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『バービー』は、少しだけ自分の話でもあった(と思う)

2023年09月11日 | 映画とか
先日観てきた『バービー』、面白かった。最初この映画について耳にしたときは、単にアメリカンなザッツ・エンターテイメントかと思っていたのだけど、知人の方やソーシャルメディアでフォローしている人たちのコメントを聞いていて、だんだ気になってきたわけです。
※配給会社によるソーシャルメディアでの件は承知していますが、映画自体とは切り離して語られるべき問題だと思ってます。

見始めてすぐに感じたのは、設定の巧妙さ。女性の可能性が花開いているバービーの世界から、「裂け目」を通ってたどり着いたのは「男社会(※字幕から)」。バービーはその違いに戸惑い、一緒に来たケンは、それまで「添え物」的な存在であった男が世の中を動かしていることに感嘆して、俺様な世界観に目覚めてしまう。この逆転の構造、単純ではあるけれど、世の中の現状をチェックポイント的な視点で見せる手法として成功していると思う。そう言われれば、そりゃそうだよな、みたいな(「ミラーリング戦略」みたいな言い方もあるそうだけど、その辺は詳しくありません)。

この映画については、多くの評論や感想がそのフェミニズム的視点を指摘しており、それは基本的に真っ当な感覚だと思う。一方で、ひとりひとりが現実世界に感じる違和感——いわゆる「生きづらさ」的な——にも語りかける作品になっていると感じる。バービー的な世界観とは接点のない僕も、着々と感情移入してしまった。

特定のメッセージ性をもちながらも普遍性も備えていることが良い映画や創作物の条件だとすると、『バービー』は間違いなくそのひとつだろう。興業としては若い人を対象としているのだろうが、幅広い層——ホント老若男女の皆さんに——観て欲しい。

一方で、描かれることの矛盾点——「変てこバービー」への排他的視点とか、サーシャの母グロリアが表す母性など——への指摘も散見されるが、これは「矛盾上等!それが映画(≒人生)さ」という話だと僕は思っている。この辺含めて、竹田ダニエルさんの映画評が素晴らしいので、ご興味あれば読んでみてください。

ある意味、シュガーコーティングされた梅干しを食べちゃったみたいな読後感ではあるが、これは今の映画だな、と思うと同時にグレタ・ガーウィグ監督の才能と力量に惹かれる。世界観の構築だけでなく、演者の表情の使い方とか演出も上手いと思うんですよね。アマプラで『レディ・バード』観なくちゃ。

※それから、この辺は話題作ならではというか、音楽は相当カッコいいです。サントラ聴いてるだけでハイボール三杯はいけるな。

>以下、竹田ダニエルさんの映画評から引用
『バービー』は紛れもなくフェミニスト映画であり、グレタ・ガーウィグ監督も記者会見でそのように肯定*している。そうである以上はフェミニズム映画としてのコンテクストでクリティカルに議論される筋合いは当然ある。しかし同時に、現実世界でも解決がない家父長制の問題の「解決」を描くことは不可能でもあり、この作品自体が「完璧」であったり、何かしらの「正解」を提示する必要もないはず、というのは最初に申し添えておきたい。

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