印象に残る。本当にせつないシーンである。結局映画の中では、小百合は昼は仕事して夜は定時制という道に進む。
鋳物工場の社長の娘のところに勉強教えに行くくらい学力あるのにままならない彼女は、父親の職転を手伝おうとするが、「巨人の星」の星一徹がちゃぶ台をひっくり返すように荒れくれって父は言うことを聞かない。八方塞である。

そんなせつない姿は今はあまりないと思う。
娘の話を聞いてあの映画が目に浮かんだ。在日朝鮮人の問題も取り上げられていて、船に乗って北鮮に帰る人たちの姿も出てくる。川口駅前で大勢に送られた帰国者の姿も昔は多かったのであろう。今の川口駅前は近代化されて、あの面影はラストシーンで吉永小百合が走り回る陸橋以外見当たらない。。。。。





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長谷川一夫  雪之丞変化

2008-08-03 11:24:49 | 映画(日本 昭和35年~49年)
昔五反田駅から御殿山へ向かう通り沿いに大映の映画館があった。
目黒川をわたってすぐの東映とともによく父母と一緒に映画を見に行った。
時代劇が中心だった。市川雷蔵のファンだった。
大映倒産前の最後はガメラシリーズを見た気がする。

でもこの映画を見た記憶はない。
ずっと大人になってから銀座の名画座で雪之丞変化をみた。印象深い映画だった。

久しぶりに見たけど、ストーリーの詳細は忘れていた。見直してみると改めてすばらしい傑作であることがわかる。天保時代(1830年代)上方の人気役者中村雪之丞こと長谷川一夫が江戸で舞台を演じることになる。東へ来たのはそれだけでなく、幼少時長崎にいたときの親の敵をはらす目的もある。敵役を中村雁治郎が演ずる。人気役者だけに向こうからひいきの声がかかり接触をする。そこに女すり山本富士子、剣のライバル船越英二、将軍の寵愛をうけている若尾文子などが絡みストーリーが展開する。
役者が揃っているだけあって、皆の演技のレベルが非常に高い。長谷川一夫演ずる妖艶な雪之丞は恐ろしいムードをかもし出している。撮影のテクニックもうまく、暗いムードが江戸の夜の恐ろしさを的確に表現している。また、山本富士子、若尾文子の二人が実に美しい。スパイスが効きすぎるくらい効いてレベルが高い。
音楽は芥川也寸志であるが、そのすばらしい基調の音楽にあわせて、いくつかの場面でジャズが流れる。これがこの映画の暗いムードを盛り上げる。

今年の映画検定2級の試験で、写真を見せてこれは誰という問題があったが、長谷川一夫を当てさせる問題があった。点取り問題だと思ったが、知らない人もいるんだろうなあ。。。2級合格を助けてくれた一点である。
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