明治時代、夏目漱石が大学の講師をしていた時、「 I love you.」の訳を学生に問うと、
「我、汝を愛す」と答えました。
けれど漱石は、「愛している」などと言わなくても、「月が綺麗ですね」とでも言っておけば、相手に伝わると講義しています。
このエピソードは有名ですが、出典は分かりません。
本来日本人は情緒を重んじ、直接的な言い方を避けてきました。
「愛している」とか「好きだ」なんて表現は明治時代には一般的ではなかったのでしょう。
そして女性は、その場の雰囲気や男性の態度で、何を言わんとしているかとか、相手の気持ちを十分に察してしまう特技があるのです。
更に古きよき言葉として、「慕う」「焦がれる」がありますよね。
けれど、今の若者が、「あなたをお慕い申しています。」なんて言ったものなら、大笑いされるのがオチです。
そこで私なら、「I love you.」は次のように表現します。
「貴方を大事に想っています。」
或いは、「ずーーっと貴方と一緒に居たい」
ちょっと相手に心配かける言葉としては、
「心のざわめきが抑えられない」 あたりでしょうか?
医者に行ったらと言われるかもしれませんが・・・
二葉亭四迷の
「(あなたの為なら)死んでもいい」といった
自暴自棄な台詞も面白いです。
話の方向が若干変わりますが、石坂洋次郎の「青い山脈」の恋文のエピソードはご存知でしょうか。
主人公が、好きな女性に「恋しい恋しい、新子様」とするべきところをイージーミスで
「変しい変しい、新子様」とやっちまったのです
(因みに「恋」の字は当時「戀」と表記しました。)
これは小説としては面白いで済みますが、実際のことならば、主人公は一生の不覚と
腹を掻っ捌いてしまいたい衝動に駆られるのでしょう。
くれぐれも恋文を手渡すときは、書く段階で、推敲に推敲を重ね、誤字脱字がないか丁寧に見直すことをお勧めします。