「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

京都・賀茂・深泥池 Long Good-bye 2023・09・25

2023-09-25 05:41:00 | Weblog

 

  今日の「 お気に入り 」は 、作家 司馬遼太郎さんの 「 街道をゆく 」から

  「 大和石上 ( いそのかみ ) へ の一節 。

  備忘の為 、ついでのことに 抜き書き 。

  脇道ながら 、京都の「 深泥池 ( みどろがいけ ) 」の話題

  いずれ 古代 出雲族 や 鴨族 の話が出てくる予感 。

   引用はじめ 。

 「 ・・・ 深泥池のことである 。京都から鞍馬へゆく街道が上賀茂

   に入ったあたりにある古い池で 、池の面に蓴菜 ( じゅんさい ) が

   繁茂している 。蓴菜とは汁の み につかうあのトロリとした粘液質

   の物質をかぶった食用水草のことで 、上方では如才のない 、いい

   加減な口上手のことを『 あの人はジュンサイなお人や 』という 。

   『 ジュンサイなこと言いなはんな 』など『 増補俚言集覧 』とい

   う本に 、『 じゅんさいとは大阪詞 ( ことば ) 。じゃらじゃら言う

   こと 。蓴菜より出たる詞なり 』とあるから 、ひょっとするとジュ

   ンサイを口中に入れたときの感触から 、ある種の人間典型を連想

   してできたことばかもしれない 。上方語には 、そういう感覚的な

   ことばが多い

   『 深泥池とは 、カモの ? 』

   『 ええ 、カモの深泥池です 』 」

    ( ´_ゝ`) ^^^ ( ̄- ̄)

  「 京都の北郊の土着のひとびとは 、下鴨 、上賀茂という 、古代鴨族

   が住んでいたと思わしいこの地域を総称して単にカモという 。モに

   アクセントがあって 、カモゥと聞える 。近江の鴨地帯は古くから

   生の字をあてた 。あの発音である 。ついでながらカモとは 、出雲族

   のことであろう 。

    ところで 、

  『 カモの空を飛んでいるスズメもツグミもみなわしの所有 ( もん )

   やどう 』

   と 、明治のころカモの在所在所に触れまわった商業上の傑物がいて 、

   そのあたり一帯の捕鳥権 ( ? ) を獲得したという 。ついでにその

   傑物は深泥池の土手に立ち 、青みどろの淀む池の面を指さし 、

   『 この池に生えとる蓴菜もわしのものやど 』

   と 、宣言した 。当時 、カモのひとびとは不覚にもツグミや蓴菜が

   金になるとは考えていなかったらしく 、カモの村々は彼の独占的採

   取権を黙認した 。

   『 それがわしの祖父や 』

   と 、カモにうまれた私の古い友人が 、カモを駆けずりまわった祖

   父君のことを英雄伝を語るかのように語ってくれたことがあって 、

   そのとき私は大いに感心した記憶があるが 、要するに深泥池につい

   ての私の知識はその程度のものである 。 」

   引用おわり 。

   寡聞にして 、この本を読むまで 、古代イヅモ族のことも古代カモ族

   のことも 何一つ 存じませんでした 。

 

コメント
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