TRASHBOX

日々の思い、記憶のゴミ箱に行く前に。

僕が天狗を好きなワケ

2011年04月21日 | 食べたり飲んだり

何を隠そう、天狗好きです。
そう、あの居酒屋チェーン、テンアイランドのお店ですよ。

そこで一体どんなものを食べているかというと、
たとえばサイコロステーキ(380円!)。

ニンニクの香りに大根おろしがいいアクセントです。

はたまた大きなサラダ、ポテトも2段。
ちょっと前まで380円でしたが、今は100円アップ。

野菜がしっかり食べられて嬉しいです。

締めはピザなども。
生ハムのっかって580円。
あ、価格はすべて税別ですよ。

実は一緒についてくるソースも美味なのです。

まあ、普通に美味しくてお値段手頃、というところなのですが、
この丁度いい感じ、最近は意外に出会えないのですよ。

いわゆる「差別化」というやつでしょうか。
工夫されたメニューやサービスは面白くもあるのだけど、
仕事帰りの一杯には、ちょっと煩わしくも感じる僕には、
このファミレス居酒屋感は、なかなかしっくりときます。
(ま、根っからの庶民感覚なのかもしれないけど)


ある意味、喫茶店でいうとルノワールでしょうか。
でも、ここで一緒にご飯食べて楽しい人なら、
どこ行ってもOKだと思うのですよ。
気になる相手のいらっしゃる方は、一度お試しを。
(ちなみに店舗形態によって、禁煙の有無とかあるようです)

さて、今週はいつ行こうかな。

乙女の密告/赤染 晶子

2011年04月16日 | 読書とか
乙女の密告
クリエーター情報なし
新潮社

第143回芥川賞受賞作。

うろ覚えの粗筋は(これが結構いい加減で)、こんな感じだった。

女子大でドイツ語を学ぶ「乙女」たちの静かな日常。

しかし常に人形を手放さない変わり者のドイツ人教授の指導に、

その日常が徐々に変形しはじめる。

教材である「アンネの日記」とオーバーラップして語られる

物語の構造的な試みと、独特のユーモアが印象的な一作。


……みたいな感じだっだかな。

ま、それほど外れてないとは思うのだけど、

予想していたほど湿り気はなく、さばさば読めた。

(会話部分の関西弁のせいもあるだろうけど)


自分には縁のない浮世離れした場所の話でありながら、

いつしか隣で見ているように感情移入してしまう辺り、

そこは著者の筆力なのだろう。眉間に皺よせて読めば

「人にとって大切なものは?」とか「本当の自分とは?」みたいな

小難しい話の具材としても対応できそうな気もするけれど、

「そんな難しいこと言うてまへん」と、さらりと躱されそうでもある。

なんていうか、京都の飲み屋の女将のような(イメージですが)

正体を見せない賢さや、したたかさ。

そんな顔をした小説のように思えました。




しかし最初に書いた自分なりの「うろ覚え粗筋」、

これ他の小説でも結構いい加減になってるのだろうなぁ。

「記憶で描く○○」みたいなネタを見たことがあるけれど、

あんな感じの展開になっちゃうかもしれない。

違う小説が混じってたりして……。

「三四郎」と「こころ」とかヤバいです。

つーか、そんな自分がヤバいか。

女王ラーメン@築地

2011年04月13日 | 食べたり飲んだり

その名も「女王ラーメン」……一体なぜ?

店員さんに「またその質問ですかい?」と嫌がられるのを覚悟で、

帰り際に聞いてみた。

「この店、中華料理の前は喫茶店で、リズ」って言ったんです。

あー、なるほどって、それじゃ全然わかりませーん。

……しかしリズといえば、エリザベス・テイラー。

その風格はまさに「女王」。そうだったのか!

「中華でリズじゃね、ってことだそうで」って仰るけど、

「女王」もどーかとは思いますが、

少しこの店のことが好きになった。

えーっと、お味の方は意外に(?)スタンダードでした。

場所などはこちらをどうぞ。

大前研一はアニマル浜口の夢を見るか

2011年04月11日 | 読書とか
新版「知の衰退」からいかに脱出するか?―そうだ!僕はユニークな生き方をしよう!! (光文社知恵の森文庫)
クリエーター情報なし
光文社

ご存じ大前研一大先生の、グローバル経済サバイバル本。
2007年物だけあって、データー関係は少し古いですが、
「2010年には中国にGDPで追い抜かれるだろう」など、
相変わらず鋭い私的に満ちあふれています。

МITで工学博士号を取得、日立製作所で高速増殖炉の設計の経験は、
今回のさまざまなコメントでも重みと信頼性に満ちている。
そしてマッキンゼーの日本法人会長を経て独立、
並ぶもののない日本コンサルティング界の巨人と言えるだろう。
まあ自分とは何万光年も離れた存在だなぁ、というお方ではあります。

でも実は、この人の書くものは嫌いじゃない。
「負けたくなければ、強く賢くしたたかに」という価値観には
「うちの店は、おまかせメニューだけ」みたいな窮屈さを感じなくもないけれど、
一方でどこかに、地元のフレンチのような親近感を覚えるのです。

氏の提唱する「IT、語学、ファイナンス」という時代の必須三本柱は、
切れ者エリートへのメッセージのようでもあるけれど、
その語り口には、ごろりとした人の良さみたいな印象も。

