あまちゃんの カタコト中文日記

中国・杭州がえりのライター助手、日々のいろいろ。

大河ドラマ化希望〜 朝井まかて『類』

2021-02-22 | book
「類って なんぞや?」
よくわからず読み始めた。(例によってママちゃんに借りてきた本)

類は名前だ。森類(もり・るい)さんの類。
約500ページにもわたる、この本の主人公が森類である。
森類は明治44年、森林太郎すなわち森鴎外の末息子として生まれた。
日本人らしからぬ響きを持つ名だ。もっとも上の子供たちも同様である。
本の表紙にも「類 Louis」とあるように明らかに洋名を意識して名付けられたのだろう。
2つ上の姉が杏奴(あんぬ)、8つ上の姉は茉莉(まり)。21歳上の腹違いの兄は於菟(おと)だ。

物語は終始、類の目線で描かれる。
最初は”パッパ”こと森鴎外がまだ存命で、一家はこの上なく裕福な暮らしをしている。
類はパッパが大好き。パッパは庭で育てた草花の名前を教えてくれる。
母に叱られて泣いていても、ひとたびパッパに抱き上げられると叱られた悲しみが鎮まってくる。
だが、類が小学5年の時に鴎外は病死する。
ここから、物語が時代とともに動き出す。

これほどヘタレな坊ちゃんもめずらしい。
小学校では勉強についていけず(脳の検査を受けて異常なしと判明し、母を落胆させる)。
同級生にはいじめられ、姉・杏奴に守ってもらうことも多々。
中学の途中でついに中退してしまい、絵の勉強を始める。
絵の裸婦モデルに初恋をしたり、ともに絵の勉強をしていた姉・杏奴とパリに遊学したり。
そのあたりまでは父の遺産や著書の印税収入で暮らしていけたが。
類が所帯を持ち、その後 戦争で物のない時代になるにつれ、
経済的に厳しい現実が類を待ち受ける。
***
後半、類が文章を書き始める。
同人誌に加わり、ついに作家の仲間入りか⁉
しかし・・・
鴎外一家のあれやこれや、特に姉・茉莉のようすを赤裸々に書いたことが
茉莉だけでなく、一番仲が良かった杏奴の逆鱗に触れ、
類は姉2人から絶縁される。
これはきついな~と、類に同情してしまった。(すべて実話らしい)
当たり障りのない内容では読者が喜ばない、
身内だけが知っている「へぇ~」を書かないとね。
でも書かれた身内にしてみれば「やめてよ!」となる。
(こういうのはしがないライターでも あったりする...)

ぶ厚い本なので読むのに時間がかかったが、読んでいてとても心地いい。
(さすがは、直木賞をはじめ数多くの受賞歴がある作家さん)
まだ類の世界にどっぷり浸かっている。
これはぜひ大河ドラマでじっくり見たいような話だ。
打算も何もない、のほほんとした”類お坊ちゃま”を、さて誰が演じられるのか?
うーん、なかなか思いつきそうにない。
*おまけ*
読了後、うしろの方にこんなのを見つけ…

わぁ!と思わず感激。
(素敵な絵だね、少しモネっぽいけど)

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