TRASHBOX

日々の思い、記憶のゴミ箱に行く前に。

DREAM6

2008年09月28日 | 格闘のお時間
先日の地上波放送で観戦。こういった大会がまた普通に見られるようになってきたのは嬉しいけれど、試合内容や番組構成などまだまだ欲求不満が残ってしまった。

見ていて心配になったのは、格闘技ファンではない一般視聴者の反応だ。昔に比べるとコンテンツとして一般化してきたおかげで、マニア以外の人も興味を持つようななってきた。いいものを見せれば新たなファンの獲得にもつながる状況になっている。

しかしそのためには「他のスポーツにはない魅力がある」と思われることが必要で、普通にいい試合を見せているだけでは駄目だ。ただ面白かったと思われるくらいでは、次回の放送と飲み会の約束が重なったら見てはもらえない。

もちろん試合内容自体は選手に委ねるしかないのだが、いい試合を生み土台作りという点では、まだまだ工夫の余地がある。煽り映像やドラマ作りをするならするで、使い回しのお約束映像ではなくもっと踏み込んだもの––刺身のツマではなくそれ自体が見て面白いものにしていくべきだ。時間も予算もかなり厳しいとは思うけれど、もうひと知恵出して欲しいものだ。


で、試合について。逐一書いても仕方ないけれど、今回はなんといってもゲガール・ムサシ!最初のグリーンボーイな雰囲気から比べると落ち着きを感じる。マヌーフやジャカレイと相対しても、構えはやわらかく自然だ。逆に今回、ジャカレイから以前のようなヤバさが消えているようにも見えた。

決勝はラッキーな勝ち方をしたようにも見えるが、下の体勢から攻める技術があるからこそ呼び込めた勝利だと思う。ジャカレイ相手にマグレはそうそうないはず。デニス・カーンに下からの三角締めで勝った試合を思い出した。

しかしミドル級は面白い。ムサシ、ジャカレイにくわえてジェイソン・メイヘム・ミラーにはわくわくする。秋山、吉田先輩なんて言ってないで、こいつらと向き合ってくれよ。

ところで船木対ミノワマンはちょっと痛い試合だった。あの体勢でのヒールホールド、全盛期の船木なら瞬時に決めていたはず。ミノワマンもあまりに正攻法でらしくない。坊主頭で白パンツをはいて「ヒクソンマン」とかやって欲しかったなぁ。冗談じゃなくて、それくらい際どくやっていかないと眠いファイターになっちゃうぞ。

ラジ&ピース/絲山秋子

2008年09月27日 | 読書とか
契約アナウンサーとして群馬のFM局にやってきた主人公「野枝」の、同僚やリスナーとの日々。なんといっても書き出しが強い。まずこれで持っていかれる。

 醜いのは野枝自身だった。いつも自分のことばかり考えていた。パーツが小さい地味な顔、寸胴で足の短い体型、身長が低いこと、冒険が怖くて無地の同系色しか合わせられない服装のセンス。性格はといえば彼女はいつも機嫌が悪かった。そしてそれが露骨に顔に出た。
 彼女は自分の醜さに飽きるということがなかった。だか、それほど自分に固執するというのは、やはり一種の歪んだ自己愛なのではないだろうか。そう思うとまたぞっとした。

言葉の上ではネガティブ大会なのに、なぜか気になるこのキャラクター。もっと野枝のことが知りたくなる。こんな魅力的な不機嫌は絲山さんの得意技のひとつだ。

不必要な思いやりの鬱陶しさとか自分勝手な友情の心地よさとか、リアルと電波を通じた人づきあい(人間関係とか書いちゃうと嘘臭いので)を、角度とパースペクティブを変えながら描いてくれる。なんか愛想は悪いがなかなか気の利いたつまみをだしてくれる飲み屋みたいな小説。三十路女の楽しい不機嫌、四十男も堪能させていただきました。

ラジ&ピース
絲山 秋子
講談社

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こうのとりを放つ日/みどりゆうこ

2008年09月26日 | 読書とか
サロゲートマザー(代理母)を生業とするハイヤシンスを主人公とした人工授精出産をめぐる物語。個人的にも気になっているテーマ(ドナー・ベイビーの問題などは家族というものを考えるひとつの試金石でもあると思う)でもあり、興味深く読んだ。

この作品の魅力は、ひとつの社会問題を小説としてきちんと描ききっていることだ。他人の子宮を借りてでも子どもが欲しいという夫婦の思いも、治療に疑問を抱く医師も悩みも、著者はバランスよく描いていく。社会的、客観的な視点からだけでなく、登場人物たち個人の視点も絡めてなお、語り口は淡々と論を急がない。さまざまな角度から吟味された主題は、丹誠込めた料理のように読者の前に置かれる。さあ召し上がれ、どう味わいますか?

