「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

禅譲と世襲 Long Good-bye 2023・06・25

2023-06-25 05:02:00 | Weblog




   今日の「 お気に入り 」は 、最近読んで 、もろもろ 腑に落ちた論考 。

   社会学者 橋爪大三郎さん ( 1948年10月21日 - ) の「 北朝鮮の金王朝 」
  についての解説から 、備忘の為 、抜き書き 。

   引用はじめ 。  

  「 北朝鮮の金王朝を理解するには 、補助線がいくつか必要だ 。
   第一の補助線は 、儒教である 。

    中国は儒教の国だ 。朝鮮も 、儒教の国だ 。必死で中国を真似
   した 。科挙も採り入れた 。親族集団も儒教風 。ちっとも儒教
   風でない日本とは 、まるで違う 。

    儒教はいう 。最初の王は堯 。つぎが舜 、つぎが禹 。古典にあ
   る通り 、王たちは有能な部下を順に抜擢した 。禅譲である 。
    禅譲( 能力主義抜擢人事 )が儒教の理想だ 。
    そして禹は 、自分の子に王の位を譲った 。以下 、子から子
   に血縁で受け継ぐ 。世襲である 。こうして最初の王朝( 夏
   王朝 )が始まった 。世襲は 、儒教の実際である 。

    中国共産党政権は、毛沢東→華国鋒→トウ小平→江沢民→
   胡錦濤→習近平 、と抜擢人事でポストを引き継いだ 。禅譲
   である 。北朝鮮は 、金日成→金正日→金正恩 、親から子に 、
   ポストを受け継いだ 。世襲である 。
    マルクス・レーニン主義の原則とは関係ない 。でも 、儒教
   の原則には合っている
。」


  「 北朝鮮の独裁体制の 、本質は何だろう 。マルクス・レーニ
   ン主義ではない 。儒教の王朝か? 少し近いかもしれない 。
    日本の天皇制とも 、そっくりである

    北朝鮮の『 主体思想 』をつくった 黄長ヨプ は 、戦前の日本
   で教育を受けた 。朝鮮は 、1910年から1945年までの35年間 、
    大日本帝国の一部だった 。主体は国体の焼き直しだ 。金日
   成が 、『 天皇 』の抜けたあとにすっぽり収まっても不思議
   はない 。
    儒教の皇帝と 、日本の天皇制 。これを足して 2 で割ったの
   が金王朝だと考えると 、いろいろ説明がつく
。」


  「 天皇は『 万世一系 』で 、アマテラスや神武天皇と血がつな
   がっている 。金日成→金正日→金正恩 、は『 白頭山の血統 』
   だという 。神話にさかのぼるところが共通している 。儒教に
   はない特徴だ 。
    いっぽう金王朝は 、皇帝権力の要素もある 。天皇はふつう 、
   権力を直接ふるわない 。皇帝はふつう 、実際に権力をふるう 。
    金王朝を天皇制とみるなら 、言わば『 天皇親政 』だ 。天皇
   親政は 、戦前昭和の総力戦体制のキーワードだ 。北朝鮮は建
   国以来ずっと 、総力戦体制なのである 。」

  「 皇帝にも天皇にも似てはいるが 、要は独裁者である 。
    独裁は 、効率的である 。民主主義のややこしい意見調整や 、
   法の縛りは関係ない 。独裁は 、不安定である 。独裁者はなん
   でも決定するから 、どんな失敗も自分の責任になる 。部下の
   せいにして 、粛清する 。
    そして独裁者は 、うまく後継者に権力を引き継がないと 、体
   制が崩壊してしまう 。そして権力の継承のルールがない 。こ
   れがアキレス腱だ 。
    独裁体制の安定のためには 、後継者が決まっているとよい 。
   でもそう簡単ではない
。」


  「 北朝鮮の体制が続くカギは 、安全保障 。そのため核開発を
   進めてきた 。核弾頭を数十発製造し 、アメリカに届こうと
   いうミサイルも開発した 。あとは ,潜水艦搭載のSLBMが
   配備できれば 、万全だ 。もうアメリカの武力を恐れる必要
   はない 。核保有国として 、アメリカと対等に交渉できる 。


    もうひとつのカギは 、独裁を維持し 、『 白頭山の血統 』
   を守りぬくこと 。かつての日本風に言えば 、『 国体を守れ 』
   である 。金与正が後継者になった 。北朝鮮にはもう後がない

