地味ログ東洋硬化.うろつき雑記

寒い時も暑い時も、寒い場所も暑い場所も、処かまわず神出鬼没な東洋硬化の表面処理を、ポップに語ります。

早朝の遠出

2006年06月25日 18時13分07秒 | うろつきアーカイヴス


今年の梅雨は陽性らしく、特に今日は雷と驟雨の繰り返しです。

もし、雨無しの日曜ならば伸び放題の庭の草むしりでも、と思っていましたが、とん
でもありませんでした。



こんな日のブログネタは、昔話を。



十数年も前のことですが、今でもはっきりと覚えている情景があります。


南九州の営業担当をしていた頃のことです。

正月を迎えて間もない時分に、急ぎの用件で、垂水・鹿屋方面に行かねばならなく
なりました。

出張る前日に社用のダットサントラックで帰宅しておき、当日、まだ暗いうちから高
速道路を、大隈地方に向けて南下し始めました。

ガムを噛みながらの運転をしていましたが、少し眠気が残っていましたので、ラジオ
をつけ、どうでもよい内容(とりあえず日本語で誰かが喋っていればOK)の番組を
チューナーをひねりひねり、走っていました。

菊水ICを通過し、鹿央の上り坂を登りきった頃には東の空はかなり明るくなり、西
の空の筋雲を朝日が赤く染め始めています。

チューナーをひねっていて、やけに大きく鮮明に届く場所に行き当たりました。今に
して思えば、地元熊本のNHK第2だったのではないかと。

内容は、万葉歌に親しむ、という様なものだったと記憶しています。

よりによって、一番眠気を誘いそうな番組やん、と、他局に変えようとしましたが、
ちょうどその時詠み上げられた歌が、柿本人麻呂の宇陀での歌でしたので、人麻呂に
ほんのちょっとだけ興味のあった僕は、少しだけ聞き続けようとチューナーを廻す指
を止めました。

車は植木ICを過ぎ、阿蘇西外輪山のスカイラインが赤々としてきています。

年配のアナウンサーが、有名な歌を詠じています。


【 東(ひむがし)の 野にかぎろひの 立つ見えて かへりみすれば 月傾(かたぶ)きぬ 】


自分が今いる、九州道屈指の阿蘇西外輪山を望めるビューポイントで朝焼雲を見なが
ら、この歌を聴いているとは、ちょっと出来すぎじゃなかろうか、と手前勝手に考え
ましたが、こんな偶然もそうそうありませんので、目の前の阿蘇西麓の風景と、耳か
らの情報で喚起される宇陀の情景とを重ねあわせていました。

高速道路を南下しつつある僕から見ると、後数分で陽が登ってくる方角は左手前方。
さては見えるかと右手を振り返ってみましたが、さすがに沈みゆく月を眺めることは
できませんでした。

ラジオではひとしきりこの歌と人麻呂の解説を行なっていました。結局、この番組が
終了するまで聞き続けてしまいました。


その記憶があまりにも鮮明に脳裏に焼きついてしまいましたので、万葉集の解説書な
どを手に入れては、歌々の解説や背景などを、ほんの少しですが、楽しむ様にもなり
ました。

今、手許に何冊かの(入門書的)解説書があります。上の歌は、超一級の有名な歌で
すので、どの解説書にも載せられています。

           (平凡社ライブラリー「万葉の旅 上 大和」P148から)
『 この歌は、山野の草枕での回想に夜を徹してしまった荒涼と寒気と凄愴の黎明の
 感慨として理解されなければならない。よくこの歌の評釈に蕪村の「菜の花や月は
 東に日は西に」があげられているが、季節と時刻を異にしているだけでなく、うた
 われている世界も、環境もまったく別物である。人は人麻呂のしらべの雄渾・雄大
 をいい、大平原の夜明けの壮観を思いおこしがちだが、雄渾ではあっても、事実は、
 このような事情のなかでの山野の夜明けであって、それだけに凄みも増し、東方の
 薄明るい光と、西方のまだ黒々とした中の薄暗い月光とのコンポジションは、かえっ
 て作者の感慨を拡大させ、遠くはるかに深々としみとおらせてゆくものがある    』

このような事情とは何なのでしょうか。下の歌に答えがあります。


【 ま草刈る 荒野(あらの)にはあれど 黄葉(もみじば)の 過ぎにし君の 形見とそ来し 】


解説は以下の通りです。

           (平凡社ライブラリー「万葉の旅 上 大和」P146から)
『 (宇陀の)阿紀神社の東南、すぐ前の丘にのぼり、民家のあいだをぬけると芋や
 大根の畑の台地に出る。台地のなかほどに、佐々木信綱博士筆の「東の野にかぎろ
 ひの・・・」の歌の碑が立っている。たいへん眺望のよいところで、北側の宇陀川
 べりの小平野と南側にわずかの平野をのこすほかは、四周見わたすかぎり丘陵の起
 伏つづきの山また山で、ことに西方は、音羽山・経ヶ塚山の高峯となっていて、見
 るからに蕭条とした大景である。安騎野・阿騎の大野は、けっしていわゆる広野で
 はなくて、こうした高原丘陵性の山野である。まさに「ま草刈る」荒野である。
  この荒涼たる山野をもいとわずあえてやって来たのも、もみじの散るように亡く
 なられてしまった(人麻呂が慕っていた)草壁皇子(天武天皇・持統天皇の皇子)
 の形見と思ってこそだ、というのである。寝るに寝られない草枕の床には、おりか
 らの冷たい山風に枯葉の吹き散る音もさえざえとして、在りし日の回想に、旅の人
 の眼はさえてゆくばかりであったろう。
  こうして、眠られぬ夜の、夜明けの待ち遠しさ。黎明にむかう山野は、まだまっ
 くらで、冷え冷えと凍てつき、吹きすさぶ寒風のなかに有明の月は白く冴えて、凄
 愴の感のひときわみなぎるとき、暁を告げる最初のほの白い光が東方の空に見えは
 じめ来たときの気持はどうだろう。すすきや篠竹のそよぎさえ身にしみてつめたく
 凄くきこえたことであろう。                                   』


そして、人麻呂は「東の 野にかぎろひの ~」と詠んだとのことです。



(現在、人麻呂がこの有名な歌を作出した現地付近に「かぎろひの丘 万葉公園」と
「阿騎野・人麻呂公園」があります)


(「万葉の旅 上 大和」でも記述されていた、「かぎろひの丘」にある佐佐木信綱万葉
歌碑 )


(こちらは阿騎野・人麻呂公園の歌碑)


上の説明文中に、蕪村の「菜の花や月は東に日は西に」と対は成さない、と書いてあ
りましたが、なんかこう、自分的には、1000年の時を超えて蕪村が人麻呂に送った
反歌(もとい、反句?)であってもらいたいんだけど、と勝手にミーハーに考えてしま
います。

蕪村は蕪村で、素晴らしい句がたくさんあります。おりを見て、蕪村の味わいも書き
連ねてみたいと思っています。



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1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
初めまして (アル)
2006-06-25 19:11:35
ちわーす熊本の姉歯です。早速応援プチッ。

普段アルさんアメブロなんすが熊本の方が少なくて遊びにきました。これからもチョクチョクよらしてくださいね。

よかったらアルさんとこにも遊びにきてください。

原価公開の家創りってブログやってます。

決して営業ではありませんので(笑)

もう友達っすよ。
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