ノンフィクションや特定の立場からの主張であれば、また別の語り口があるだろう。しかし小説の仕事は、主題を倫理でも政治でも医学でもない人間の話として扱うこと。だからそれが読者の問題ともなりうるのだ。

えーっと、ちょっと難しい展開になってきちゃったかな(自爆?)。要は、というか小説は決して問題提起の道具ではありません。面白く読めればそれでいい。しかしきちんと物語を描くことで、いままで持ち得なかった視点や世界を知ることができるのは読み手にとってはベネフィットのひとつ。ただ「私って?」を掘り下げていくだけが小説じゃないぞ、ということをあらためて。

あえて気になるとすれば、バランスが良すぎる点だろうか。「臓器としての人間」という点ではカズオ・イシグロの「わたしを離さないで」が思い出されるが、そこで描かれる静かな痛みのようなものはない。ハイヤシンスの造型はなかなか魅力的なのに、準主役(?)級のアギーやショーンの絡み方――小説としての構成にもっとダイナミックなところがあればなぁ、とも思います。

91年に文學界新人賞を受賞した著者は現在英国在住。緑ゆうこの名前で「イギリス人は『建前』がお好き」などのイギリス関連の著作も多い。代理母をめぐるイギリス社会の反応のリアルな印象も、氏の生活を通じて生まれてきたのだろう。

※印象に残ったフレーズ(覚え書きとして)

美しい夢はかなってこそ美しい。かなわない夢は静かに手放してやるのが良いのだ。IVF(体外受精治療)は成功した場合にだけ正しく、失敗した場合はどう言葉をつくしても正当化しようのない行為だとミスター・ウーは思うようになっていた。だからこそ患者の年齢制限は必要なのだった。成功率の低い患者は扱うべきではない。それは医者のためにではなく、患者のために必要なのだ。それは差別とは違う。そんなところへ自由だの権利だのを持ち出すのは勘違いだ。
こうのとりを放つ日
みどり ゆうこ
集英社

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アメリカ・ビジネスマンの教科書/デビッド・A・セイン

2008年09月25日 | 読書とか
著者は日本での生活も長く、「これを英語で言えますか?」などの著作も。俺はこういった「海外お手本系」は嫌い(つーか根本的に安易)なのだけれど、この内容にはちょっと覚えておきたいものが多い。要は日本が記号代わりになっている「変化に鈍感な(拒むことさえできない)思考停止状態」への突っ込みで、別に日本だけの問題ではないのでは(人のこと言っている状況じゃないけど)。

以下、覚え書きとして。"Create or fail"なんて好きだなぁ。

Change is a process, not an event.

Change is a second.(本当に望んでいるのなら変化は瞬時にできる)

You cannot understand a system until you try to change it.
(コンサルタントを呼んだ企業は、その相手自体を「変化」と見なして対応する。その様子で組織がどこまで変化への準備ができているかわかる)

If you are not part of the solution, you are part of the problem.

Be a revolutionary.(革命児たれ/馬鹿に見えたって構いやしないさ)

People who are only good with hammers see every problem as a nail.(金槌の使い方しか知らない人には、すべての問題が釘にしか見えない)

Make you a priority.

Create or fail.(創造か失敗か)

The servant leadership.(召使いという名のリーダー)
※へルマン・ヘッセの「東への旅」に感銘したロバート・K・グリーンリーフの「召使いのリーダーシップ」。老子(!)の言葉を引用して、
・リーダはいないと思われているくらいが一番よい。
・だれもが従い認めているリーダーというのは考えものだ。
・軽蔑されているなら最悪である。
・部下を尊敬できないリーダーは、部下から尊敬されることもない。
・よいリーダは多くを語らない。
・仕事をやり遂げたとき、彼の目的も果たされる。「自分たちの力で成し遂げたぞ」と全員が思ったときである。

He's a manager, but not a leader.(how toよりwhat, why)

Be a doer, not a manager.

There is nothing to fear but but fear itself.

Don't be a firefighter.

Shoot the engineer.(自信があろうがなかろうが関係ない。とにかくやってしまえ!)

Response-able(responsibleは「反応」と「できる」。ただ従うだけでなく、考えて対応することが責任)

Take ownership of what you do.(ケーキミックスの例。自分で何かをしていると感じさせることが重要。

アメリカ・ビジネスマンの教科書―“アメリカの繁栄”を支え続ける彼らの成功法則がここにある (KAWADE夢新書)
ディビッド・A. セイン
河出書房新社

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「素直」と「成功」

2008年09月23日 | 気になるコトバたち
素直な人が成功する――確かにそうかもしれない。
語学でもスポーツでも音楽でも、何かを学ぶにあたって
自分を真っ白な状態にできることは一種の強みだ。

しかし同時に「なぜ/どうやって/もし」という視点も必要。
でないと誰かの知識をただダウンロードしているだけになっちゃうし。

もっと気になるのは、「素直な人が成功する」という言い方。
素直であるというのは、それ自体で価値のあること。
じゃ成功とやらに結びつかない場合はどうするのだろう。
なんか目的のための素直って、違和感ないすか?