『父親になる、父親をする 家族心理学の視点から』(岩波ブックレット 2010 柏木惠子)という本を読みました。
本の帯には、「『イクメン』をブームで終わらせないために男性による育児の意義を考える父親・母親のための基本書」とあります。以前、柏木さんの著書『子どもが育つ条件──家族心理学から考える』を読んでいたこともあり、興味を持って手に取りました。
なぜ、男性に育児が必要なのかを「そもそも論」から考える導入の書として、非常におもしろい切り口から書かれているのが印象的です。目次から内容を紹介すると、第1章の父親になること、父親をすることでは、「1 人間だからこそ必要な子育て」「2 子育てを可能にする人間の『心』」「3 養育するのは親だけではない」「4 『進化の産物』としての父親」「5 父親と母親は違うのか?」と話が展開されていきます。
笑いながら読んでしまったのは、「おとなを惹きつける赤ちゃんの『戦略』」。自力では何もできない赤ちゃんが絶対必要な他者を自分に引き寄せ、自分のために動いてくれるように行動する──息子とのことを考えながら読むと、たくさん思い当たることがあります。
◆社会的なものとしてとらえなおし、ルールある経済社会に
研究によると、赤ちゃんの状態や要求を敏感に察知して、それに応じた対応をしてくれる人に対して愛着をもつとされています。それは、母親に限らずです。
それは、赤ちゃんによって自分の要求や状況を敏感に察知してくれる応答的な人が必要であり、一人の人だけを頼りにしていては危険だということがあります。そのために、複数の人の力を活用し、それらに守られ、支えられて成長していく──赤ちゃんが社会的ネットワークをつくる能力を持っているとしています。こうしたネットワークは、「護送船団(コンボイ)」として、赤ちゃんを周囲で見守り、必要になれば援助の手を差し伸べる「重要な他者」群であると指摘をしています。
しかし、日本の父親はこの「コンボイ」に入れられていないというのです。もちろん、すべての父親がというわけではありませんが、「圏外」であるとしています。このおおもとには、歴史的な「家族」の問題なども検討されなければならないと思いますが、ここで私が指摘をしたいのは働き方の問題です。
子育て中のお父さんたちと話す機会がありますが、その働き方は朝5時台に出勤し、帰宅は夜11時すぎというケースも少なくなく、これでは子どもとかかわる時間をとることすらできないことが明らかです。日本の長時間過密労働の実態を抜きにして、父親の育児参加を考えることはできないといいたいと思います。
私とかかわりのあるお父さんたちは、積極的に子育てに参加をしたいと願ってやまない方々です。しかし、主体的な努力だけでは難しい問題が目の前にあるのが現実です。夜勤が多い方などはその典型です。統計では、父親の育児参加が多い国ほど、合計特殊出生率が高いとなっています。
「親をする」ことで自分も育つということが書かれていますが、これは私の実感でもあります。同時に「親になる、親をする」ことを、社会的なこととしてとらえなおし、あまりにもルールのない日本の現状を変え、ヨーロッパ諸国などで当たり前になっているルールある経済社会につくりかえていくことが必要です。
┏┓池川友一(日本共産党町田市議会議員)
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