「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

2005・03・22

2005-03-22 07:00:00 | Weblog


 今日の「お気に入り」は、山本夏彦さん(1915-2002)のコラム集から。

 「 大衆社会は大衆に迎合する社会で、新聞雑誌はひたすら売れることを欲し
  テレビは見られることを欲するから、大ぜいが機嫌を損じることは言わない。
  また言えない。人民は悪をなし得ずなんぞと言って媚びる。」

 「 言論の自由は大ぜいと同じことを言う自由であり、大ぜいと共に罵る自由であり、
  罵らないものを『村八分』にする自由である
これが言論の自由なら、これまでも
  あったしこれからもあるだろう
。」

  (山本夏彦著「恋に似たもの」所収)

  某テレビ局と某IT企業の某ラジオ放送局買収を巡る騒動で利害関係者やそれが
 飯の種の政治家や付和雷同の俄かコメンテーターの間で繰り広げられている口パク
 パク芝居を見て思い出したコラムです。


 以下はおまけ。


 「『ロバは旅に出たところで、馬になって帰ってくるわけではない』と西諺はいう。
  何の学問も知識もないものが、海外に遊んでも得るところはないというほどのことで、
  むろん私のことだよ、と(私は)言う。」

 「子犬は親犬に孝行しない。それが自然で、ひとり人間だけが孝行したのは二千年来教え
  たからで、それが僅々三十年教えなくなったらこのていたらくである。」

 「 『愛する』という言葉を平気で口に出して言えるのは鈍感だからだ。」

 「 愛するが日本語になるには、まだ百年や二百年はかかる。」

 「 隠居とはむかしの人はうまいことを考えたものです。親は未練を断ち切って、家督を
  子に譲って以後いっさい口出しをしません。こうして十年たてば子は三十代になって、
  親が口出ししたくても今度は出せなくなって、自分は全き過去の人になったと知って
  安心して死ねるのです。」

  (山本夏彦著「つかぬことを言う」所収)


 「 いま生きている人、必ずしも生きてるわけじゃない。すでに死んだ人のほうがまざまざと
  生きていることがありますからね。生きてるつもりで、実は死んでる人でこの世
  はみちみちています
。」

  (山本夏彦著「夏彦・七平の十八番づくし」所収)
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 2005・03・21 | トップ | 2005・03・23 »
最新の画像もっと見る

Weblog」カテゴリの最新記事