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「今日の小さなお気に入り」 - My favourite little things

古今の書物から、心に適う言葉、文章を読み拾い、手帳代わりに、このページに書き写す。出る本は多いが、再読したいものは少い。

2005・11・23

2005-11-23 06:30:00 | Weblog
 今日の「お気に入り」は、山本夏彦さん(1915-2002)のコラム集から。

 「 私はよく痛烈といわれるが、あれは自分のことは棚にあげて他を論難することで、新聞が毎日

  していることである。

   私はリベートは税金のかからぬ唯一の金だと思っている。何か世話になったら礼をするのは当

  り前である。それにリベートは原則として利益を越えることができない。リベートを罵る人は

  リベートをもらう席にいない人で、その席に座れば喜んで貰うだろう人がその席にいないばっか

  りに居丈高になるのを痛烈というのだから、私はこの言葉をほとんど憎んでいる。私は喜んで貰

  う側の人としていつも発言している。

   私はこういうはやり言葉を言うことを自分に禁じている。流行というならあの『がんばる』と

  いう言葉、これほど手垢にまみれた言葉はない。その流行すること新婚旅行に旅だつ二人を送っ

  て、『がんばれよ』とつい口走るほどである。

   がんばるだけは封じたい。封じると何も言えなくなるほどこの言葉は流行の極にあって、まだ

  腐らないでいる。」

  (山本夏彦著「死ぬの大好き」新潮社刊 所収)
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