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明日の記憶

2006-11-01 17:51:07 | 映画&ドラマにハマル!

見たいと思っていたのに見逃していた若年性アルツハイマー病を取り扱った映画「明日の記憶」を、レンタルで借りて見た。

ハリウッド俳優になっちゃった渡辺謙さんが、主演に加え、プロデューサーにまでなっての熱の入れようとは聞いていたのだけど、病気になっていく過程が、リアルだった。

大事なミーティングに向かって、地下鉄の出口を出たとたん、ぱっと見知らぬ場所に見えてしまう、謙さんの蒼白な顔のバックで、細かくカット割りで、街の風景が駆け抜けていく。

なるほど、現実と折り合えなくなってくるって、こういう感じなのかと妙に納得した。映像って、俳優の演技と共に、絵で見せられるから、強いよね。

働き盛りのバリバリの広告会社の課長が、社会の舞台を下りざるを得ない。「こんな男でごめんな」と奥さんの前で泣きじゃくる。つらいことだ。でも泣かれる奥さんも、つらい。

夫を支える妻役の樋口可南子さんがいいわあ。「私がいます」って言ってあげるんだよね。映画の最後に、その奥さんを忘れてしまう場面が出てくる。目をはらして、それでも夫を、見る樋口さんの表情が、とても良かった。

その映画を見た直後、偶然実際に、若年性アルツハイマー病にかかった初老の夫と、それを支える妻のドキュメンタリーがあったので続けて見たが、現実は、ドラマを楽々としのいでしまっていた。

アルツハイマー病に関して、私は、誤解していた。直らない病気、重くなっていく。でも、進行には、個人差があるのだ。

会話が、まったくトンチンカンになるのでなくて、問いかけに応えることもできる。でも、ちょっと前のことが記憶できない。もちろん生活に支障も、不自由も出てくるが、一緒に暮らす人の配慮で、安心感を持って毎日が送れるという事実に、感動した。奥さんは、「これも、できなくなったね。とか主人が聞いてイヤだと思うことは、極力言わないようにしている」とインタビューで答えておられた。本当に出来た人だ。

このご主人の場合は、進行は極めて遅いいうことだったが、「おかあさん(奥さんのこと)は、忘れないでいたい。今は、まだそれが出来ているので、よかったと思っている。」

奥さんに頼っている笑顔は、子供のように邪気がない。奥さんも、頼られる人生に、きっと張りを感じていらっしゃるのだと思った。