ドイツに来るとき、飛行機の中で読もうと「日経WOMAN」を出発直前に買った。8月号だし、旅行の特集だった。ココロとカラダを解き放とう「いざ、リセットの旅へ」がキャッチ・フレーズだった。
「人生をプチ・リセット」ときたもんだ。自分の好きなカタチの旅に出て、上手にリフレッシュするという意味なんだろうが、「リセット」という言葉が気になる。ゲームが負けそうになったら、リセットして、「今のはなかったことにしてちょうだい。チャラにしよう。」というような意味にとれてしまうのだ。
人生、リセットなんてできない。旅に出ても、抱えている問題は、そのまま残っていて、当面は見ないことにしても、ほっておけることではない。いずれは、対峙しなければならない。ただ忙しい日常から抜け出すと、その問題を違った方向から、見ることができるということなんだろう。見えなかった問題の輪郭が明らかになり、少し心が軽くなることを、リフレッシュなり、リセットと言っているのだろう。でも私としては、断固「リセット」という言葉は使いたくない。
ドイツに夏に来ることは、ここ数年定例化しているが、この1ヶ月をひねり出すために、あとの11ヶ月の算段には、それなりに苦労している。それでもやっぱりこの長い夏休みは、贅沢なことだと自分でも承知している。
JTBの「旅」(今は新潮社に移った)の編集長だった岡田喜秋さんの「旅について」という古い本に接したのだが、そこに「旅とは、それを行う人の、心の変化ではなないか」と書かれてあった。
ドイツの旅は、私にとって何であろうか?主には、近しい人との再会であり、ある意味日常生活の延長でもあるが、旧交を暖め、友情を深める。自分のサイトを持ってからは、新しい人との出会いもある。
私にとって、旅は、仕事でもあった。一番好きなことを仕事に選んだ不幸というものを、骨の髄まで味わった。
昨日、ボンの親友と、日本人には、あまり知られていないEiffel山地のなだらかな丘陵をドライブした。さえぎるもののない、一面に黄色い畑が広がる田舎の風景を見ていると、心が静かに落ち着くのを感じた。穏やかに内省的な気持ちの流れというのを、確かに追っていけた。
日本のあわただしい生活のなかでは、ドイツの旅を想う気持ちは、つい萎えてしまう。しかし、ドイツに戻ってくると、想像力や好奇心がかきたてられる。ここを旅したい。
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