「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

2007・06・15

2007-06-15 08:30:00 | Weblog




今日の「お気に入り」は、山本夏彦さん(1915-2002)のコラム集から昨日の続きです。

 「 そのことは新聞と各界名士の間に酷似していると既に書いた。戦前大新聞はあのけし粒大のルビを

  廃したい意向で、医家の権威に意見を求めた、権威はルビは日本人の近眼の元凶だと口を揃えて言っ

  た。こうしてルビを廃して何十年、近眼はふえるばかりである。戦前は小学生にはなかった近眼が今

  はおびただしくある。

   およそ権威の発言で迎合でないものはひとつもない。中国、北朝鮮べったりの時の発言は同じくべ

  ったりだった。それでいて事ごとに言論の自由を言った、私はそれをべったりの自由と呼んでいる。

  それならお前はどうだと言うなら、表むきは迎合に見せて、実は見る人が見れば分るように言いたい

  ことを言うように心がけている。今も昔もない、戦時下であれ平和裡であれ言論は常に二重であるべ

  きだと思っている。」

 (山本夏彦著阿川佐和子編「『夏彦の写真コラム』傑作選2」新潮文庫 所収)
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