この本、先日買ってちびちびと読んでいる。軽く読めて楽しめる、と思っていたのだけど、意に反して重い。でもそれはネガティブなものではなく、両氏が見せてくれる、プロの文章力に押されて感じる重さだ。
もちろん、小難しい理屈や自分勝手な嗜好や価値観の披露は一切ない。素直に作品に向き合い、そこに自分の思いを適度に和えていくという、ある意味で家庭料理を作るように書かれた言葉がならんでいるだけだ。
しかし引用文の選び方や、その向こうに見えてくる風景や心象の描かれ方は、「小説家」のモードを離れた、読み手として、そして物書きとしての凄みを感じさせる。
それは例えばプロボクサーのミット打ちのように、一流のプレイヤーが陰で蓄えている技の埋蔵量を思い起こさせる。彼らの小説のなかで触れる言葉のきらめきは、そのエッセンスなのだろう——その感銘を、こんな風に理屈っぽく書いてしまう自分の筆力がなかなか寂しくはあるけれど。
もちろん、小難しい理屈や自分勝手な嗜好や価値観の披露は一切ない。素直に作品に向き合い、そこに自分の思いを適度に和えていくという、ある意味で家庭料理を作るように書かれた言葉がならんでいるだけだ。
しかし引用文の選び方や、その向こうに見えてくる風景や心象の描かれ方は、「小説家」のモードを離れた、読み手として、そして物書きとしての凄みを感じさせる。
それは例えばプロボクサーのミット打ちのように、一流のプレイヤーが陰で蓄えている技の埋蔵量を思い起こさせる。彼らの小説のなかで触れる言葉のきらめきは、そのエッセンスなのだろう——その感銘を、こんな風に理屈っぽく書いてしまう自分の筆力がなかなか寂しくはあるけれど。
私的読食録 | |
角田光代、堀江敏幸 | |
プレジデント社 |