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131226 百田尚樹の処女作、「永遠の0」読了、作家の構想力に感嘆!

2013年12月26日 | 辛口ひとりごと

「海賊と呼ばれた男」以来2冊目の百田直樹氏の小説「永遠の0」を読了。前者は書店担当者が選んだ本屋大賞、後者は長い文庫本の歴史の中で最高の売り上げを達成した本との新聞での紹介記事をみて購入。氏は私より11歳年下の57歳、同志社中退、放送作家として活躍という経歴。読者や視聴者をぐいぐいひきこんでゆく構想力は大したもの。限られた時間との勝負の中で最初の出だしが勝負。この本でもアメリカ人砲手の立場で日本海軍のゼロ戦(零式戦闘機)のすごさ、恐ろしさをプロローグ、エピローグで展開。プロローグで575ページの文庫の世界に引き込み、エピローグで主人公、神風特別攻撃隊で劇的に散った宮部久蔵の人間像を完結させる。

亡くなった無類の読書家だった児玉清氏が滂沱の涙を流しながら読み、宮部久蔵の人間像に感動したと解説で述べておられたが私は次の2点が印象に強く残った。

一つは現代にも通じる組織の理不尽さ、大学の成績が第一で決まる上に立つ人間の現場感覚欠如、偏った判断、それが第一線で苦闘する現場を殺す。二つはプロフェッショナルはブレナイ軸を持ち、外界に左右されない強い意志とその生きざまを通すための不断の学習、鍛錬をひとしれず徹底実践できる。

現役時代能力開発セミナーなどで零戦撃墜王で有名で「大空のサムライ」などの著書がある坂井三郎さんの話。飛行機の空中戦で勝つためのポイント、撃墜されないためのポイントは敵機の存在を芥子粒の段階で発見し勝つための優位ポイント、敵機の上方に位置する。そのために坂井氏は真昼間からねっ転がって星を発見する目の訓練をしたらしい。開戦当時世界一の戦闘力と航続力をもったゼロ戦は防御に弱い。人間重視の思想なき設計による打たれ弱さ、搭乗員の背中に防弾壁がなかった。そのためやられても片手でもすごいGのかかる戦闘機の操縦かんを操れる腕力を鍛える。片手懸垂を何回でもやれるよう鍛錬する。

まさに1億総玉砕、片道切符の戦時中で、あるいは軍の規律の中で愛する家族のために禁句の「生きて帰る」をゆるがぬ信念として貫いたことを同世代の孫の叔父である宮部久蔵の戦時中の同僚や部下とのインタビューを通じて明らかにされてゆく。当時の日本海軍のバカさ加減にいらつきながら読み進む。なぜそれほどの宮部久蔵が片道切符の特攻をなぜ志願したのか、そして終戦後の残された家族と生き残り組がどんな運命の横糸にからんでゆくのか劇的に展開される。

未読の方はぜひこの正月にでも読んでいただき、酒の酔いをさましてもらいたい。

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