今日の「お気に入り」は、山本夏彦さん(1915-2002)のコラム集から昨日の続きです。
「 そのことは新聞と各界名士の間に酷似していると既に書いた。戦前大新聞はあのけし粒大のルビを
廃したい意向で、医家の権威に意見を求めた、権威はルビは日本人の近眼の元凶だと口を揃えて言っ
た。こうしてルビを廃して何十年、近眼はふえるばかりである。戦前は小学生にはなかった近眼が今
はおびただしくある。
およそ権威の発言で迎合でないものはひとつもない。中国、北朝鮮べったりの時の発言は同じくべ
ったりだった。それでいて事ごとに言論の自由を言った、私はそれをべったりの自由と呼んでいる。
それならお前はどうだと言うなら、表むきは迎合に見せて、実は見る人が見れば分るように言いたい
ことを言うように心がけている。今も昔もない、戦時下であれ平和裡であれ言論は常に二重であるべ
きだと思っている。」
(山本夏彦著阿川佐和子編「『夏彦の写真コラム』傑作選2」新潮文庫 所収)
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