悪魔祓い (岩波文庫)ル・クレジオ岩波書店このアイテムの詳細を見る |
文庫本のカバーには、こんな紹介文が書かれている。
西欧世界とはまったく異質な輪郭と色彩をもつ
インディオの世界認識のありかたを称揚し、
ヨーロッパ文明とインディオ社会のヴィジョンの対立をs
ストレートに描く、ル・クレジオの記念碑的著作。
失われた土着の宇宙観とその残照を擁護する、
現代文明批判の書。
著者がインディオの文化を見る視線は
あくまで西洋文化の高みからのものではあると思う。
けれどもそれは、いわゆる「上から目線」
(品のない言葉だと思う。便利ではあるけれど)でなはく、
どちらかといえば教養あふれる勘違いのように思える。
そしてその勘違いが紡ぐ言葉の、不可思議で魅力的なのこと。
たとえばこんなくだりがある(19ページ)。
都市は永遠のものだとわたしたちに信じさせるのは、
都市の策略の一つである。
都市は文明の自然な到達点であり、
都市が文明を説明するのだと、
都市はわたしたちに思い込ませようとしている。
どの文節も「都市」という言葉ではじまっている偶然はさておき、
(それも翻訳者の意図だとは思うのだが)
決して分かりやすくはないのに、どこか心を捉えて離さない。
実際のところ、自分は内容の十分の一も理解していないと思うけれども、
物語の可能性を感じさせられた。というか勉強不足だなぁ、あらためて。