アウトドアスポーツ好きでなかなかガタイのいいご本人、
腕っ節も強そうで、風情としては熊さん風でもある。
えーっと、なんか思いだすんだよなぁ、誰かのこと。

……と考えていたら、そう、あの人ですよ!
(ってタイトルで既にばれてるけど)
「気合いだー!!!」でお馴染のあのお方。
そうか、大前研一はビジネス界のアニマル浜口だったのか、
と思いついた時点で、いろいろなものが腑に落ちた。

えーっと、本の中身について全然話していませんが、
まあそういう気持ちで接してもらえれば、
なかなか厳しいお言葉も、愛を持って響くはず。
「いくら本を読んでも実行しなければ無意味」というご指摘も、
プロレスラーとしてのトレーニングと同じですわ。

ちまちました自己啓発本読んで、こじんまりした成功目指すくらいなら、
一度はぶっとい志を持ちましょうぜ。
グローバルなワールドをサバイブしようという人にも、
まずは元気注入しときたい貴殿にも、
結構実用性のある一冊ではあります、意外に。

それにしても見てみたいな、両者の対談。
そうとう濃いものになりそうですが……。

わたしたちが孤児だったころ

2011年04月04日 | 読書とか
わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワ・ノヴェルズ)
クリエーター情報なし
早川書房

カズオ・イシグロといえば思いだすのが、留学時代の友人のJ。
中国系イギリス人の彼はNYUのロースクール卒業の賢い奴なのだが、
知りあったのは大学のカラテ・クラブだった。

クラブは日本空手協会系(松濤館の流れ)だったが、
Jは別の流派(たぶん和道会系だったような)で既に黒帯を持っていた。
立ち姿や礼の姿勢がきちんとしていたので、最初は日本人かと思った。

なぜかある日、「カズオ・イシグロを読んだことがあるか?」と聞かれて
「日の名残り」くらいしか知らなかった俺はたいして答えられなかったのだが、
Jはこの作家のことを絶賛していた。
「五歳まで日本で育ったのに、あの古いイギリスの風景描写は素晴らしい」と
褒めちぎったのは、たぶん「日の名残り」などのことを言っていたのだろう。

ロースクールを卒業したJは、別に弁護士の資格をとることもなくロンドンに帰った。
法律の世界よりも実社会のビジネスの方に興味があると言っていたと思う。

再会したのは、俺が大学院を卒業した年(10年前か……)。
ある事情でロンドン経由で東京に向かう途中、連絡を取って会うことにしたのだ。

短パンとポロシャツ姿で駅まで迎えに来てくれたJは、
メルセデスのAクラスに乗っていた。コンパクトなライン、ではあるけれど。
ちょっとへーっと思う俺を、まずはアパートに案内してくれた。

その途中、確かハイドパークの側を走っていたとき、
「あのアパート、うちの母親が持ってるんだ」とひと言。
どの部屋?みたいに聞いた返事は「アパート丸ごと」。
でもそれ、英語じゃアパートっていうけど、かなり立派なマンション。
しかもロンドンでもなかなか洒落た地域じゃございませんか。

もしかして君って、かなりのお坊ちゃま?
……という疑惑(?)は、Jのアパートに着いて確認できた。
すごいんですよ、これ。

身なりのパリッとしたドアマンがいて「やあ!」てな感じでご挨拶。
大きなフロアの真ん中に吹き抜けのある建物は、どこかのリゾートマンション風。
モデルルームみたいなインテリアだけど、若い男らしい適度な散らかり具合。
そうそう、当時出たばかりのPowerBookチタンもあったなぁ。
いやいやJくん、君も相当だね、とあらためて思ったのでした。


えーっと、全然本と関係ない話が続いていますが、
まあ俺にとってカズオ・イシグロといえば、まず彼のことが思い浮かぶ訳で、
今回は特にそれが強かった。
多感な少年期を上海の租界で過ごす主人公の「わたし」。
裕福ではあるけれど、どこかに寂しさを感じさせもする。
いや、全然そういうキャラじゃないんだけどね、あいつは……。

実際、完全に妄想の暴走なのだけど、頭の中でイメージが混線を起こしていた。
でもそれを含めて、ふらつく読み手をしっかり導いてくれる物語の堅牢さ。
一見ナイーブな風情ではありますが、実にエンターテイメントな小説だとも思う。

実はここのところ、ちょいと疲れを感じることが続いていたのだけれど、
この一冊でうまい具合に現実逃避ができました。昔の友人のことも思いだしたりして。

くわえて、あまり後を引かないタイプの読後感もこういうときは悪くない。
印象が薄いというのではなく、さらっと切れの早い日本酒みたいというか。
ちょっと最近くたびれたなぁ、という方には割とお薦めですぜ。

思ったのだが前作「充たされざる者」と、この後の「わたしを離さないで」にも、
どこか同じような空気が流れている(当たり前かもしれないけど)。
ちゃんと防寒して出かけてきたはずが、
足首から入る風で寒さの存在に気づいてしまうような、限定された哀しみ。

そしてまた、女性に対する恐れのような甘えのような感覚。
なんていうか、気持ちのちょいとおセンチな部分に響く物書きさんなのだなぁ。
その辺は村上春樹氏に近いものがある気がする。

それから入江真佐子氏の訳は、控え目ながら完成された語り口。
(あ、次は原文で読みます……ノンネイティブに文学作品は難しいのですよ)
小説の魅力を正しく伝えてくれる良い仕事だと思う。感謝。


あ、ところで友人のJですが、しばらく後に会社を立ち上げた売却、
その数年後、きれいな奥さんと結ばれて幸せにやってる様子。
震災の時はメッセージくれたし、また会いたくなったなぁ。