嘘のような話

ある高齢の女性が問わず語りに店のママさんにこんな話をしたそうだ。
絵に描いたような嘘のような話だが、こんな話は現実にあちこちで起こっているかもしれない。
団塊のの世代が大量に退職する昨今ありうる話だ。

彼女の夫は何年か前に定年退職した。
それを境に二人は別居することにして、彼女は家を出た。
そのいきさつは分からないが。
その夫は酒は飲まない遊び事もせず真面目を絵に描いたような人生を送ってきた人だという。
それが逆に彼女には気が詰まるような暮らしだったのかもしれない。
一週間に一度だけ彼女は夫の家を訪問していろいろ用事をしてあげていたそうだ。

ある時から、夫からもう来なくていいからと言われたそうだ。
おかしいなあ、と思いながらも暫くは放っておいたそうだが、やはり気になって調べたらとんでもない事になっていたそうだ。

彼は喫茶店で知り合った３０代の女と暮らしていたのだそうだ。
そして金庫の鍵も渡し預金通帳も渡し、退職金は全て消えていて、その女もフイと姿を消してしまっていたと言う。

「あきれるわ」と彼女は言っていたそうだ。
一緒に暮らしていた頃は預金通帳は勿論金庫にも触らせてもらえない、そんな状態だったそうだ。

ママが言うには
「遊んでない男が女に狂うとこわいのよ」
「ええっ、俺も危ないかもなあ」
「天道さんはだいしょぶよ」
「え、どういう意味？」

というような話でした。