   ということだ 。
    金与正に男子がいるとして 、権力を継承させられそうにない 。
   『 白頭山の血統 』と言いにくいからだ 。この問題は日本の 、
   女系天皇を容認するかの議論と似ている 。女系は 、天皇制の
   伝統ではない 。でも 、そんなことを言っている場合ではない 。
    国民の合意があれば 、女性天皇 、そして女系天皇でもよい
   ではないか 。
    同じ理屈を 、北朝鮮の指導部も考えた 。金与正が後継者に
   なるとすれば 、そういう意味になる 。日本の女性天皇は 、
   国民の暖かい合意に包まれるだろう 。女性独裁者の金与正は 、
   暖かく迎えられるか疑問である 。
    独裁政権なるものは 、ひと握りの人びとの利権や特権のかた
   まりである 。多くの人びとがそれを支持しないと声をあげれ
   ば 、あっさり倒れる

    金与正は 、それでも政権を守ろうとする 、北朝鮮の切り札で
   ある 。でももう 、ほかに切り札は残っていないかもしれない
。」


   引用おわり 。

  ( ついでながらの
    筆者註:「 橋爪 大三郎( はしづめ だいさぶろう 、1948年10月21日 - )は 、
        日本の社会学者( 社会学修士 ) 。理論社会学 、宗教社会学 、
        現代社会論が専門 。大学院大学至善館教授 。東京工業大学
        名誉教授 。元東京工業大学世界文明センター副センター長 。
        神奈川県出身 。開成中学校・高等学校を経て 、東京大学文学部
        社会学科卒業 。東京大学大学院社会学研究科博士課程を単位
        取得退学してのち 、執筆活動を続けるかたわら 、言語研究会 、小室
        直樹ゼミナール等に参加 。言語を社会現象の根幹に位置づける言語派
        社会学の構想を展開する 。比較宗教学 、現代社会論 、現代アジア
        研究 、日本プレ近代思想研究なども手がける 。著書に 『 はじめての
        構造主義 』( 1988年 )、 『 世界がわかる宗教社会学入門 』
        ( 2001年 )、 『 戦争の社会学 』( 2016年 )など 。
        人 物
         参加していた全共闘で 、ベトナム反戦運動の一環として新宿駅の
        ターミナルを通過する貨物列車を足止めする騒動を起こしたのち 、
        逮捕されそうになるが 、逃げおおせた 。   ・・・ いいね!
        日本福音ルーテル教会の教会員( 信者・クリスチャン )であり 、
        福音ルーテル教会のイベント・講演会でしばしば講師を務めている 。 ・・・ いいね!
        大澤真幸との共著 『 ふしぎなキリスト教 』 は 新書大賞2012を受
        賞したが 、キリスト教研究者からは事実面の誤りを指摘されている 。
        経 歴
         1972年 東京大学文学部社会学科卒業
         1974年 東京大学大学院社会学研究科修士課程修了
         1977年 東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学
             日本学術振興会特別奨励研究員
         1989年 東京工業大学助教授
         1995年 東京工業大学教授
         2013年 東京工業大学名誉教授 」  ・・・ いいね!

       「 黄長ヨプ
         黄 長燁( 朝 : 황장엽 、日本語読み:こう・ちょうよう 、
        朝鮮語読み:ファン・ジャンヨプ 。1923年〈 大正12年 〉
        2月7日 - 2010年10月9日 )は 、朝鮮民主主義人民共和国
        ( 北朝鮮 )の思想家で 主体思想の理論家 、政治家 。元
        朝鮮労働党国際担当書記 。1997年に大韓民国( 韓国 )に
        亡命し 、死去するまで韓国に在住していた 。
        生 涯
         咸鏡道出身とも平壌の江東郡出身とも言われる 。地主の
        家庭に生まれた 。中央大学法学部で学んだ 。そのため教
        養のある日本語を話すことができ 、北朝鮮在住時から度々
        日本のメディアによるインタビューに日本語で応じていた 。
         大学は2年次で中退し 、平壌に帰ってからは母校である
        平壌商業学校の数学と珠算の教師をしていた 。
         1949年 、ソ連のモスクワ大学へ留学し哲学博士号を取得する 。
         帰国後は金日成総合大学で教鞭を執り 、1965年に同大学総長
        に就任 。1970年には朝鮮労働党中央委員会委員に就任し 、
        その後は党の国際担当書記や最高人民会議外交委員会委員長
        などの要職を歴任する 。この時期には 金日成国家主席の側近で
        あり 、そのゴーストライターとも言われた 。 」
        以上ウィキ情報 。 )



         

    

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